11章 王都逆襲編 21話 今生の別れ、殲滅の始まり
アクセスありがとうございます。
1話にまとめたくて、少し長くなりました。
最後までお付き合いお願いします。
ガンガンガンッ!・・ガン!
「クソッ!・・硬すぎる!・・」
「おい!どうなってるんだ!?早くしろ!」
「はいっ・・すぐにでも・・」
ガンガン・・ゴンッ!
「ぐはっ!・・ヨルン副団長・・硬すぎて突破できません・・」
廊下が騒がしく目が覚めて、ドアの方に顔を向けて呟いた。
「うん・・我ながら良い出来栄えの土壁だ・・」
そのうち、男達が一段と騒ぎ始めた頃に物騒な言葉が耳に入る。
「おい!お前の魔法でコレをぶっ飛ばせ!」
「なっ・・しかし、場内での魔法公使は禁じられております・・」
「うるせー!もう時間が無いんだ!良いから、早くぶっ放せよ!」
「・・・・わかりました、副団長」
「わかれば良いんだ・・早くしろ」
・・・・・・
騒がしかった廊下が静かになり、詠唱する声が僅かに聞こえる・・。
(あ〜そんな狭い空間で中途半端な魔法ぶっ放すと・・・・)
ボン!
「「「「 うわぁーー!! 」」」」
爆発音と共に男達の悲鳴が響き渡った後に静寂が戻る。
そんなバカな騎士達の声で一度は目を開けたリル達だったけど、俺の土魔法アースウォールを見てまた眠りについた。
(この状況で、また寝るなんて凄いな・・)
それでも一応は警戒しているようで4人のケモ耳は、それぞれが独自に反応しピコピコ動き状況は把握しているようだ。
そのケモ耳の動きを俺は眺めていると、静かになっていた騎士達が再び騒ぎ始める。
「クソッ!なんなんだよ・・もうアイツを出頭させる時間が迫っているのに」
どうやら副団長ヨルンは部下達と俺を迎えに来ているようだけど、目の前のアースウォールを破壊することができず苛立っている様子だ。
何度も聞こえる苛立ちの声と破壊しようとする音で、さすがのリル達も起き上がり目を擦っている。
今は、手足の拘束具を外しているため4人に食べさせる朝飯をアイテムボックスから取り出し食べさせる光景は、いつもの見慣れた日常がある・・ただ外野が煩い。
「ご主人さま、これからどうなるのですか?」
最初に食べ終わったミオが、俺の隣に寄り添い綺麗なオッドアイで俺を見つめ聞いてくる。
「そうだね、とりあえずアイツらの出方を見ながらしばらく付き合ってみるよ。ミオ達は、隠密スキルで俺の近くにいてくれるかい?」
「もちろんです。いつでも、ご主人さまを助けれるよう傍で見守っています」
「ありがとう、ミオ」
ミオの頭を撫でると、ケモ耳をパタンと倒し体を委ねている。
「「 食べたぁ〜 」」
「美味しかったです、ご主人さま」
リルとクウコそしてミリナも食べ終わり、少し汚れた口の周りを拭いてあげながらこれからのことを告げる。
「これで、みんな綺麗になったね・・それじゃ、あの土壁を消すからみんな準備してね」
リル達は立ち上がり部屋の隅へと移動しながら隠密スキルを発動し姿を眩ましていくのを見ながら、手足に拘束具を付け直しベッドで横になってからアースウォールを崩れさせ消した。
「・・・・」
「・・・・」
アースウォールを消すと、俺と副団長ヨルンと視線が数秒重なった後にアイツが驚きの声を出す。
「なっ・・あの土魔法アースウォールは、お前の仕業だったのか?」
「まぁね。お前らが寝込み襲って来れないようにしてたから・・もしかっかくあったんだからしてだけど、本気で破壊できなかったの?アレぐらいの壁を・・」
「黙れ!・・お前ら、コイツを連れ出せぇ!!」
「「「 はっ!!! 」」」
3人の騎士が部屋に入り、ベッドで横たわっている俺を立たせ両足を固定する革製の拘束具を長剣で強引に切り捨てそのまま部屋から連れ出された。
