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8章 王国潜伏編 33話 冒険者ギルド②

アクセスありがとうございます。



 家を出て丘を降りた馬車は村の表通りを走り抜けている中で、村のいつもと違い人の気配が気配探知スキルを発動しなくても感じ取れ呟く。


「村に誰1人いないな・・」


「ハル・・」


「マリア、どうした?」


「王都も戦場になるのかな?」


「そうはさせないさ・・王国騎士団が戦線を維持すれば、なんとかなるさ」


「ハルにできるの?」


 不安げな表情でマリアは聞いてくる。


「ん〜正直、どんな相手かわからないから自信は無いかな?でも、この国には召喚勇者という強大な切り札があるだろ?何も心配は無いさ」


「・・あの勇者が、王国の切り札なの?」


「もちろん。だって召喚勇者様だぜ?聖剣を持ったアイツは強い・・王国からしたら、誰よよりも頼りになるぜ」


「そう・・なんだ。勇者を強いって認めてるんだね。嫌いだったんじゃ?」


 俺は苦笑いしながら告げる。


「大っっ嫌いだ!まぁ、元の世界じゃ後輩でいい奴だったんだけどな・・強大な力を持つと人間は変わるのかもな」


 マリアに言いながら、無意識に左手で右肩を押さえる。


「痛む?」


「ん?・・あぁ、平気さ。アイツのことを話していると不意に受けた傷が気になってね」


 そう言って俺はマリアとの会話を終わらせ、流れる景色へと視線を移し黙ると右側に美音が座ってくる。


「にぃに・・痛む?」


「大丈夫だよ、美音。心配してくれてありがとな」


 そう言いながら美音の頭を撫でているとコテッと頭を俺の右肩に乗せてきて、それから馬車を数時間休まず走らせたことで予定より早く王都南門前へと近づく。


「それじゃ、ラニア頼むな」


「はい、お任せを」


 ラニア以外の俺達は、存在がバレると色々と面倒になるため俺とマリアの隠密スキルを発動し姿を消して門兵の点検を受けるのを待つ。



「次の馬車!前へ!」


「はい・・私の身分証です」


「渡せ・・って、元商人ギルド長の・・」


「あら?私のことを知っていてくれたのですね?ありがとうございます」


「今日は、どのような用件で?」


「南の方が騒がしいと元同僚から聞いたもので、王都へと避難して来たのですよ」


「そうですか、どうぞ通って下さい」


「ありがとうございます」


 元商人ギルド長ラニアだけあって門兵の点検がすぐに終わり、馬車は南門を通過し馬車預かり所へと向かう途中にラニアに馬車を降りることを伝え裏路地へと移動し隠密スキルを解除した後にラニアと合流する。


「これからなんだけど、隠密スキルを使える俺とマリアで別れるから」


 この先の行動は、俺とミオ・ミリナ・アイナ・シェル・真衣そしてカラの7人で行動し冒険者ギルドへ向かい情報収集をする。


 別のマリアの方については、ラニア・アルシア・琴音・美音そして愛菜の5人で買い出し組として行動してもらう。


 琴音と美音から嫌だと文句があったが、旅に必要な買い物を理解してもらうため俺と組を分けたと説明し渋々了承してくれたのだった。


「今回は、この振り分けで行動してくれ。次の集合は、マリアに念話で伝えるから」


「わかったわ。何かあったら、すぐ連絡してね」


「もちろん。それじゃ、また後で」


 マリア達を先に行かせた後に、俺はミオ達を連れて冒険者ギルドへと向かう途中にフードを深く被った真衣が話しかけてきた。


「ハル、どうして私がこっちなの?琴音や美音の方がよかったんじゃない?」


「真衣、俺は真衣が傍に居て欲しいから選んだんだ・・」


「そ、そうなんだ・・別にいいけど・・」


「真衣さん、嬉しそうですね?顔が真っ赤ですよ?」


 ミオが冷やかすように真衣の顔を覗き込み言っている。


「ミ、ミオちゃん!そんなことないよ・・ハル・・気のせいだからね?・・ね?」


 真衣が必死に否定する表情がフードでハッキリ見えないが、口元を見るとどんな状態か簡単に想像ができる。


「真衣・・わかったよ。後で詳しく聞かせてもらうから」


「ぬぁっ!」


 テンパる真衣の足が絡まり転けそうになったところをミリナがカバーし、不服そうな真衣の口元を見ながら冒険者ギルド前に辿り着き、フードで顔を見えにくくしたことを確認し隠密スキルを解除してギルド内へと入って行く。


