8章 王国潜伏編 25話 旅のはじまり④
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地方都市メチケルンの宿屋の部屋で王国騎士団の動向を気配探知スキルで追跡する。夜明け前に動きがあり、夜明けとともに移動を開始した。
1晩寝たフリをしていると、横になるベッドに獣人シスターズとカラが俺に折り重なるように寝て、隣のベッドには、マリアと真衣達が寝ている。
姿が見えないリンとアルシアやシェルとナトリアは、隣の部屋で寝ているのが気配探知で確認できた。
「そろそろ動かないと、あいつらに出遅れてしまうな」
俺が動き出すと、寝ていた獣人シスターズ以外の子達が動き始める。相変わらずマイペースなリル達の寝顔を見ながら、部屋を出て隣の部屋のドアをノックする。
「俺だ、ドアを開けてくれる?」
ドアが開きシェルが出迎えてくれて、軽くハグをしてくる。
「どうした、シェル」
「知らぬ土地で、1晩別の部屋で寝るだけで心が寂しくなったんじゃ」
「そうか、悪かったな・・」
シェルの腰に腕を回しギュッと抱きしめてやると、満足したようでキスをして笑顔で離れるシェルからアルシアに視線を動かすとベッドに腰掛けジッと見ている。
「アルシア・・」
両手を広げアルシアの名を呼ぶと、プイッと顔を逸らされたがすぐに立ち上がり俺に抱き付いて呟く。
「最初が良かったぞ・・ハル」
「シェルがドアを開けたからな・・」
「むぅ・・たしかに・・」
アルシアの頭を軽く撫でてやると、ムスッとしていた顔が笑顔になり目を瞑り動かなくなった。そのまま、俺は顔を近づけてアルシアと口付けを交わす。
「ふふっ・・わかっておるの・・ハル」
そう言いながら離れるアルシアを見ていると、視界の隅でリンが赤い顔でアワアワしてどうしていいか、わからねいでいる。
「・・リン」
「ひゃい!」
「2人と同じようなことをしないでいいよ。2人と長い付き合いだから」
「ぅ〜〜」
顔を下に向けて小さく唸っているリンをそのまま放置して、部屋の隅にある椅子に座るラニアに今日の行動を伝える。
「ラニア、今日は昼までにこの街の商店で必要な物を買い揃えてくれ。護衛は後から伝える。それ以外のメンバーで朝からアイナの別邸に向かう。ラニア達は、昼から馬車で別邸へ迎えに来て欲しい」
「ハルさん、わかりました。必要な物を揃えてから迎えに行きますね」
「頼むなラニア。支度ができたら隣の部屋にみんな来てくれ」
それから部屋に戻ってしばらくしてから、リン達が俺のいる部屋に入ってくる。
「それじゃ、みんな集まってくれたから今日の行動を言うね」
ラニアとを筆頭に真衣・愛菜・琴音・美音・シェルとアルシアそしてカラを街での購入組にして、俺を筆頭にマリアとリンそして獣人シスターズでアイナの別邸へ向かう組にした。
その組み分けに異論は無く、素直に従ってくれることにホッとした俺は、リンの道案内を頼み宿屋から出発する。
部屋を出て宿屋の入り口まで真衣と愛菜が見送りに来てくれた。
「ハル・・」
「センパイ・・」
「大丈夫だよ、ちゃんと帰ってくるから。だから、琴音と美音を頼むな」
「うん、任せて」
「はい、センパイ」
少し涙目の2人をソッと優しく抱きしめてキスをする。ギュッと抱き付いた2人の指先が僅かに力が入ったことを感じ不安があるのだろうと思う。きっと、あの時のカラの言葉を思い出したのだろう。
「行ってくる」
その一言を残し、真衣と愛菜を置いて歩き1度も振り向かず通りを歩き街から出る。
「リン、ここからは君が頼りだ。最短のルートで案内してくれ」
「は、はい!お任せを!」
少しだけ緊張気味のリンを先頭に俺達は街道を歩き街から離れたところで、隠密スキル発動させ街道を一気に走り出す。
まだ身体能力的にリンだけが劣っているため、彼女を背中に背負い走るが、俺の横をピッタリ並走するリルとクウコの冷たい視線がリンをずっと捉えたままだ。