そのまま廊下を早足で移動し階段を何階か降りて再び長い廊下を歩く。そして、いくつものドアを通り過ぎて角を曲がったところで身体を後方に引かれ強制的に止めさせられる。
「ぅおっと・・乱暴だな・・」
そう愚痴をこぼした直後に、俺の後ろにいた騎士が俺の頭を掴みそのまま下に下げられお辞儀をする姿勢を強制的に取らされる。
視界は床と騎士の足だけになり前を見ることはできない・・それから、前の扉が開く音が短く聞こえ前にいた副団長ヨルンが部屋の中へと入って行く。
そして、またしばらく待たされていると、正面にある扉が全開になる音が聞こえ部屋から流れ出る空気を頬で感じた。
(・・かなりの人数が、この部屋にいるな)
気配探知スキルを使わなくても直感で感じる。
扉が開いても部屋の中へと進まないなと思っていると、アイツの声が偉そうに響き渡る。
「入れ!」
この声の主は、騎士団長ハイドだ・・。
背中をグイッと押され、俺は足を進めると次は背中に回されている両腕を後ろに引っ張られたため足を止める。左右には騎士が立っているため、視線を動かしても状況を直視できない。
(こういうのも計算済みってことか・・・・)
そして膝裏を押し蹴られた俺は、そのまま床に両膝を付けて頭を下げた姿勢を取らされた。
「・・国王様、連れてまいりました」
「うむ・・下がってよい」
「はっ!」
副団長ヨルンと周囲にいた騎士が俺から離れ、掴まれた頭も解放された俺は離れ行く騎士達に顔を向けると、その視線の先には、先頭に騎士団長ハイドか立ちその後ろにアイナとリンが立ち並ぶも俺との視線を合わすことなく僅かに逸されていることに胸がチクリと痛んだ。
「では、はじめよう・・ダルムよ」
「かしこまりました、国王様」
初めて聞く男の名前に俺は、右横に向けていた顔を正面に向けて顔を上げると魔法師が好んで着るようなマントを着た老人が俺の前へと移動してくる。
それよりも国王の少し離れた横で立ち並ぶ、懐かしい服装の集団に視線は釘付けだ・・・・。
「せ・・制服?」
「ほほぅ・・貴様も、勇者様が着ているセイフクの事を知っているようだな?」
「・・それが、それがどうした?・・爺さん」
「この宮廷魔導師のワシをジジイ呼ばわりとはな・・」
「ジジイは、ジジイだろ?それか、アレか?爺さんは、エルフか?」
ドゴンッ!
「がぁっ・・」
ジジイが持っていた杖で頭を殴られ、そのまま床に倒れ込む。
『『 ハル!! 』』
『まだだよ・・リル、クウコ。まだ、そのままで・・』
『『 うん 』』
寝転んだままジジイ・・いや、ダルムを見上げるその向こうに3人の王女がいた。左に第1王女ミリア右に第3王女マリア・・そして真ん中いるのは、きっと第2王女の誰だったかな?
2人に挟まれ立っている少女の顔は、遠いどこかで見た記憶があるけど頭が痛くて思い出せない。
「さて、お主のために国王様の貴重な時間を浪費させるわけにはいかないから、さっさと始めようとするかのぉ・・」
ダルムは、そう呟きながら踵を返し俺に無防備な背中を見せる。
(なんかムカつくな・・このまま切り捨てても良いんだけど、射線に王女がいるから難しいか・・)
「それでは、第1王女ミリア様・・勇者様、よろしくお願いします」
「・・わかりました」
ミリアはそう答え、部屋の奥へと消えて行き、制服姿の沖田もミリアの後を追う。
そして、部屋の奥からミリアが両手を僅かに上に掲げ、その身体を支えるかのように沖田が寄り添っている。
(・・なんだか良い感じの2人だな。これが勇者ジョブと平民ジョブで召喚された差なのか・・ちくしょう、悔しいな・・まったく)
その2人の姿を見ながら俺は、強烈な敗北感を味わっている。全ては、初めから勇者沖田の物である運命かのように・・。
そして、第1王女ミリアの掲げている両手の先には、月白色に輝く魔力玉が浮遊している。
「ありがとうございます」
