8章 王国潜伏編 19話 庭でリンと・・
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「はぁ・・はぁ・・んぁ、もう大丈夫・・です」
リンが力尽きてソファで意識を手放し寝ていく・・寝姿を見ている頃に琴音達の声が聞こえて来た。
「やっぱり、お風呂は気持ちよかったねぇ〜」
「「「 ねぇ〜〜!!! 」」」
新たな普段着に着替え脱衣所から出て来たら、俺の隣で寝ているリンを見ながら近づき俺の前に立ち並ぶ。
「ハル、リンさんに何をしたの?」
「え?」
「だから・・どうしてリンさんは、どうしてこんなに満足した表情で寝ているの?」
目の前に立つ真衣が、ちょっと目を細め見下ろしている。
「いや〜その・・彼女の希望に答えまして・・」
「へぇ〜お風呂入る前と後じゃ、部屋が芳香剤のいい香りになってる・・おにぃ」
「・・・・みんなが風呂に入っている間にちょっとだけ治癒魔法で疲労回復してました」
「もう、ハル?私達の部屋の分・・ちゃんと残ってる?」
真衣が屈みボソっと俺の耳元で、吐息を吹きかけるようにささやく。
「あぅ・・残ってますよ。十分に・・1人3回くらい・・」
「ふふっ・・」
真衣に手を握られベッドへと連れて行かれる。
(真衣ってこんな性格だったか?)
何年も会わないうちに元の世界で他の男との出会いで、変わってしまったのだろうと思いながら布団に入り込み隣にいる真衣に聞いた。
「なぁ、お前なんか変わったな」
「そう見える?」
「あぁ、元の世界に彼氏残して来ちゃったか?」
「バカッ!」
「にぃに・・さすがにそれは真衣さんに失礼だよ・・」
「そうか琴音?あの頃からだいぶ違うしな・・そう感じたんだよ。別れてこの世界に1人来て8年くらい経つせいかな・・」
「8年もか・・」
真衣が呟く。
「あぁ、8年この世界にいるよ・・元の世界じゃ絶対にやらない人殺しをこの手で・・何人殺して来たんだろな。途中から数えるのやめちまったな」
両手を天井に上げて、血塗られたように見える掌を眺め呟く。
「山賊や冒険者そして騎士・・それに仲の良かった幼馴染でさえも、この手で殺しちまったんだ。ただ、感情に身を任せてね・・」
心に溜め込んでいた想いを真衣達の前で吐き出してしまい、4人が黙りこんで重い空気が漂う。しばらくすると、布団の中でモソモソ動き俺の足元から身体に乗り胸元から2つの顔を出し、ケモミミがピコッ動かし口を開く。
「ハルの全てを受け入れられる器が無いなら、側にいる必要無いよ。リル達が、ハルの全てを受け入れれば済むこと」
リルの言葉を聞いて頭を撫でてやる。
「クウコも・・」
甘えるクウコのの頭も撫でてやり、満足そうな表情をする2人の尻尾が布団の中でパタパタ動く。
「私にだって、センパイを受け入れる器を持ってますよ」
愛菜が上半身を起こしリルとクウコに宣言すると、それに対しクウコが愛菜に聞いた。
「それなら、ハルのために人族を躊躇わず殺せる?」
「そ、それは悪人なら倒せる・・」
「相手が顔見知りでも?」
「うぅ・・・・知り合いでも、センパイを傷つける人なら許さない」
「落第点だね・・他の3人はどうなの?」
3人も愛菜と同じ想いだった。この世界にに来て魔物討伐と山賊を捕まえる時に深傷を負わせた程度ぐらいと言う。
その話を聞いていた俺は、リルとクウコの高めの体温を感じていたせいか、いつの間にか寝てしまったらしい。目を覚ました時には、昼飯の時間になりラニアが起こしにきた。
上半身を起こし、側にいるラニアを抱き締めつつ目を覚ます。
「ハル、昼食の支度がまだ残っているから・・」
「ぅん・・もう少しだけこのまま・」
「もう・・」
ほんの少しだけの時間ラニアを抱き締め満足した俺は、彼女を解放する。
「ありがと・・」
密着した身体が離れ互いの腕を滑らせ指先が離れていくまで、互いにまだ触れていたい気持ちを仕草に出し最後に指先が離れていく。
ラニアは俺に振り向くことはない。振り向き顔を見ると離れたくなくなってしまうと、前に一度言われたからだ。
ラニアが部屋を出た後に俺はベッドを降りて誰もいない部屋を出る。階段を降りて2階の食堂に入るといつもの光景にマリアの横にリンが座り、その横にナトリアが座っていた。
人数が増えた食堂の椅子は満席になる。この先まだ増えるかもと思い椅子を買い足そうと考えながら昼食を食べ終えて、皆が自由行動する前に俺は、考えていることを告げる。
「アイナを迎えに行くため、彼女の別邸に行こうと思う」
皆の反応は普通だった・・逆に遅いとミオとミリナに言われてしまう。とりあえず、全員が旅に同行することになりかなりの大所帯になるため野営キットを買い足す必要がある。
俺が王都へ行くことができないため、ラニアに買いに行ってもらう事にして護衛を獣人シスターズとシェルそしてアルシアを同行させようとしたが、俺がいないためイマイチやる気が無い。
「わかった・・肉串好きなだけ買っていいから」
