9章 イシタ公国編 2話 移動と強化②
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薄暗いテントの中で俺と真衣が密着し、少し離れた場所で琴音と美音そして愛菜が心配そうに見ている。
「真衣・・はじめるよ」
「うん、いいよ・・ハル」
繋いだ指先から俺が保有する微量の魔力を真衣の指先へと干渉させると、ピリッと刺激を感じたことを合図に少しづつ流し込んでいく。
最初の一瞬だけ僅かな抵抗を感じ上手く流せないと思い、手を繋いだまま真衣を抱き締めると彼女は受け入れてくれた。
「これが、ハルの魔力・・なんだ」
「真衣、そのまま俺の魔力を指先から全身へと巡らせてみて」
「やってみるね・・あっ!・・こうかな?」
俺の魔力を受け入れた事で、真衣の体温が急激に上昇するとともに呼吸が荒くなり汗ばんでいる。
「はぁ、はぁ・・あっ!凄い!・・ハルの魔力がこんなに濃くて、優しいなんて」
真衣との魔力融合は最初だけうまくいかなかったが、今は順調に流れ交わりいい感じになっている。
「身体と心の準備は整ったみたいだね?真衣・・次の段階にいくよ」
「次の段階?わたしは、どうすればいい?」
「まずは魔力を通して、俺の存在だけを頭の中で意識して」
「ハルを意識すればいいのね・・やってみる」
俺は、まだ繋がっていない真衣を意識して念話で呼びかける。
『真衣・・俺の声が聞こえるかな?』
何も抵抗のない世界で何かと波長が合う感覚を感じる俺は、繰り返し呼びかけると真衣と繋がった感覚を掴む。
『・・ハル?』
『そだよ・・これは念話スキル』
『これが念話・・普段の会話より感情が心に直接届く感じがするね』
『そうだね。念話スキルは、獣人のミオとミリナそしてシェルとアルシアそれにマリアも習得しているから』
『わかった。終わったら、みんなともやってみるね』
俺と真衣を見ている愛菜が、何やら琴音達と話している声が聞こえた。
「ねぇ琴音?センパイと真衣さん、会話していないのに何か通じ合ってる顔をしてない?」
「うん。急に静かになったけど・・おにぃと真衣さんは、お話しているみたい」
どうやら3人は俺達の変化に気付いたようだ。俺は真衣と念話をしながら琴音達に告げる。
「真衣が念話スキルを習得したよ。これから気配探知スキルを習得するから」
「「「 おぉぉ〜!!! 」」」
3人が同時に同じような反応をする。
「それじゃ、ここから集中するから静かにしててね」
『真衣、視覚を頼らずに目の前の3人の存在を捉えてみよう。そのまま俺の魔力変化を感じ取ってね』
気配探知スキルを発動し、真衣に識別できやすいように3人の気配を捉える。
『あっ・・これは、琴音ちゃん達?確かに3人の気配を感じるよ』
『そう、これが気配探知スキルの感覚だから。次は、隠密スキル』
『うん、お願い』
俺は、そのまま隠密スキルの発動条件をイメージさせ真衣にきっかけを掴ませる。召喚組ならマリアより早く掴めると思ったからだ。
『こうかな?』
「あっ!!真衣さんが消えた!・・戻って来た・・凄い」
美音の驚く声が聞こえたため、どうやら成功したようだ。
「真衣、感覚は掴めたかな?」
「うん。1人でも発動できるようになったと思う」
「なら習得完了だ。スキル能力アップは、また次にしよう」
真衣は俺から立ち上がり振り向きながら口を開く。
「ありがとう、ハル。練習して頑張るね」
「あぁ。けど、無理は禁物だよ。次は愛菜かな?」
「センパイ・・わたし最後で・・いいです」
「愛菜・・じゃ〜おにぃ、わたしにシテ」
「いいよ。琴音ここにおいで」
琴音も同じように座らせ魔力融合を始める。真衣とは違い兄妹のせいか、一瞬で俺の魔力を受け入れ全身への魔力融合も速攻でできた。
「はじめるよ、琴音」
「おにぃ・・きて」
