11章 王都逆襲編 22話 彼女達と対立・・そして、キミの名は?
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俺を囲む騎士が一斉に抜剣し、それぞれの金属が擦れ合う音が増大し俺の耳に威圧するかのよう響き渡る。
(真衣達との別れの悲しみに浸る時間も与える慈悲もないのかよ・・)
それにしても、騎士達は抜刀し構えるものの一斉に攻撃を仕掛ける様子は無いため周囲を見渡しながら警戒していると、この大部屋から立ち去る気配にスキルが捉え視線を向ける。
(国王は逃げるのか・・)
無言のまま近衛兵に連れられ国王は奥の方へと姿を消して行き、それに気付いた俺から守るように騎士達の陣形が国王を守るように変化する。
「この包囲網から逃れられると思っているなら、その甘い希望は捨てよ!」
騎士団長ハイドは、俺を無抵抗で投降させようと問いかける。
「へぇ・・なんか俺に勝てる要素でもあるの?王国の最大戦力の勇者達が送還されて存在しないというのに?」
「ふん!・・・・あの勇者をも凌駕する秘めた力を持ったあの方が居る限り、たった1人で仲間のいない貴様なぞ脅威ではない!」
カツカツカツ・・
この状況下で似合わない規則正しい足音が聞こえ視線を向けると、腰の辺りまで伸ばした金髪を揺らし白色のドレス風のワンピースを纏う第3王女マリアが騎士団長ハイドの近くで止まり俺を見つめる。
その姿を目にした俺は、思わず声を漏らす。
「・・・・本気なのか?」
マリアと重ねた視線を逸らすよう僅か下に視線を下げると、マリアの両手には漆黒のスローイングナイフがしっかりと握られていた。
「冒険者ハルよ・・第3王女マリア様は、勇者より遥かに強い力が証明されているのだ!」
「・・・・・・」
騎士団長ハイドは他力本願のクセに偉そうに喚き、マリアは黙ったまま俺を見据えているままだ。
念話スキルが互いに繋がって居れば、その行動の真意を問い質すことができたけど、今はその繋がりは途切れている。
マリア様が我々騎士団とともに戦ってくれるぞ・・・・
騎士の誰かが呟いたかはわからないけど、その呟きに一部の騎士達が威勢を発する。
「「 うぉーー!!!! 」」
その威勢が全体へと広がり、結果的に騎士団の士気を高揚させ手に持つ長剣や槍を高く掲げ、その様子にハイドは勝ち誇った表情になっている。
「うるせぇな・・・・っていうか、騎士団長さんよ・・知っているのか?第3王女マリア様が勇者より強くなった理由を?」
俺が第3王女マリア様と呼んだ瞬間に、一瞬マリアの表情に変化が見えたけど気にせずハイドを見る。
「当然だ!マリア様は幼き頃から鍛錬に励み積み上げてきた努力の結果が、今のマリア様の実力なのだ!」
「・・・・」
ハイドの声に助長するかのように騎士達の士気が上がっていく反対に俺は、馬鹿らしくなって返す言葉もなく俺の反応に自信をさらにつけたのかハイドは言葉を続ける。
「さすがに、マリア様だけが戦うのを騎士団が黙って見ているのは本末転倒である・・第1及び第2中隊は全力を尽くせ!!」
「「 はっ!!!! 」」
ハイドの命令に数十人の騎士が、マリアを中央になるよう移動し陣形を取る。そして左右の騎士達のそれぞれの指揮官であると存在感を主張するかのように、ゆっくりと女騎士が現れ俺と対峙する。
「そんな・・お前らもかよ」
目の前のマリアの左にアイナが並び右にはリンが並んでいる。俺と共に過ごした3人が俺と対峙する姿を見て、俺は揺れていた覚悟を決める時だと思い始めるその時だった。
『ご主人さま、どうかあの3人と剣を交えることは避けてください!』
不意にミオから念話が届く。
『ミオ?・・アイツらは、どう見ても王国側なんだけど・・』
『3人のお心は、ご主人さまだけなのです!』
『・・・・』
目の前にいる3人とミオが訴える状況が相反しているため理解できない。過去に幼馴染であり親友だった男に裏切られた俺は、この状況を素直に受け入れられることができない。
『ご主人さま?』
『・・ミオのことは信じているよ。けどな・・過去の手痛い記憶のせいであの王国側に立つ3人を信じることは、そう簡単じゃないんだよ・・ゴメンな』
『ご主人さま・・』
ミオの哀しい感情のこもった念話を聞きながらも、俺の感情に変化は皆無で実際に突出した戦力である3人を警戒し口を開く。
「もう睨み合ってるのもやめて・・・・始めよう」
俺の誘いに何も言い返さない3人は、ただジッと俺を見つめ構えている。
(無反応かよ・・そこまでだったなんてな)
王国騎士団と3人から攻める気がないのか、俺が動くのを誘って迎撃する作戦なのかはわからない。
だったら、その作戦に乗ってやることに決め、まずは周囲の雑魚騎士を排除し3人の女を纏めてラスボス扱いとして相手にするのがいい流れだと感じ、見届け人として騎士団長ハイドを利用して最後に・・・・。
初動に3人のみに本気の殺気を放ち、圧倒的な戦力差から生まれる己の死を認識させ動きを止めた後に左へと移動しながら陣形の左隅の騎士へと飛び込む。
「死に散れ!」
片手剣を横一線に薙ぎ払い、得意の風魔法ウインドカッターを放ち騎士の腰から上半身と下半身を切り離す。
ギリュブシュッ!!