ダルムが2人に礼を述べた後に、再び俺を見下ろす。
「素直に答えれば、痛い思いをしなくて済むぞ・・あの魔力の塊は、お前が創り出したのか?」
「・・・・あぁ、確かに俺が作ったな・・不純物が混じったけど」
「ほう・・素直に認めるのだな?ならば、あの魔力を制御できるのだろうな?」
「当然だろ?俺が、王国を・・王城をいつでも消滅させるために作り上げたんだからな」
俺の言葉に周囲が騒ぎ始めるも、俺は気にせずゆっくりと立ち上がる。
「ふん・・そんな脅しなんぞ、ワシには効かぬぞ?」
「なら、聞くけど過去に王都の南の森が大爆発したの知ってるか?」
「もちろん知っているぞ・・アレは、魔族の仕業だったと結論付いておる」
ダルムは何も知らないようだ。そして、偽りの情報を信じているようで自信満々の表情をしている。
「そうか・・王国では、そうなっているんだな・・」
「何が言いたいのだ?」
「・・アレを俺は魔力玉って呼んでんだ。あの第1王女が制御してそうでしていないアレは、南の森で爆発させた魔力玉の10個分以上の威力を持ってるんだぜ?・・俺がこのまま魔力玉を発動させたら王都・・いや、王国領土が一瞬に焦土化するだろうな」
「・・・・そんな脅しなぞ信じるものか」
「そうか?それなら、お前が崇拝する国王に聞いてみろよ」
俺とダルム2人でやりとりをしていると、痺れを切らした沖田が俺とダルムの近くにやって来た。
「おい!お前は、さっさと俺らのいう通りにすれば良いんだよ!」
「沖田・・だからさ、お前らの目的なんて知らねーよ。いったい何がしたいんだ?」
「はぁ?決まってるだろ!魔王討伐した後にすることだよ!」
「・・・・・・あぁ、送還魔法のことか」
この世界に長く生きていた俺は、送還魔法のことなどすっかり忘れていた。
沖田達はたしかにこの世界に召喚されて、俺が生きてきた年数の半分も満たない。それで、全員学校の制服を着ていたことに納得した。
一応、俺もこの世界に召喚された存在だけど俺にとっては元の世界が異世界に感じるほど今の生活が大事に感じている。
「わかったんなら、さっさとアレを使って俺らを元の世界に帰るのを手伝えよ!」
すると、壇上で並んで立っていた2人の少女が沖田に問い詰める。
「待ってよ!話が違うじゃない!おにぃも一緒にって聞いたから賛成したのに」
「そうだよ、これじゃまるで、にぃにが私たちを送還させるためだけに魔法を使うみたいじゃん!」
「・・そんなことないよ、琴音ちゃん美音ちゃん。魔法行使する椎名も同時に送還できると文献に記録されてるから」
それから黒髪少年と黒髪少女が対立し、状況がゴチャゴチャに陥った時に国王が一喝した。
「鎮まれ!召喚者達よ!」
あまりにも大きく通る声だったため、沖田達は静まり返り国王を見ている。そして、国王は溜息をついた後に告げる。
「既に勇者沖田殿の意思で決定された事項を覆すことは重罪である。このまま召喚者達の送還の儀を始める」
「はぁ?・・・・勝手に始めとけよ。俺には関係ねーし」
あまりにも一方的に進めようとする国王にムカついて、心の声を口にしてしまった・・・・。
そして、この部屋の空気の温度が急激に下がる。
正面にいる沖田や石原達、そして周囲にいる王国騎士達が俺に殺気を放ってくる。
(おぅ・・周囲は敵だらけだ・・まぁ、リル達がいるから問題ないけど・・)
「てめぇ・・ふざけんなよ・・俺達は元の世界に戻るために魔王討伐の使命を背負って戦い抜いて来たんだぞ?」
「沖田・・おまえ、本当に魔王を討伐したのか?」
「何が言いたい?」
「だって、俺が生きてるし・・・・けど、そんなに帰りたいなら叶えてやるか・・」
そして、第1王女ミリアの近くに浮遊している魔力玉に意識を繋ぐ・・・・。
その瞬間に、俺のものとは違う存在を感じた。
(アリス?・・・・この気配は、キミなのかアリス?)