「なんか物凄く殺気だってない?初めて王都の冒険者ギルドに来たけど・・ギルドっていつもこうなの?」


「普段は、まったりとした感じだよ。時間帯で換金者が多くて騒がしいくらいだけど・・今日は、南の件で何かあったかもな」


 小さな声で真衣の質問に答えながら窓口へと向かっていると、ちょうど無人だった窓口に受付嬢が座った。


「よし、あの窓口に行くよ」


 そのままタイミングよく受付を開始したばかりの窓口の前に立つことができた。


「こんにちは、ご用件はなんでしょうか?」


「こんにちは、久しぶりかな・・アメリア?」


「・・えっ?その声・・ハル?」


 深く被っているフードを少し上げて、窓口にいるアメリアだけに素顔を見えるようにした。


「ハル・・私のこと覚えていてくれたの?」


「あぁ、前に違う街で会った時は記憶を失っていてね・・ゴメンね」


「ううん・・気にしないで、思い出してくれただけで嬉しい・・」


「アメリア、こんな形での再会で悪いな・・それにしても、今日のギルドはどうした?」


 あえて事情を知らないフリをして、アメリアに聞いてみた。


「実はね・・騎士師団からの緊急要請で、イシタ公国への騎士団護衛依頼が来てるんだけど、提示された報酬が市場価格より少なくて危険な内容だから冒険者達が苛立っているの」


 そう教えてくれるアメリアに、どこか元気が無いように感じる。


「ちなみに具体的な内容はと報酬は?」


「報酬は1人銀貨30枚で、移動間は騎士団宿営地の夜警とイシタ公国到着後は、補給部隊の支援として活動する内容よ」


「それは、かなり割に合わないんだけど・・それで、受理状況は?」


「今のところゼロです・・」


「だよね・・」


 受理件数がゼロと聞いた俺は、後ろに立つアイナを見る。


「アイナ、この状況が続くと騎士団はどう動くんだ?」


「このままだと、騎士団長が国王に具申して強制的に冒険者を召集するとギルドに通達が届く手順だったと思うわ。そうなれば・・」


「そうなれば?」


「ギルドの介入ができなくなり、騎士団の隷下部隊として召集され強制的に連れて行かれるはずよ」


「そんな独裁的な・・」


 驚いている俺に、アメリアが補足してきた。


「ハル、王国が緊急と認めた場合はギルドと王国でそういう協定になっているの」


「でもさ、俺ら冒険者にそんな説明なかったぞ?」


「「 ・・・・・・ 」」


 マリアとアメリアは黙り込んでしまう。


「はぁ・・そんなんどうにもならないか。それで、イシタ公国でいったい何が起きたんだ?」


「それなんだけど、私達ギルド職員にも情報規制されていて細部はわからないの」


「そうか、上層部だけで情報を囲っているんだな・・」


「どうします?ご主人さま・・」


 隣に立つミオが俺を見ながら聞いてくる。


「そうだな・・とりあえず飯にするか?」



「「 ハル・・ 」」


 マリアと真衣にとても残念そうな顔をされて冗談だと弁明するが、溜息をつかれてしまった・・けど、ミオとミリナの2人の目は期待に輝いていたが、俺が諦めたため頭を垂れている。


「アメリア、とりあえず依頼内容を見せてくれる?」


「いいけど、参加しない方が良いと思うの・・職員としてはダメな発言だけど」


 アメリアから依頼書を受け取り目を通すと、無意識に心の声が漏れていた。


「な、なんだコレ?騎士団はバカの集まりなのか?本気でこの内容を?」


「ハル?どういうことだ?」


 俺は持っていた依頼書をマリアに手渡す。


「団長は一体何を考えているんだ・・これではまるで・・」


「だよな?移動中の騎士団警護と移動先までの費用は自己負担って・・横暴な話しだよ」


 そうこう話をしているうちに背後が騒がしくなり、そして1人の声でギルドないが静寂に包まれた。


「注目せよ集まった冒険者達よ!そして静粛に!!」


 突如2階の廊下から現れた女性職員の発する声で皆が動きを統制される・・俺以外が。


「アメリア、あの人は?」


「・・あ、はい。ギルド長のエリーナ=ソーラスさんだよ」


「・・・・あ〜思い出した。たしかデサリウスから来た人だ・・」


「せいかい〜!」


「なんか、商人ギルドにいそうな容姿だよな・・」


 受付の小さなカウンターで右肘をつきながらアメリアと会話をしていると不意に、視線を感じそちらを横目で見るとギルド長のエリーナと視線が重なり彼女の口元が笑っているように見えた。



「冒険者諸君!騎士団からの傲慢な依頼に苛立ちを感じていることは十分承知している。このまま受理数が満たないと不利益なままで強制召集が執行される」


 集まっていた冒険者たちがエリーナに文句を飛ばし、それを両手を前に出し落ち着くようジェスチャーをする彼女がいる。


「静かに!・・そこで、我々冒険者ギルドは妥協案を準備した。それは、ギルド長勅命により派遣することだ!この案による報酬は1人につき金貨3枚を基準報酬とし帰還した者は、残念ながら戦死した者の報酬を分配することを約束する」



 うおぉぉぉぉぉぉ!!!!



