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8章 王国潜伏編 27話 再会・・②

アクセスありがとうございます。


 予想外の勇者沖田の登場に内心驚いている俺だが、アイナに弱気なところを見せられない。あの聖剣から放たれる光魔法を侮ると、死に直結することがあの時の城内での戦いで思い知らされている。


 俺は小声でアイナに伝え、彼女の返事を聞く前に行動を開始する。


「このままだと、アイナを巻き込む可能性があるから一度離れる」


 ダダッ!


 地を2歩蹴り加速した俺は、アイナから離れ庭先に移動したと同時に沖田が切り掛かってくる。


「お前だけは!」


 怒りの感情を乗せた声を発しながら迫る沖田が握る聖剣が白く輝きを強めていく。


(クソッ!またあのヤバい奴を放つのか!)


「くらえっ!椎名ぁ〜!!」


「ぬぁっ!無詠唱・・かよ」


 怒りに任せたような斬撃をする沖田に油断していた俺は、聖剣の切っ先から真っ白な光線が放たられ俺に襲いかかってきたのを一瞬の時間反応が遅れてしまう。


 音もなく迫る光魔法レイビームは、僅かに逸れて屋敷の屋根の一部を貫き消えていく。


「沖田・・お前、その魔法を無詠唱かよ・・」


「当然だ!魔王を倒すべき召喚された勇者を舐めるな!」


 今のアイナとは、念話を繋げていないため意思疎通が言葉じゃないとできない。焦る俺は、湖畔で遊んでいるだろうマリア達を呼びかけることにした。


『マリア!リル達を連れて屋敷に来てくれ!』


『・・・・・・』


 いつもならすぐに返事が来るマリアからの反応がない。


『マリア!・・俺だ!聞こえたら返事してくれ・・とぉーーーがぁっ!』


 念話の返事がないマリアに意識が向いてしまい、沖田から一瞬視線を外してしまった隙に、2発目のレイビームを避けるのが遅れてしまい左肩を深く抉られてしまう。


 衝撃で左肩を中心に後方へ倒れながら、血飛沫を撒き散らせ背中を地面に強打しつつも受け身を取り勢いを殺さずそのまま立ち上がり治癒魔法ヒールで止血する。


「椎名、お前は治癒魔法使えるんだったよな?」


「・・それがどうした?・・バカ!よせ!」


 沖田が俺に向けていた聖剣を動かし、屋敷の玄関前で立ち尽くすアイナに向けてニヤつく。


「お前とアイナの命・・どっちを選ぶ?」


「・・そんなの決まってる」


「だよな?自分が一番だもんな・・お前も自分が可愛いもんな!」


 沖田の質問に答えた瞬間に全速力でアイナの元へ駆け出す。俺の僅かに残った残像に答える沖田を横目に俺は、視界の隅に捉えていた聖剣の切っ先から放たれようとするレイビームより早くアイナの前へと向かう。


 ズドォォォォーーーーン!!!!


 耳の鼓膜が破れそうな程の爆発音と衝撃波に襲われ、意識が吹っ飛びそうになる。


「はぁ・・はぁ・・はぁ・・なんとか軌道だけは変えてやった・・ぶはぁっ」


 ガキィン


 愛剣の片手剣で3発目のレイビームをギリギリのところで弾き飛ばすことができたが、アイナの屋敷に直撃し全体の半分以上が吹っ飛び瓦礫と化してしまう。


 もちろん、俺も無傷とは言えず、全身の右半分に感覚がなく、さらに絶対にあるはずの痛覚が無いため怖くて自分の身体を直視する勇気がない。


 後ろでアイナが悲鳴のような声を上げているが、それもよくわからない。それが近くなのか遠くなのかでさえわからない。


 ただ目の前に立つ沖田をジッと睨み、ボロボロになった愛剣を左手で地面に刺し、辛うじて立っているだけがやっとの俺は、急に脱力し地面に倒れ込む沖田の姿を見ながら、魔力欠乏症だと確信する。


「勇者様!」


 倒れ込んだ沖田を囲うように騎士達が集まり出し、ハイド自らが沖田を背負うと馬車の方へと戻って行く。それを見つめる俺の視界にチカチカと何かが反射するようなもの見えてきた。


「な・・なんだコレ?」


「ハル・・ハル・・ハル!」


 誰かに呼ばれているような気がして左を向くと、誰もいない。


「なんだ・・空耳か・・」


「ハル!こっちだ!ハル!」


 また呼ばれたような気がした俺は、再び左に振り向くが誰もいない。


「なんだよ・・誰もいないじゃねーか」


 そのまま騎士団の馬車が慌ただしく屋敷の前から離脱し離れて行くのを歪む視界で見送り、俺は前へ歩き出そうとした瞬間に青空を見ていた。


「あれ・・なんで前を見ているのに青空が・・・・」


 すると、青空を覆うように金髪と色白な顔から水滴が落ちてくる。


「雨?・・・・晴れてるのに雨だなんて、天気雨か?」


「ハル・・聞こえるか?ハル・・私の名を・・名前を呼んでくれ!」


 青空を覆う金髪で色白の影から声が聞こえる。


「だれ?・・でも、聞き覚えのある声だ・・とても懐かしくて癒される綺麗な声だ」


 自由に動く左手で、目の前のぼんやり見える影の輪郭をそっと撫でると、2つの何かに包まれる感覚があった。


「これは・・手・・手に包まれてるのかな・・」


「ハル・・こんなの無しだ・・やっと逢えたのに・・他のみんなは何をしているんだ。皆はどこにいる?」


 ずっと話しかけてくる存在が誰なのかハッキリ認識できない。すると、また新たな音がする。


「ハルさん!しっかりしてください!やっとアイナ様と再会できたのですから!」


 また何かの存在が俺の近くに来てくれた。


「あ・・あなたは!」


「アイナ様!お久しぶりです。元王国騎士団副団長のリン=マードラです」


「リン、どうしてここに?しかも、元って・・」


「はい。私も、最近になってハルさんの・・その、今は説明している場合ではありません!」


 ピシャ!