言葉に出さずも、俺の問い掛けを肯定する意思を感じ取れることに驚く。
「何してんだよ?早く進めろよな」
相変わらず自己中な勇者だ・・。そう思い沖田を一瞥し、意識を魔力玉へと戻すその前に。
「なぁ、送還魔法の魔法陣はどこだ?」
「それなら、ここにあるぞ」
ダルクが指差す床に魔法陣が描かれていた。それを鑑定スキルで確認すると、転移魔法系の魔法陣だった。もちろん転移先は・・・・俺にはわからない。
「わかった・・それじゃ、魔法陣の中に入って・・そしたら、この魔力玉を使って魔法陣発動のエネルギーに変換するから」
沖田を先頭に石原や田岡が移動する。そして、真鍋に寄り添うようにリサが同伴している。
「ダルクさんよ、1人エルフさんが混じってるんだけど、どうなの?」
「ふんっ・・本人と真鍋様の強い希望だ」
「へぇ・・」
リサと一度だけ視線が重なるも、彼女の碧眼に映る俺には興味は微塵も無い。
「櫻田先輩達も早く魔法陣に入ってくださいよ・・」
沖田が真衣達への口調を変えている。きっと送還後のための配慮なのだろう・・気持ちが悪い。
足取りが重い4人が、ゆっくりと魔法陣の中へと移動し少し沖田達と距離を取って俺を見つめている。
(これで、最後か・・)
「琴音、美音!・・父さんと母さんによろしくな!兄ちゃんは、異世界で元気やってたと伝えてくれ」
「にぃに・・」
「おにぃ・・」
そして視線を真衣と愛菜に向ける。
「真衣・・ほんの少しだけど、彼女になってくれてありがとう。向こうで、ちゃんと結婚して幸せになってな」
「・・ハル」
真衣は泣き出し、座り込んでしまった。
「愛菜・・ずっと俺のこと好きでいてくれてありがとう。愛菜の笑顔好きだったよ」
「う゛ぅ・・セ、センパイ・・ヤダよ・・離れたくないよ・・一緒に帰ろう、ハル」
愛菜は涙ぐみながら両手を口元へ運び、その手が震えている。
「・・愛菜、ごめんけど一緒に帰れないんだ・・この世界にたくさんの絆ができたから」
そして、俺は琴音と美音そして真衣と愛菜を見て最後の言葉を贈った。
「琴音、美音・・真衣、愛菜・・・・みんな愛してる・・向こうで俺以上に幸せになってくれ。この遠い世界で4人の幸せを心から・・心から願っているから」
最後の贈る言葉を伝えた俺は、魔力玉に意識を集中し王国が描いた送還用魔法陣と融合させる。
月白色に輝く魔力玉は、ゆっくりと俺の前へと移動しそのまま魔法陣の外輪へとゆっくり触れさせると、少しづつ氷が溶けていくかのように魔法陣に吸収され白く描かれた魔法陣が白く発光した後に虹色へと輝きを放ち始める。
目を瞑りたくなるぐらいの強く輝く虹色の光が足首の高さ、膝下そして腰上へと虹色の光を広げていく。
もう2度と会うことができない4人の顔を俺は笑顔で見送る。瞳に溜まって今にも溢れそうな涙を溢さないように・・そして、もうこれ以上我慢できなくなったところで虹色の光が一気に4人を包み込んで消え去った・・・・。
虹色に輝きを放っていた魔法陣は消え去り、その中で立っていた琴音達も消え去って誰も立ってはいない場所を見つめ、小さく名前を呼ぶ。
「琴音、美音・・真衣、愛菜・・」
もうこの世界に存在しない愛しい4人の笑顔を思い浮かべながら・・・・。
そして、俺の悲しみをこの国の国王が壇上で嘲笑う。
それに同調するかのように騎士団の連中が大笑いしている。
そして、その笑い声を制するように国王が右手を上げると、騎士達が笑い声を止めた。
「・・なんだよ、笑いたけりゃ笑い続けろよ・・」
「無様だな・・幼馴染を奪われ妹も女も奪われ持ち去られた男よ・・滑稽だ・・そして、おまえは既に用済みなのだ・・」
「用済みなのは、やる前から知ってるさ・・だから何だって言うんだ?」
「ふん・・強がりを・・・・貴様の運命は既に決まっているのだ!今日ここで人生が終わるという運命を!我が娘達の前でその命を散らし無様に屍となるが良い」
「おい、国王・・1つだけ教えてやろうか?」
国王は、勝ち誇ったかのように壇上にある椅子に座る。
「なんだ?最後の遺言か?」
「まぁ、そんなところか?」
「・・よかろう、特別に発言を許してやろうではないか」
「運命はな・・運命は抗うためにあるんだよ!」
そう言い吐き捨て、俺は両腕を拘束していた拘束具を全力で引き裂き、国王へ投げ捨てた後にアイテムボックスから愛用の片手剣を抜刀し構えた。
「愚か者が!たった1人で国家と敵対するとはな!!・・ハイドよ!この愚か者を全力で排除せよ!」
「はっ!」
騎士団長ハイドの返事とともに数え切れないほどの抜剣する金属音が周囲から聞こえ、まるで俺を一方的に虐殺を開始する鐘の音が鳴り響いたのだった・・・・。




