8章 王国潜伏編 34話 冒険者ギルド③
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ギルドに入って来た騎士達の前にギルド長のエリーナが不満げに立ち告げる。
「騎士団が、この時間に何用なの?」
「ギルド長・・それ以上の接近は禁ずる」
「はぁ?いきなり何を言っているの?」
エリーナは騎士からの突然の警告に苛立っているが、騎士は構うことなく右側に避けると追従して来た騎士が左右に分かれ隊列を組み中央に動線が確保された。
「と、突然なんなのよ?」
少し取り乱しているエリーナは、偶然にも開かれた動線の中央に立っている。すると、ギルド出入り口ドアがゆっくりと開かれ1人の金髪少女が優雅に入って来た。
「事前に通告もなく来て、ごめんなさい・・」
この品のある声は・・つい最近聞いたことのある少女の声だった・・。
「なっ!・・・・ミリア第1王女様!・・なぜギルドに?」
エリーナは、片膝をつき顔を伏せたまま疑問を口にしている。
「ギルド長・・もちろん大切な王国冒険者達の激励に来ましたの」
「・・あ、ありがとうございます。冒険者達の士気高揚になります」
ミリアはエリーナの言葉を最後まで聞かずに、階段を上りギルド内が見渡せる位置で立ち止まり笑顔で小さく胸元で手を振っている。
「おぉ・・なんと美しいお方だ・・」
ミリアを見つめる冒険者の誰かが呟いている声が聞こえた。
そして、廊下の手摺りに両手をゆっくりと置き、一呼吸してから優しい口調でミリアが口を開く。
「冒険者の皆様・・スパイル王国第1王女のミリアです。この度は、王国のためギルドに集結していただき感謝の気持ちでいっぱいです。この厳しい環境下での依頼ですが、どうか王国のためよろしくお願いします。僅かながらではありますが、無事帰還さtれた方は私個人からの報酬として金貨50枚を贈呈いたします」
ぬぅおぉぉぉぉ!!! きたぁぁぁぁ!!!!
破格の報酬をミリア個人から貰えると聞き、冒険者たちが歓喜の雄叫びをあげる。俺は、早くここから帰りたい気持ちだったため周囲の冒険者と同じ反応はできず、ただミリアを見ながらゆっくりとギルドの出口へと移動したことが裏目に出た。
「・・ちょっと、そこの冒険者パーティーさん!どちらに?」
(ヤベ・・)
「あっミリア王女様。あのパーティーは帝国冒険者なので王国とは無関係です」
(ナイス、ギルド長!)
結果的に助け舟を出してくれたエリーナに感謝しつつも、このまま無言で王族の前からギルドを立ち去るのは非礼だと思っていたら、後ろをついて来ていた真衣が口を開いた。
「失礼します。ミリア第1王女様」
そう口にした真衣の声にミリアの表情が少し変化した。
「ちょっと待ちなさい。そこの貴方・・フードを取りなさい」
万事休す・・ミリアと真衣は、王城内で何度も顔を合わせているため面識もあるはずだ。どう逃げるか考えているとフードを取るように言われた真衣が口を開く。
「申し訳ありません王女様。顔に火傷の跡が残っているため、夫以外の方々の前でフードが取れないことをお許しください」
「・・そう、わかったわ」
「ありがとうございます。アナタ、行きましょう」
「・・お、おう、そうだな」
真衣にアナタ呼ばわりされ動揺した俺は、少し声が裏返ってしまいぎこちない歩き方になってしまった。
「そこの男はダメよ!こちらに来なさい!奥さんは、申し訳ないけど夫を残してギルドを出なさい」
「・・そんな」
「すまない・・先に外で待っていてくれるか?」
「アナタ・・気を付けてね・・」
「あぁ、すぐ戻るから」
俺をギルドに残し真衣達が外へと出て行くと、ミリアに呼び止められた俺に再び周囲の冒険者たちから注目を集める。
「そのまま2階のギルドマスター部屋に来なさい」
ミリアに手招きされた俺は、溜息をついて歩き出し素直に階段を上がり部屋に入って行く。
「あなた達は、外で見張りを」
「はっ!」
キィ・・ガチャッ
(え?・・なんで鍵をしたんだ?)
