9章 イシタ公国編 15話 地方都市モコン④
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冒険者ギルド長のエリーナが、俺達の野営場所にやって来て、設営したテントを見ながら俺の近くへとやって来る。
「ちょっといいかな?」
「どうしたんですか?ギルド長」
エリーナが来たと同時に、ラニアが野外イスを持って来てエリーナをイスに座らせる。
「ありがとう、メイドさん・・なぁっ!」
イスを持って来たメイド服を着たラニアを見て、エリーナの顔が青く硬直している。
「あ・・ありがとございます。ラニアさん」
「いえ・・私は、ハルさんのメイド兼妾の身ですから」
「そう・・ですか」
ラニアが立ち去った後に、少し青い顔をしたエリーナが小声で聞いてきた。
「ど、どうして商人ギルド長のラニアが、あなたのメイドに?どういう流れで?」
「なんでだろうな・・家を建てたら、いつのまにかラニアがメイドになってた?みたいな感じ」
「・・意味が分からないわ。あのラニアが1人の男に人生を捧げるだなんて・・」
ラニアの心境が理解できないエリーナは、ラニアの行動を見て呟いた後に俺に視線を戻す。
「それよりも。あなた達に依頼があるの」
「俺達に?他にギルド直轄の冒険者パーティーがいると思うんだけど・・」
「そうなんだけどね、見張りや騎士団に対応するパーティのシフトの都合で対応できるパーティーがいなくて・・だから、頼れるパーティーがあなた達しかいないの」
「・・依頼内容は?それから考えますよ」
エリーナが持ってきた依頼は、街に取り残された住人がいないかの直接確認する依頼と生き残った魔物討伐だった。
「それって俺達じゃなくてもいいんじゃないですか?それに、昼前に街へ行ったけど誰1人として居ませんでしたよ?」
「えっ?もう街に入っていたの?」
「あぁ、それに勇者一行の石原と田岡って少年に遭遇したし」
「・・・・そう、なんだ」
なぜか俯いたエリーナの表情に違和感を感じたが、理由が分からないためスルーして話を続ける。
「だから、その依頼はほぼできているから受けれないよ。また違うのがあったら、そっちでお願いする」
「ありがとう・・また何かあったらお願いね」
そう言い残し、何かブツブツ言いながらエリーナが帰って行く。それから特に大きな変化はなく、遠くで勇者一行が闘う音だけがたまに聞こえて来るだけで、俺は念のため荷台の幌の上で1人周囲を警戒をしている。
「魔族との戦いだから緊張していたけど、何も起きないものなのね」
顔をひょこっと出したカラの青い瞳が、幌の上に座る俺を見つめている。
「そうだね。まだここは安全地帯だから」
手を伸ばしてきたカラの右手を掴み優しく引き寄せる。
「ありがとう、ハル」
「あぁ」
引き寄せたカラを足の上に座らせ、後ろから腕を回しカラのお腹の前で互いの腕を絡ませて、しばらく喋ることなく景色を眺めていると、スッとカラが見上げ視線を合わせる。
「・・・・ねぇ、ハル」
「なんだい、カラ」
絡ませていた指にギュッと力が入り、カラが口を開く。
「・・あのね、リサのこと怒ってる?」
「リサ?・・あぁ、リサね・・・・・・今は何も感じないな。リサ本人が決めたことだからね。カラはどうなの?」
カラは、視線を外し俺の胸に顔を押し付けながら告げる。
「わたしは、私は許せないの。2度も命を助けてくれたのに・・・・ハルだけを愛しているって誓っていたのに・・裏切って、あれほど嫌っていた勇者の仲間を選ぶだなんて・・」
「カラ・・ありがとう俺の傍に居てくれて。もう、この話は終わりにしよう」
ギュッとカラを抱きしめて、軽いキスをした後にタイミング良くエリーナが俺のところへとやって来た。
「・・また来てゴメンね。もう少し後にしたほうが良い?」
「・・いや、別に良いですけど」
「そっか、あの・・お姉さん、あまり私を睨まないでもらうと助かるんですが・・・・」
カラの頭越しにエリーナを見ているため、彼女の表情が見えない俺は、カラ頭を撫でるとエリーナが溜息をついて口を開く。
「ありがとう・・それでなんだけど、新たな依頼を持って来たんだ」
「・・わかった。こっちに来てください」
俺は、カラをお姫様抱っこをして立ち上がり、幌から飛び降りてアイナ達がいる場所へと移動する。
「カラ、ここに座ってて」
「うん」
少し顔が赤いカラを隣のイスに座らせて、俺はエリーナの話を聞くことにした。
「・・それで、今回の依頼とはなんでしょうか?」
「王国冒険者パーティ達と共に魔族討伐・・を頼みたいなと」
歯切れの悪いエリーナに違和感を感じながら、討伐に関わる細かな動きの説明を聞き終わり返事を翌朝にすると伝えると、エリーナは帰って行った。
「あのギルド長の依頼を蹴るの?」
隣に座るカラが心配そうに聞く。
「受けないよ・・ギルドは信頼できない組織だから」
「なら良いけど・・心配だよハル」
「大丈夫さ。あの時と違って仲間がたくさんいるから」
エリーナが立ち去ってから、警戒して静かにしていたみんなが雑談をはじめている光景をカラと2人で見渡す。
「そうだね。今はハルと一緒に居たいと想う人達がいるからね」
それからエリーナが来ることはなく、陽が沈み夜になったため飲み騒いでいる騎士達の声を遠くに聴きながら苛立ちを抑え寝ることにしたのだった・・・・。




