11章 王都逆襲編 4話 逆襲の始まり
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「全然、ハルの言うことを信じてなかったね・・」
「仕方ないさ、クウコ。俺達みたいに探知系スキルを持っていない冒険者もいるから」
クウコが不満な感情を乗せて呟き口を尖らせ歩く姿にそう諭しながら、スッと抱き上げる。
「・・むぅ〜」
可愛く唸る声を落ち着かせるかのように、クウコの頭を撫でてやると、満足げな声を漏らし右側の首元に頬ずりしてきた。
「んふぅ〜」
すると、反対側からもう1人が不満の声を漏らしてしまった。
「さっきから、クウコばっかり・・」
左肩にしがみつき不満を漏らすリルを左腕で駆け込んでクウコと同じように抱き上げて歩く。
同じ扱いをされて満足したのか、リルは機嫌を直してくれたようで首元にピッタリとくっついている。
(・・これじゃ、誰かに襲われても対処できないよな・・)
リルとクウコを抱き上げて歩いているため、走って移動することはできず街中を散歩するような速度で移動しているから、害意を持つ集団が先に王都北側の近くまでたどり着いたようだ。
「ハル、なんかあっちに集まった集団は止まったままだね?街の中の気配も、同じ場所にたくさん集まってるみたい・・あっ!・・この気配は」
「アイツらだね、リル」
「みたいだね、クウコ」
俺より遥かに優れた探知能力を持つ二人は、王都の北側の状況を俺に教えてくれている。その中でも、過去に少しだけ行動を共にしていた存在を捉えたようだ。
「・・アイツって、勇者のことかな?」
「そうだよ、ハル」
頬ずりをしていたリルが、スッと顔を離し俺の顔を見つめながら言う銀色の瞳に俺は見入ってしまう。
「アイツは、ハルに攻撃魔法を放った」
同じように頬ずりをやめたクウコは、低い声で呟く。
「まぁ、沖田達が向かっているなら急ぐ必要もないか」
早く移動できない俺は内心焦っていたけど、沖田達が既に行動しているのなら出しゃばって行く必要も無いと感じながら、今のペースを保ったまま移動し北門が見える場所へと辿り着き足を止める。
「おぉ〜凄い数の魔物達だね・・」
隠密スキルの重ねがけをしている俺達3人は、固く閉ざされた北門横にある小さな通用門横に立って集結している魔物達を眺めていた。
門の向こう側から、すなわち街の中から大勢の声が聞こえる。きっと、王都にいる冒険者達が続々と集まっているのだろう。
「ねぇ、ハル?私達がここに来る必要ってあった?」
リルが対峙する魔物を見ながら呟く。
「そうだね、こんなに戦力が集まっているなら必要なかったかもね」
「それなら帰ろうよ?リル、まだ眠たい・・」
「クウコも眠たいよ・・ねぇ、ハル帰ろう?」
2人は眠たそうな顔で、俺に身体を委ねてくれている。
「そうは言ってもねぇ〜ここまで来ちゃったしなー」
そんなやりとりをしていると、魔物達と北門との開かれた中央あたりの地面に突如魔法陣が展開され不気味な光を放つ。
その変化に監視塔にいる門兵が、灯りを魔法陣へと向けて照らすと、不気味な輝きを強めていた魔法陣は展開が完了したのか輝きが収まり、中央から何者かが姿を現す。
そこには、夜の暗さに溶け込むような格好をする人型が1人・・。
「ん?あの子は・・・・」
この夜にもかかわらず、黒い日傘をさして顔を見せないように立つ漆黒のゴスロリを見に纏う背格好からして、彼女1人しか存在しない。
「ハル、知ってるの?」
クウコの問い掛けに顔を向けることなく、俺は小さく答えた。
「あぁ・・あの子は、アリス・・・・魔王ジェドニスの配下アリスだ」
リルとクウコは、俺の言葉を聞いた途端に俺の腕から降りて自らの足で地面に立つ。
「「 アリス 」」
アリスの名前を口にするリルとクウコは、俺の会えに立ち隠している尻尾がスカートを捲らせて外へと出てパンパンに膨れ上がっている。