魔力の相性が良く気配探知スキルと隠密スキルをスムーズに習得させることができて、俺の魔力消費も少なく済んだ。
「おにぃの魔力・・すごい気持ち良いね。マリアさんの気持ちがわかったよ」
「おねぇちゃん・・にぃにの魔力を感じれるの?」
「うん・・美音も、おにぃと魔力を繋いだらわかるよ。もっと好きになっちゃう」
「わかった。にぃに?美音もいい?」
「美音、おいで」
琴音と美音が入れ替わるように座る。顔を上げて潤んだ瞳で見つめる美音の頭を撫でて呟く。
「美音、そんな期待されてもな・・みんなと感じ方が違うかもだぞ?」
「大丈夫だよ!にぃにと美音の相性は完璧だもん」
満面の笑みで見つめる美音と手を繋ぎ魔力融合を始める。美音も琴音と同じように短時間で2つのスキルを習得した。やはり召喚者だからマリアと違い適応性が良いのだろうか。
「にぃにの魔力・・にぃにの魔力はすっごい安心するね。あの包まれている感覚がまだ残っているよ」
「そうか?また今度魔力融合してみる?」
「うん。またお願いね!にぃに」
美音は嬉しそうに立ち上がり愛菜を呼ぶ。
「次は愛菜だよ!」
「・・うん」
愛菜は少し不安なのか、3人よりは消極的だ。
「愛菜、今夜はやめとく?」
「・・いえ、やります。お願いします。センパイ」
「愛菜、頑張って!」
そう励ます琴音は、真衣と美音を連れてテントから出て行ってしまい俺と愛菜の2人キリになってしまう。
「愛菜、ここに座って」
「・・はい。センパイ」
緊張している愛菜を落ち着かせるため、すぐに始めることなく優しく抱き締める。
「怖くないよ、大丈夫だから」
「はい、センパイ」
愛菜と手を繋いだ俺は、慎重に魔力融合を始まるがなかなかうまく繋げることができないため倍以上の時間がかかってしまった。
「セ、センパイ・・わたしでもできるのでしょうか?」
「大丈夫だよ。自分を信じて」
「はい」
それからゆっくりと融合を始め、時間はかかったが2つのスキルを愛菜も習得することができたが1つ問題が起きてしまう。
「しぇ、しぇんぱぁ〜い・・だいしゅき・・」
想定以上に魔力融合に時間がかかってしまったため、強引にも流す魔力量を増やし過ぎてしまったのだ。そのため愛菜は全ての感度が敏感になり、マリアのあの時以上の状態になってしまった。
早く綺麗にしてあげないといけないと考えていると、愛菜の声を聞いたマリアがテントの中へと入ってくる。
「愛菜さん!大丈夫です・・・・んぁ?」
「ゴメン、マリア。あの時のマリアを超えちゃった・・」
「そ、そそそんな恥ずかしいことを思い出させないでください!それよりも早く・・」
俺と愛菜の足元は大変なことになってしまい、2人の足はビチャビチャに濡れている。俺は、歩み寄るマリアに脱力し意識が朦朧としている愛菜を預けて立ち上がり、生活魔法クリーンで周囲を綺麗にする。
「ハル、愛菜さんの方も」
「あぁ、そうだね」
テントを綺麗にした後に、愛菜と俺の汚れを落とし綺麗にするとマリアが聞いて来た。
「どうして、愛菜さんだけが?他の3人は平気だったのに」
「それがね・・魔力融合がスムーズにいかなくてさ、少し流す魔力量を増やしながら続けていたら、2つのスキルを習得した直後に暴走しちゃって敏感な時に身体に触れちゃったから一気に反応しちゃったみたいなんだ」
「・・そうなんだ。感じてみたいけど、壊れない自信を持てないわ」
「あぁ、すごく気持ち良さそうな表情だったけど、絶対にやらない方が良いと思う」
マリアは生唾を呑み込んでいたが、俺から視線を外し愛菜の介護に専念し始めた。
(さてと・・愛菜の声を聞いたアイナとアルシアはどうするのかな)
そう思いながらテントから出た俺は、こちらを向くアイナとアルシアと視線が重なり、互いに時間が止まったような感覚になっていた。