俺はミリアに誘導され先に部屋に入ると、騎士に外で見張りをするよう指示したミリアの声の後にドアの鍵がされた音に気付き振り向くと、ミリアがしゃがみこんで見上げるような姿勢で覗き込んでいた。
「ふふっ・・やっぱりハルだ」
そう呟き、王女様モードの表情から年相応の少女の表情に変わるミリアは、スッと立ち上がり被っていたフードをソッと外し抱き付いてきた。
「ミリア・・いつからわかってた?」
「ヒミツ・・ギルドに入って姿を見た時かな?確信したのは声を聞いてからだけどね・・」
「そっか・・でも、いいのか?王女様が怪しい帝国冒険者と密室で2人きりだなんて環境をつくって・・」
「短時間なら大丈夫、問題無いわ。あの騎士は、私が鑑定スキル持ちなのを知っているし、ハルのことも知っているから」
「そっか・・それで、なんで俺を1人に?」
「・・・・もちろん、独り占めしたいから。ハルに連れ出されたマリアばかりズルイもん」
ミリアは、俺の腰に両腕を回し身体を密着させ甘えてくるが、彼女との接点は王都までの護衛しか覚えていない。だけど、なぜか右手が無意識に動きミリアの頭を撫でてしまう。
「ん〜もっと撫でて」
甘い声を出すミリアは、顔を俺の胸に埋めてグリグリとしている仕草に驚きながらも平然と対応する。
「ミリア、イシタ公国を攻撃したのは何者なんだ?」
「・・・・魔族領の奴らよ」
「魔族領から・・次は、魔族相手か」
「行くの?」
ミリアは顔を上げて俺を見ている。金眼の瞳に見つめられ一瞬言葉を発するのを忘れていた俺は視線を逸らすことなく告げる。
「第1王女様の命令ならば・・ね?」
「ハル・・行っちゃダメよ。危険すぎるわ・・」
少しミリアの瞳が滲んでいるように見える。
「さっき冒険者達に言っていた事と違うんじゃないかな?」
「アレは、王女として・・立場上必要な振る舞いなの。本音は先遣隊でなんて行かせたくない」
「ミリア・・」
ギュッと服を掴むミリアを、なぜか抱き締めてしまった。
「この温もり・・マリアはいつも感じているのね・・」
何か小さく呟いていたミリアだったが聞き取れずにいると、ドアがノックされドア越しに騎士の声がする。
「ミリア王女様。勇者様の王城出発式の時間が近づいています。なので、そろそろ王城へ戻る時間です」
「わかりました!速やかに帰る準備を!」
「はっ!!」
騎士が廊下を歩く足音が遠のいて行く。
「ミリア、ここでお別れだね」
「・・ハル、そんな言い方しないでよ。またね」
「あぁ、またな・・んっ」
ミリアが俺から離れる瞬間に背伸びをして、口付けをしてきた。ミリアに後頭部を押さえつけられているため離れることができず、長い間ずっと唇を重ねた。
長く唇を重ねていたせいなのか、互いに口が開き舌を絡ませ互いを求め合うような形へとなり離れた。
「ハル・・ダメって行っても行くんでしょ?」
「あぁ」
「わかったわ・・だから、もう1回シテ・・」
短く口付けをして部屋を出るミリアの背中を見送り、フードを被り直し部屋を出るとエリーナが俺に声をかけてきた。
「ねぇ、君は王女様とどんな関係なの?」
「ん〜なんなんでしょうね?過去に護衛依頼をしたぐらいなんですけどね・・」
そう言いながら俺はギルドから出ようとしたら、背後からエリーナの声がした。
「イシタ公国への出発は4日後の昼に王都南門だから。それまでに準備を整えて休養しなさい」
俺は振り向くことなく、右手を上げ反応しギルドを出て真衣達の元へと向かったのだった・・。