そう告げると4人の瞳が輝きだし、やる気を出してくれたため安心した。
「ラニア、必要な者はコレに書いてある。他に必要な物があれば、ラニアの判断で買ってくれ・・あと、あの4人が買う肉串分のお金だ」
「肉串代でこんなに?」
「あぁ、1食に1屋台分は食べそうだからな。ナトリアからの支援がなかったら、秒で破産だよ」
それから支度を済ませたラニアが、獣人シスターズ達と一緒に馬車で王都へ向かう。それを家の門で見送り姿が見えなくなってから家に入った。
「とりあえず、久しぶりに体を動かすかな・・」
真衣達と常に一緒にいるリンを庭に呼ぶと、監視役の真衣達も庭にやって来た。
「リン、今日は君の戦力を把握したいから模擬戦をしようと思う」
「えっと・・ハルとするの?」
「もちろん・・リンはスキルと魔法を自由に使ってくれ。ここには、優秀なヒーラー職がいるから寸止め無しの打撃ありでやるから」
チラッとマリアを見ると、マリアと視線が重なる。何か言いたそうな表情をしている彼女に笑顔で手を振った後に、リンから離れ間合いをとる。
「そうだ・・真衣達も途中から参加してもらうから準備しててね」
アイテムボックスから、リンと真衣達の木剣を出して投げ渡す。見守るだけのつもりでいた真衣達は、飛んでくる木剣を慌てて受け取っていた。
「さぁ、リンッ!・・いつでもいいよ」
俺の合図にリンの顔が真剣な顔つきになり、息を整え木剣を構える。さすが騎士団副団長まで登り詰めただけあって姿勢に隙が無い。
ジリジリと間合いを詰めてくる彼女だが、なかなか攻撃に転じないためとりあえず正面から俺は突っ込むことにする。
ダダッ
「おりゃっ!」
ガガン!!
体格差を利用して上段構えから体重を乗せて振り下ろした木剣を、リンは素直に正面から受け止め踏ん張るが勢いを殺しきれず彼女の両足を後方へ数メートル滑らしながら止まる。
「くっぅ〜」
全力で押し留めるリンの口から声が漏れる。
「わわっ」
俺は、木剣の力を一気に抜きながら体を左に捻り、押し留めていた彼女の力を一気に解放させ体勢が前に崩れたところに下腹部へ右膝をくらわせる。
「ぐぁっ・・」
ガラ空きになったリンの背中に木剣の握りの先端を叩きつけ、地面へと倒し声をかける。
「まだまだ!素早く立ち上がるんだ、リン!」
リンから離れ、彼女が立ち上がるのを待つ。すると、先手を取られ副団長としてプライドが傷付けられたのか、今度はリンから攻めてくる。
「はぁっ!」
走る速度を利用し縦斬りや横斬りの連撃をしてくるが、単調であり剣筋が素直なため軽く木剣を叩き軌道を変え捌いていく。
「くそぉ・・なぜだ!・・はぁ、はぁ・・なぜだ!」
防戦一方の俺に対し有効な打撃を与えれず悔しがっているリンの気持ちが声になって出ている。
「はぁ・・はぁ・・」
さすがに連撃を数分続けていたリンに疲労が蓄積され、呼吸が乱れ動きも鈍くなってきた。
「副団長の実力は、そんな程度か?まだ女冒険者の方が粘り強いぞ?」
俺の挑発にリンの瞳に力が入る。
「くっ・・そぉーー!」
リンの斬撃に速さが戻って来たが、冷静さを失っているため鍛錬を一旦終わらせることにする。
リンから打撃を受け、わざと崩れた姿勢を作りリンに隙を見せると、俺の思惑通りにリンが上段構えになり振り下ろそうとした瞬間に反撃に出る。
リンが振り下ろす直前の木剣の握りを左手で掴み動きを止めさせ、驚く顔をするリンの隙だらけのみぞおちに木剣を叩きつけ意識を刈り取った。
「マリアッ!」
俺の声に反応したマリアが側に駆け寄り、足元で倒れているリンに治癒魔法をかけているのを見守っていると、なぜか、真衣達が呆然と俺を見つめている。
「・・どうした?」
「ハル・・・・」
真衣が名前だけ呼び、見つめている。
「なんかおかしいことあった?」
すると、愛菜が告げる。
「センパイ・・騎士団の副団長に、あんな一方的に勝つなんて・・あの勇者職の沖田くんでさえ、勝ことが稀だったのに・・」
「・・・まぁ、みんなより異世界歴が長いからな」
そう伝え納得してもらおうとしたが、そうはいかなかった。
「ねぇ、ハル。ステータス見せてよ」
真衣が俺の強さが気になったのか、個人情報であるステータスが見たいと言ってきた。
「ハル・・」
俺の側でリンの治療をしていたマリアが不安そうに、俺に小さく声をかけてくる。
「ん〜まだ見せられないかな?見ても参考にならないと思うし」
「そう・・マリアさんには見せてるの?」
「マリアに?・・あぁ、たしか見せたと思うよ」
しばらく真衣からステータス見せろと抱きついてきたが、そのうち見せると約束し渋々納得してくれた頃に気絶していたリンが起き上がる。
「おぉ、目が覚めたか?」
「・・・・はい」
「なら、続きをやるぞ!」
「もちろんです!」
もう一度、オレとリンで打ち合いながら弱点や癖を指摘し矯正させていく。そして成果が出始めたところで真衣たちに加勢するように伝えて、1対多数の鍛錬をはじめることにした・・。