 耳を塞ぎたくなるくらいの雄叫びがギルド内を響き渡り、冒険者達の士気が一気に高揚してお祭り状態と化し統制が取れなくなると思っていたが、エリーナは手慣れた感じで冒険者達を落ち着かせ話を続ける。


「今の皆の反応を同意したと判断する。よって今からパーティー編成を行う。異議があるパーティーは、今すぐギルドから出て行くように。その行為をギルド脱退表明とする」



 エリーナの言葉で、冒険者達の選択肢が無くなった。ハイリスクハイリターンの依頼で断れば、即ギルド脱退。そんな一方的な条件に冒険者達のなかで異議を唱えるパーティーはおらず、重く静かな空気がギルド内を支配していた。



「まずは、そこの柱から左のそこの柱の間にいるパーティーは本隊とする。リーダーは後で私が任命する。続いて右のカウンターからそこの柱までにいるパーティーは後発隊だ。そして・・・・」


(あれ?俺達が含まれてないよな?)


 そう思っていた矢先にエリーナが俺を見て口を開く。


「そこのフードを被ったお前達!いったい何者だ?」


「・・ただの冒険者だが」


 ギルド内にいる全ての冒険者の視線が俺達に集中する。


「ならば、お前達は先遣隊だな!!」


 エリーナの言葉に周囲の冒険者の視線が興味から哀れみの視線へと変化していく。


「・・あんたに従う義務は、俺達には無いな・・他を当たってくれ」


「ん?それは、どういう意味だ?」


 俺は胸元から帝国の冒険者ギルドで作ったギルドカードを見せる。が、顔はフードで大半を隠したままで。


「帝国冒険者だから、王国のギルドに従う義務は無い」


「むっ・・たしかにそうだな」


「だから、貴方の言う先遣隊は無理な話なんだ」


 

 少しの間に互いに言葉を発さず見つめ合う俺は、エリーナを警戒していると彼女の表情が柔らぎ視線を俺から外し廊下を歩き階段を降りている。



「ハルッ!気を付けて!」


 背後から聞こえるマリアの警告に一瞬マリアへと僅かに振り向いた瞬間に目の前にエリーナが迫って来たが害意がないため、そのまま反応が遅れ油断したフリをする。


「油断しちゃダメよ・・帝国冒険者さん」


「いつのまに・・」


 エリーナは勝ち誇ったような表情になり、人差し指を俺の右肩に沿わせながら告げた。


「いいかしら?ここでは、私がルールなの。だから、先遣隊の依頼・・受けるわよね?」


「それでも断ったら?」


 エリーナは、スッと離れ踵を返し歩き出した瞬間に彼女から僅かな殺気を感じた俺は身体を僅かに右へ逸らせた。



 カッ!カカン!!


 エリーナの右手首の角度から、投げナイフを投げる軌跡を予測し反応したら的中した。マリアよりは速度も精密さも劣るが、エリーナ本人は気に入らないようだ。


「はぁ?なんで完璧に避けられるのよ・・確実に急所を狙ったのに・・」


「・・あのなぁ、いきなり物騒なモノを投げるなよ!危うくアンタが死ぬところだったぞ?」


「何言ってんの?このSランクの私が簡単に死ぬわけなふぅ・・・・」


 エリーナの投げナイフを全て避けた俺の動きを見ている彼女らが、エリーナが反応できない速度で行動し反撃の一歩手前の姿勢で止まっている。



「ご主人さまに危害を加える者に、私からの慈悲はありません」


 双剣を抜きエリーナの首元に当てているミオの上着の背中あたりが膨らんでいる。きっと尻尾が怒りマックスに膨らんでいるのだろう。


 それと同時にミリナが俺を守るように前に立ち、その後ろではアイナがカラを守る位置で警戒しマリアは逃走するのを警戒しスローイングナイフを背中で見えないよう隠し持っている。


(マリアさん・・もう貴方は一流のアサシンですよ・・)



「きゃ・・きゃるい冗談よ・・冗談だから・・」



「ミオッ」


 俺に呼ばれたミオは、エリーナから離れ双剣をしまいながら横に立つ。


「ご主人さま・・」


 ミオが俺の全身のボディタッチをして怪我をしていないか確認している。



 サワサワ・・クンクンクン・・サワサワ・・


「ミオ・・さん?匂いを嗅ぐ必要は無いと思いますけど・・」


「いいえ、ご主人さま。僅かな変化も見分けるのが奴隷の務め・・ん?初めて嗅ぐ僅かな残り香は・・」


 動きを止め、顔を上げミオがジッと見ている。


「・・まぁ、いずれな」


「のちほど・・後ほど詳しくお聞きしますね」


「・・はい」



 ミオは、そう言い残し俺から離れて窓口の壁に突き刺さっている投げナイフを抜きエリーナの方を向く。


「と・・とりあえず、王国ギルドの依頼を受けてくれないかしら?報酬は期待していいわよ?」


「金には不自由していないからな・・・・」


「と・・とりあえず、ギルドマスタールームで話しでもしないかな?」


 

 急に弱腰になるエリーナに違和感を感じた俺は、彼女と微妙な距離感を保ちながらギルドを出ようとしたらギルドのドアが乱暴に開けられ集団が入って来た。



「静まれ!王国騎士団だ!不審な動きをする奴は即刻斬る!!」



 物凄く悪いタイミングでギルドに入って来た王国騎士団を見ながら、歩くのを止めてため息をつき動向を見守ることにしたのだった・・・・。





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