騎士の纏う銀色の鎧がウインドカッターで強引に引き千切られながら鈍い音と肉が切れる音が次々に聞こえる。そして断末魔の叫びとともに周囲に血飛沫を飛ばし、後ろで構える騎士の鎧も赤く染まっていく。
「戦いは、これからだぞ!」
そう言い放ちながら、先手で2人の騎士をウインドカッターで絶命させた後にあえて乱戦になるよう斬撃で騎士達を斬り捨てる。
俺の身のこなしと斬撃の速さに対応することのできない王国騎士達は、訓練に使う人形的のように動くこともなく俺の斬撃で鮮血を周囲に撒き散らし骸へと姿を変えていく。
さすがに俺と年齢が近い騎士達を一方的に斬り殺している俺にも感情は残っているため、心は痛んでいることを自覚する・・けど、俺が生き残るための犠牲になってもらうしかない。
攻撃魔法を一切使わず、片手剣のみで斬り殺していくため、後ろの方の騎士は反応し始めるものの、ただ威勢と悲鳴が混じり、そして切り裂かれる肉の音や鮮血を浴びる俺の精神は強制的に昂ってしまう。
俺は、かなりの数の騎士を殺したはずなのに数が減っていないことに気付き、そして圧倒的な数で押している騎士団を負けじと斬り殺す。
「はぁ・・はぁ・・お前らは、正面から攻める脳しかないのか?少しは学習しろよ」
たった1人の俺に王国騎士が数十人命を落とし、背後で事切れている・・・・はずだった。
俺は、僅かに後ろを視界に入れた時にさっきまで騎士の死体が転がっていたのに、今は床に撒き散らされたおびただしい血が残っているだけで、その絶命した騎士達の姿は最初の2人以外は無い。
「なっ・・どういうことだ?」
一方的な殺戮を自覚していた俺はこの状況に驚き思わず後退り騎士から距離をとり、ゆっくりと冷静さを取り戻し理由を知る。
(・・・・そうか、マリアの治癒魔法か)
マリアに教えた治癒魔法がこの状況で活かされ、俺は足をすくわれる。
即死させた最初の2人はマリアの治癒魔法で治すことは不可能でも、その後の騎士達は即死ではなかったため、彼女の治癒魔法エリアヒールで回復させたのだろう・・俺を対象範囲外と認知して。
それでも、一度失った血を取り戻すことはできないから即戦力として復帰させることは不可能だ。それに斬られた感覚は回復しても残っている。
「クソ、なんてことだ・・王国が誇る騎士達が一方的に負けるとは」
「なら、そこの3人が俺を殺しに来るか、団長のお前が殺しに来るかの二択だな・・」
そう言いながら、距離を取っていた俺は、真っ赤に染まっている片手剣の切っ先を下に下げ垂れ落ちる騎士達の血を床に落としながら、ハイドに歩み寄る。
「「 だ、団長!! 」」
2人の若い騎士が、勇敢にもハイドを庇うように前に立ち俺を牽制するも、2人が構える剣の切っ先は震えている。
「騎士が、そんな構えで敵の俺を斬れるのか?」
そう問いながら、ゆっくりと下げていた片手剣を振りかざし、間合いに入ったところで振り下ろした。
ガキィン!ガンッ!ガラン・・
振り下ろした片手剣は、2人騎士の首を斬る軌道に精密に描き命を刈り取るはずだった・・けど、その途中で片手剣より遥かに小さいナイフが刀身に衝撃を与え軌道が乱され、それを制御していた右手首にもう1本の小さなナイフが深く突き刺さる。
そして、右手から制御を失った片手剣は、その勢いを僅かに残したまま騎士の鎧に当たり床に落ちて刀身が折れて役目を終えた。
「・・・・」
足元に冒険者歴と同じくらい長く愛用してきた俺の片手剣は刀身の中央部から折れているのを見つめる。
「「 いまだ!! 」」
殺そうとした騎士2人が、俺に構えていた長剣を上段斬りと刺突で飛び込んでくる。
「邪魔だ・・」
ボゥッ
左手を前にかざし火魔法ファイヤーショットを放ち2人の身体を焼き払い、右手首に深く刺さったままのスローイングナイフを左手で抜き、鮮血を撒き散らしながら正面に立つ男に投げる。
シュッ・・ドスッ!
