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9章 イシタ公国編 14話 地方都市モコン③

アクセスありがとうございます。


 木々に囲まれ見通しの悪い緩やかな坂道を走り抜け、視界が開けた先には簡易に作られた柵と見張りをする冒険者の姿が見えた。


「止まれ!何者だ!!」


 ラニアに馬車を止めさせ、俺は見張りをしている2人に歩いて近づきながら胸元からギルドカードを取り出す。


「帝国から来た冒険者パーティーだ!」


「そのギルドカードを見せろ」


 警戒しながら見張りの男が近付き、ギルドカードを確認する。


「本当のようだな・・それで、ここに来た理由は?」


「コモンに寄ったら無人で、それから魔物のような声を聞いてこの丘まで逃げて来たんだ」


「・・そこから動かずに待っていろよ」


「わかった」


 男は柵の中に入って行き姿が見えなくなった代わりに数人の冒険者達が姿を見せて俺を警戒している。


『ハル、大丈夫か?』


『アイナ、今のところは問題無いよ。そのまま待ってて』


 心配するアイナからの念話に返事をしていると、向こうから見たことのある女性が笑顔でやって来た。


「いやぁ、本当に来てくれたんだね!見張りの冒険者から、帝国の冒険者パーティーが来たって言うからもしかしてと思ったら正解だったよ」


 王都の冒険者ギルド長のエリーナは、俺の手を握りブンブン振りながら話している。


「あのぉ、今はどんな状況なんですか?」


 エリーナは少し不満そうな顔で口を開く。


「もう仕事の話しなの?・・はぁ、仕方ないな。今は、魔族が3回目の攻撃を仕掛けてきたところだよ。それを勇者一行が対処中なんだ」


「そうですか・・なら、俺ら冒険者は必要なかったですかね?」


「ん〜今の戦況なら勇者一行で対処できてるから必要はないかな。でも、勇者様達が休養している間に戦力を確保するために必要だから待機してもらってるんだ」


「それなら、俺達のパーティーも待機していますね」


「そうだね、ギルドとしての依頼していない君達は、ギルド長の私からの直接依頼と言うことで参加してもらうけど、いいかな?」


「わかりました」


「うん。助かるよ。柵の中に入って、空いてる場所で待機してて」


 エリーナと別れた俺は、みんなの所へ戻り状況を簡単に説明した。


「おにぃ、とりあえずは様子見ってことなの?」


「そうだね。何かあったらすぐに対処できる状態で休憩しよう」


 馬車を誘導するように前を歩き、見張りをしている冒険者の横を通り柵の中に入ると奥には複数の天幕が設営されていて騎士団の旗が風になびいている。


(あの奥は騎士団の連中がいる場所か・・)


 騎士団がいる天幕の手前には、もう一つの柵がありこの先に入れそうにないと感じた俺は、適度に離れた場所で馬車を止めた。


「ラニア、ここで野営の準備をしよう」


「はい。それでは、昼食の支度をしますね」


「あぁ、よろしく」


 最初は、荷台で寝ようと考えていたけどテント設営に切り替えることにした俺は、アイテムボックスから野営キット一式を取り出す。


「ハル、今夜はテント泊まりか?」


「まぁ、最初は荷台でと思ったんだけど、やっぱりテントにしようと思ってね。アイナ手伝ってくれる?」


「もちろんだ」


 アイナとリンでテント設営の準備をしていると、ミオとミリナも手伝いに来てくれた。その後ろでは、ラニアを筆頭に真衣達が昼飯の支度をしてくれている。


 あっという間にテント設営が終わった俺は、丘から街を見渡せる場所に移動するとコモンの街のさらに遠くの場所で戦闘が起きているのが見える。


 きっと石原と田岡の2人がチートを発揮して数千を余裕で超える数の魔族達を殲滅している状況を見て、思わず思いが口からこぼれた。


「あれが神から選ばれ与えられた召喚者のチート力か・・」


 羨ましい思いにグッと右手を強く握りしめていると、そっと2つの手が優しく包み込んでくれた。


「おにぃだって、十分チートだよ」


「そうだよ、にぃに」


「琴音、美音・・2人に聞かれちゃったか・・」


 そのまま2人が俺に寄り添い傍にいてくれる。


「でも・・まさか琴音と美音までも、この世界に召喚されるとはな・・2人は元の世界に帰りたくないのか?」


「最初は、帰りたい気持ちでいっぱいだったよ。でも、あの時におにぃに出逢えたから最初より帰りたいとは思わなくなったかも」


「私も琴音と一緒だよ、にぃに・・元の世界は、にぃにがいなくなってから全てが白黒に見えて楽しくない世界だった」


「そうか・・俺はもうこの世界に長く生活しているから慣れてしまったけど、2人は娯楽がなくてつまらない世界だろ?」


「確かにそうだけど、それ以上に嬉しいことが叶うからいいんだよ!ねぇ、美音?」


「だよね〜琴音」


 琴音と美音は、何が嬉しいのか笑顔で俺を見ている。


「2人とも、いったい何が叶うのが嬉しいの?」


「それはね〜おにぃ(にぃに)の子供を授かること」


「・・・・俺達は兄妹だよ?」


 2人の言葉に俺は驚き、それ以上の言葉が出なかった。


「それはもちろんだよ。元の世界じゃ絶対に許されないことだけど、この異世界なら問題無いってマリアさんが教えてくれたの」


 琴音が笑顔で告げて、同意するかのように美音が頷いている。


「それは、この世界で生まれた上流階級の貴族だけの話しだろ?真に受けたら・・」


「にぃには、嫌なの?」


「そんなことないよ。ずっと2人といられるから」


「「 ありがとぉ〜 」」


 琴音と美音と話をしていると、リンがやってきて昼食ができたと教えてくれた。そのまま馬車の場所へと戻る間は、ずっと琴音と美音にベッタリとくっついたままだった。


「お待たせ」


 戻ると、みんなは俺街のようでイスに座り待っていてくれたようだった。そして、俺がイスに座ると左右に琴音と美音が座りラニアが配膳をしてくれる。


 それからみんなで昼食を一緒に食べ終わった頃に、ギルド長のエリーナが俺達の場所へとやって来た・・・・。






 



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