 俺の身体に大量の液体をかけられた直後に右半身から強烈な痛みが襲ってくる。


「ぐぁぁぅぅ・・いってぇ〜〜!!」


 無意識に言葉にならない呻き声が口から吐き出されながらも踠いていると、2つの存在が力強く抱き留めてくれる。


「「 いぃ〜〜!! 」」


 俺じゃない声が苦痛の声を出し始め、俺は瞑っていた目を開けると目の前に2人の女性が食いしばった表情をしていた。


 その光景に驚き力一杯力んでいた両腕を離すと、2人は仰向けのまま呼吸を荒げていた。未だに激痛に襲われている俺は、歯を食いしばり両腕を組んで痛みに耐えていると、仰向けになっていた2人が立ち上がり組んでいた俺の腕を必死に剥がし、自身の身体を密着させて剥がした俺の両腕を身体にくっつけている。


「ハル!痛みに耐えるから、遠慮なく力を入れてくれ」


「ハルさん、私達は平気ですから・・安心してください」


 その2人の言葉を聞いていると激痛の波に再び襲われ、思わず両腕に力一杯入れてしまう。


「「 ぐっ 」」


 2人は痛みに耐え、声も出さなくなった頃に激痛も少し和らぎ霞んでいた視界も少しづつクリアになってくる。


 ゴキッ!!ゴキッ!!


 無意識に全力で腕を締め付けたため、2回連続鈍い音が鳴り2つの響き悲鳴が響き渡った。



「「 あ゛ぁ〜〜!! 」」


 

 俺は、クリアになってきた視界で、目の前の2つの存在に少しづつピントが合ってくると、号泣しているアイナとリンの姿が合った。


「アイナ!リン!」


 俺は、2人を拘束していた両腕を解放すると、アイナは右肩を押さえリンは右腕を押さえながら蹲っている。すぐに俺は起き上がろうとしたが、右半身が素直に思うようにすぐ動かすことができずにいると、遠くから声がする。


「おにぃ!」


「にぃに!」


 街で買い出しをしていたラニア達が、ここに到着したのだと理解する。


「琴音・・美音・・」


「いったい何があったのじゃ!」


 警戒感を露わにするシェルの怒鳴り声が辺りに響き渡る。


「悪りぃ、勇者にやられた・・今は騎士団とどっかに行ったはずだ」


「ハル、その怪我は・・」


「俺より、アイナとリンの手当てを頼む」


「にぃに・・」


 俺の横に座る美音が俺に治癒魔法を行使しようとしたため、アイナとリンを先に治癒するように伝えた。


「でも・・うん。わかったよ、にぃに」


 俺から離れ、アイナとリンに治癒魔法を使い骨折した部位を治療し始めている。


「ハル・・お主」


「・・ナトリアか、どうした?」


「あやつらはどうした?お主を守っているのではなかったのか?」


「あぁ、リル達か・・念話が繋がらなかったんだ・・だから呼ぶことができなかった」


「あの役立たずめ・・覚悟しろ」


 普段のいじられキャラのナトリアから纏うオーラが瞬時に重く冷たいモノになり、感情を失った瞳は何かを探し激しく動いていたが、急に止まり一点を見つめる。


「貴様ら!それでも神獣か!!守るべき者を守らず何をしておる!このまま永遠に別離させるぞ!」


 ナトリアの言葉がこの地域全体に広がっていく。対象者のみに届くように。


 すると、物凄い速さで2つの気配が飛び込んで来た。


 ズザザァァ!!


 「「 ハル!! あ゛ぁ!! 」」


 屋敷の敷地に2つの着地音と、俺の名前を呼び駆けつけるリルとクウコだが、数メートル手前で動きが拘束され1歩も動けず必死に抵抗している2人に、ゆっくりナトリアが近づく。


「リル・・クウコよ。貴様らは同じ過ちを何度繰り返せばいいのだ?またハルを失うのか?」


「「 ・・・・・・ 」」


「お前達を、今をもってハルから永遠に引き離す。これからは別の者にハルを守らせる」


「「 ヤダ・・それだけは・・絶対に・・認めない 」」


 リルとクウコは食いしばりながら、ナトリアを睨んでいる。だが、今のナトリアの前では歯が立たず必死の抵抗も意味がない。


「無駄じゃ・・女神ナトリアの意志として取り計らう」


 ナトリアが右手をリルとクウコに突き出し何かを唱え始めると、リルとクウコが苦しみ出し涙をたくさん溢れ出す。


「ヤダよ・・離れたくない・・1人は嫌・・ハル・・ゴメンなさい」


「ハル・・そばに居させ・・て・・ハル・・」


 リルとクウコが苦悶の表情でナトリアから俺に顔を向け両手を必死に伸ばしている。


「リル・・クウコ・・」


 俺は弱りきった身体で絞り出せた小さな声は、リルとクウコに十分届いたようで、ピコッと2人のケモミミが反応し笑顔になる。


 バタッ・・バタッ・・


 力なく倒れたリルとクウコの姿を見たところで、俺の視界は暗くなり意識を手放してしまったのだった・・・・。





 














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