赤黒くなっていた右手は自らの鮮血で赤く染め直し、左手で投げたスローイングナイフは騎士団長ハイドの眉間に深く突き刺さり、目を見開いたまま膝から崩れ落ちる。
ドサッ
そして、これ以上の戦いは無意味だと感じた俺は、出血が止まらない右手首に治癒魔法ハイヒールで治癒しながら入ってきた扉へと一気に移動すると、騎士達は倒れたハイドを囲み俺を警戒する。
もちろん・・・その中にはあの3人も含まれている。
「待たれよ!」
ここで初めて、王国騎士の鎧を纏うアイナが俺に声をかけた。
「・・・・」
「このまま逃げる気か?」
「さぁね・・・・それよりも、そこの聖女様に早く騎士団長を治癒したらどうだ?」
俺の言葉にマリアが思い出したかのように、ハイドへと駆け寄り治癒魔法を発動している。
「このまま、あ・・あなたを逃す訳にはいきません」
アイナの隣に立っているリンがそう告げる。
「そう言われてもな・・もう、この国なんてどうでも良いし・・そうだ!」
俺は、1つとても良い置き土産を思い出し実行することにした。
・・・・ブォン!
俺の目の前には、真衣達を送還するために必要な魔力を保有する魔力玉を創り出す。
「はぁ・・はぁ・・さすがに速攻で練り上げるには無茶だったかな?」
そう呟きながら、魔力玉を騎士達の方へそっと浮遊させると、突然頭の中にリル達以外の意識が割り込んで来た気がした・・。
『置いていかないで!』
そんな少女の声が聞こえ周囲を見渡すも誰もいない・・。
『みんな、俺を呼んだ?』
『『 呼んでないよ・・ 』』
『そうなの?』
念話で聞くも、リル達ではないようだ・・でも、どこかで聞いたことある声だ・・。
『ハル?・・これからどうするの?』
クウコから念話が届き、これからの行動を聞かれた。
『もう、ここにいる必要はないから、もう出よう』
そう伝えると、クウコ達は隠密スキルを解除して姿を現し俺に寄り添って来る。
「ハル?右手は、だいじょうぶ?」
「もう平気だよ、リル。ありがとな」
スリスリとマリアのスローイングナイフが刺さった右手首を、リルが心配そうに優しく触れているとミオとミリナも心配そうな表情になっている。
そんなやりとりをしていると、再びあの少女の声が聞こえる。
『もう!・・私だけ1人にしないでよ!』
「えっ?・・誰なの?」
「「 ハル?? 」」
「「 ご主人さま?? 」」
リル達は不思議そうに俺を見上げている。
「ん?・・みんな聞こえなかった?」
コクリと4人は頷き肯定する。
「俺だけ?・・気のせいかな?」
『 ・・そんなことなーい!! 』
ドクンッ!と浮遊している月白色に輝く魔力玉が脈動を打つとともに、ズルンと何かが抜け出し俺に飛び込み思わず抱き止めてしまう。
「うわぁ!」
パチパチ・・
突然、魔力玉から飛び出した謎の物体を自然な流れで抱き止めた俺は、腕の中で瞬きをする黒髪黒目の黒のワンピースを着る幼女と見つめ合い・・訪ねた。
「・・・・えっと、キミは?」
「・・・・わたしは、アリスだよ。忘れたの?」
黒髪黒目の幼女はアリスと名乗る・・あの魔王ジェドニスの配下アリスの面影をほんの微かに残す幼女・・その名をアリスと告げた。
まさか、あのアリスと同一人物なのだろうか・・・・・・。