「あの・・このままでは、私の精神が死んでしまいそうです」
「リル、クウコ・・そんな瞳でリンを見ちゃダメだよ。あとで2人も抱っこしてあげるから」
「「 ホント?? 」」
「もちろんさ」
「「 わかった 」」
リルとクウコから視線を外されたリンは、深く溜息をつき何度も怖かったと小さく呟いていた。
「ハル・・」
「どうした、マリア?」
「私もシテ欲しいな・・」
「何を?」
「・・バカ!」
マリアの要求がすぐに理解できなかった俺は、背負っているリンから抱っこですよっと告げられ、やってしまったと後悔したが遅かった。
「マリア・・」
彼女の名前を呼んだが、振り向いてくれることはなかった・・・・。
マリアの機嫌を損ねてしまった俺は、そればかり考えていたため騎士団の動向をすっかり失念していたところに、リンから話しかけられる。
「ハルさん、このままだと騎士団の最後尾に追いついてしまいますよ!」
「んなぁ!・・マジか・・って隠密スキル発動しているから、すぐにバレないか」
しばらくはしていると、砂埃を舞い上がらせながら走る馬車の集団が見えてきた。
「アレか・・」
「アレですね」
そのまま騎士団の背後を追従するように走っていると、ゆっくり速度が落ちて今は歩いている。
「リン、これはどういうことなの?」
マリアがリンに聞いているが、リンもよくわからないようだ。
「すいません、マリア様。このような行動は初めてですので」
「少し距離を取って、先頭に行ってみるか」
俺の案に全員が賛成してくれたため、街道を外れ山林を走り騎士団の先頭を探す。
「あそこが先頭か」
馬車の列を抜いて騎乗した騎士達の先頭いる旗手の前に1人騎士が視界に入る。
「アレは・・」
リンの声に俺は反応する。
「知ってる奴か?」
「はい、騎士団長です!
「騎士団長・・ハイドか」
「ハイド騎士団長に間違いありません」
「わかった」
そのままハイドが率いる騎士団を監視しながら並走していると、ハイドの合図により歩くのを止めた。そのまま見ていると、どうやら飯の準備を始めている。
「騎士団の飯は携行食なんだな・・」
「はい。基本的に遠征などの行動中は携行食のみになります。ハルさん達の毎食手作り料理が常識からかけ離れていますよ」
「そうか、アイテムポーチがあるからかな」
「ハル、どうするの?」
背後にいるマリアから声をかけられ、このままいるのも無駄だと思い先にアイナの別邸へ向かうことに決める。
「騎士団より先にアイナの別邸を目指す。飯はそれからでもいいかな?」
「「 いいよ、ハル 」」
リルとクウコの答えで行動が決まり、俺達は騎士団の前に出て街道を走りアイナの別邸を先に急ぐ。
緩やかな坂道を登り切ったところでm眼下には大きな湖が広がっていた。
「綺麗な景色だな・・・」
湖畔には、数える程の屋敷が点在しその周囲には数個の集落があり静かな場所で、のんびり過ごすにはちょうどいい場所だと感じていると、ニョキッとリンの腕が右側から伸びる。
「ハルさん、アレです!あそこの赤茶色の屋敷がアイナ様の別邸です!」
「あの屋敷が、アイナの?」
「はい、間違いありません」
俺の高鳴る鼓動が、周りのみんなに気付かれるのではと思うぐらいになっている。その反動で不安な思いも込み上げてくるのを抑えようと自然と右手で胸を抑える。
「ご主人さま・・」
ミオが近づき、彼女の手が胸を抑えている右手を優しく包み顔を見上げ俺を見つめる。
「ミオ・・」
ミオのケモミミがピコピコ動き、俺の鼓動を捉えているかのような動きをする。
「さすがミオだな・・」
「・・はい」
ミオの温もりを感じて、落ち着きを取り戻し俺は口を開いた。
「さぁ、みんな行こうか」
俺達は、視界に捉えたアイナの別邸を目指し丘の坂道を下って行く。久しぶりに会う彼女はどんな顔を見せてくれるだろうか、いつの間にかそんな想いで俺はいっぱいだった・・・・。