俺達3人の気配に全く気付かないのか気付いていないフリをしているのか、視線を1度もこちらに向けることなく北門の先を見据えているようだ。
ギイィィ・・
ゆっくりと北門が開放される音が聞こえた後に、街の中から4人の少年が姿を現しアリスの前へと立ちはだかる。
もちろん、その4人の先頭には聖剣を持つ勇者沖田がいる。そして、久しぶりに見た真鍋の姿が・・・・。
「あいつ、歩けるようになったんだ・・」
「ハル、アイツの1番後ろにいるの誰?初めて見た・・」
「1番後ろの?・・あぁ、真鍋って言うやつさ。あいつと戦った時に、両足を斬り落としてやったんだ。ジョブが魔術士だから将来的に自分で修復できると思ってね・・」
「残酷だね・・知り合いだったんでしょ?」
「まぁね・・まぁ、リサを俺から寝取った奴だし」
「リサ?・・カラといつも一緒にいたエルフの女ね・・」
リルがリサの名前を聞いた途端に冷淡な口調になってしまった。
そのリルの言葉に反応したのか、真鍋が俺達の方を見たけど、視線は重ならずそのままアリスの方へと向き直る。
「お前、生き残っていたのか?・・アリス!」
聖剣の切っ先をアリスに向けて告げる沖田は、魔王ジェドニスを倒した?せいなのか、自信に満ち溢れたオーラを纏っている気がする。
「そう・・わたしは、アリス。敬愛なるジェドニス様から頂いた、大切なわたしの名前・・その名前を劣等種の貴方に口にするなんて万死に値するわ」
「もう、その敬愛する魔王は存在しないがな?」
沖田らしい性格だ。敵をいきなり煽るとは・・。
「黙りなさい・・魔王ジェドニス様は生きておられます」
沖田の煽りに乗せられることなく、感情のない口調でアリスは告げる。
「なんだって?魔王ジェドニスは、この世から存在ごと消してやったんだよ!この王国勇者の俺がな!」
「くっ・・・・うるさい!」
バシュッ!・・ドォゴォーン!!
アリスは、沖田の言動に感情的になり日傘の先を向けて先端から魔法を放った。
その魔法は、直接沖田を狙う軌跡ではなく背後にある北門を貫き破壊するのが目的であったようだ。
「ふっ・・避けないなんて余裕なのね」
「はっ・・三下の攻撃なんて避けるほどでもないからな」
沖田の決め台詞のような気持ち悪さを感じる俺は、アリスの背後にいるたくさんの魔物達がなぜか気になってしまう。
「ハル?どうしたの?」
ふと、クウコが俺の何かに勘付いたのか振り向き声をかけてくる。
「ん?・・なんでもないよ、クウコ」
そう答えながら、クウコの頭を撫でて誤魔化す。
「そう?ならいいけど」
そんな会話をしていると、アリスと沖田達に動きがあった。
「さぁ、人族の勇者・・私達の逆襲の前に自分達の無力さを怨みながら蹂躙されなさい!」
アリスはそう言い終えると、足元に魔法陣を展開し地面に沈んで行きながら姿を消していく。
アリスの姿が消えたのが合図だったのか、魔物達が一斉に唸り声を上げて破壊された北門を目指し雪崩れ込んで行こうとする。
素速い機動力を持つウォーウルフが先陣を切り、数で圧倒するコブリン野郎が続きその後ろからオーガやオーク、そしてフォレストベア達のパワー系の魔物達が後ろから押し込むように攻め込んでいく。
それを迎え撃つ勇者沖田とその一行を街から見守る冒険者達の目には、まさに伝説の勇者が街の危機を救う背中を見て惚れ込んでいるのだろうと俺は勝手に想像していた。
「あっ・・・・」
聖剣を振りかざし、簡単にウォーウルフやコブリン達を斬り倒し死骸の山を高く積み上げていき、後方に下がった石原と田岡そして真鍋がその山を燃やし灰と化している。
でも、連携がうまくいっているのは、ほんの最初だけで今はいくら強力な火力を持っていても、圧倒的な数で押され少しづつ魔物達を街への侵入を許し初めていたのだった・・・・。




