7章 王国マリア編 18話 防衛戦の後で・・・・①
目の前の猫人族少女に、いきなりご主人様呼ばわりされてしまった。
「ご主人様?・・君は俺を誰かと間違えているじゃないかな?奴隷を購入したことないし」
「そ、そんなこと・・他人の空似?・・」
黒髪オッドアイの猫人族少女が、なぜか狼狽えている。
「お姉ちゃん!あの人を間違えるはずないよ・・」
「・・でも、ご主人さまはあの時・・」
落胆する黒髪猫人族少女に茶髪猫人族少女が必死に涙目で否定している。
「・・あのさ、俺は帝国から来た冒険者で名前はハルって言うんだ。だから、君たちのご主人様ではない・・」
「「 ご主人さまっ!! 」」
彼女達に名を告げると俺に抱き付き号泣する。
敵意を感じられず、獣人族の素早さに驚き振り払うことはせず、ただただ猫人族少女に抱き締められ呆然とし起きていることが理解できない。
「ちょ・・ちょっと、どういうことかな?」
彼女達が泣き顔を上げてジッと見つめ口を開く。
「忘れたの?ミオです。猫人族のミオ・・王都の南の森で出会い、この街の奴隷商で再会して引き取ってくれたんだよ」
「わたしはミリナ。貴族から救い出してくれた猫人族のミリナ。ミオお姉ちゃんの妹のミリナです」
2人が俺に告げた想いに共鳴するかのように激しい頭痛に襲われ頭を抱え目を瞑る。
すると、暗闇の中に見覚えのない映像が流れ込んできて、眠っていた記憶が蘇る感覚が湧き出てくるが理解できない。
「いっててて・・ミオちゃんにミリナちゃん?」
「そうです!・・ご主人さまと共に過ごしていたミオとミリナです」
「でも・・獣人少女は、王国勇者のハーレム要員って冒険者ギルドで聞いたことがあるんだけど」
泣き顔の2人が顔を近付け、黒髪オッドアイのミオが口を開く。
「決してそんなことはありません。今も、この身と心はご主人さまのモノです。ギルドの噂は、王族が流した情報です。あのときご主人さまと別れ、仕方なく勇者達と共に行動しているからなのです」
「そう言われてもな・・実感が無いから複雑だよ。それに、この2人はなに?」
足元で寝ている、やつれた銀髪と金髪のケモミミ少女のことを聞いてみた。
「リルとクウコです。銀髪がリルで金髪がクウコ。ご主人さまは、この2人の名付け親でもあるんです」
「俺が2人の名付け親?獣人と婚姻した記憶ないぞ・・」
再び足元で無警戒に寝ている2人に視線を落としていると、ミオが話を続ける。
「本当です!彼女らは一般的な獣人に見えるかもしれませんが、神獣が人化して今の姿をしています」
「なっ・・神獣?だから、シェルと衝突したのか」
「シェルと?」
「いや、こっちの話だ。えっとなんだ・・このリルとクウコを連れて帰っていいよ」
「そ、それは」
先程まで連れて帰る気だった2人が急に消極的になる。
「「 ぅ〜ん 」」
寝ていた銀髪と金髪少女が目を覚まし、迎えにきていたミオとミリナに気付く。
「「 ミオ、ミリナ・・どうしたの?? 」」
「リルちゃんとクウコちゃんを連れ返しに来たんだけど・・」
銀髪の少女を見ていたミオが俺に視線を向けると、誘導されるように銀髪の子が俺の顔を見ると目を見開き固まってしまった。
「あっ・・あっ・・あっ・・」
「リル、急にどうしたの?」
右側で寝ていた金髪少女が銀髪少女の表情に驚きながら顔を見上げ俺と視線が重なる。
「はぇ?・・うそ?・・ハル?」
「ん?俺の名はハルだけど・・う゛ぇ・・おちついてぇ・・」
左右から強く抱き締められ、強制的に息が漏れる俺に容赦無く2人は胸元から首筋へと頬擦りしながら呼吸を荒げている。
「「 もう離さない・・絶対離さない 」」
リルとクウコの2人の獣人少女からも抱き付かれ、俺は4人の美少女に抱き付かれている状況に戸惑っていると、お腹の虫が鳴く音が聞こえた。
「お腹すいたのか?」
「「「「 ・・・・ 」」」」
4人は黙ったまま反応が無い。
「肉串食う?」
「「「「 うん、食べる!!!! 」」」」
息を合わせたかのように俺から離れ横一列に並んで待っている。
アイテムボックスから肉串を取り出し1本ずつ手渡すが、肉串と俺を交互に見て食べようとはしない。
「そうか・・食べていいよ!」
4人は俺の一声で目を瞑り必死に肉串を食べている。その姿を座って見ていると最初にリルが食べ終わり2本目を差し出すと、長年付き添っていたかのような仕草で見ることなく受け取り食べはじめる。
「なんだろう・・初めて見るのに懐かしい感じがする」
それから4人は10本ずつ食べ終え満足そうな顔をしていたため立ち去る事にした。
「それじゃ、元気でな。リルとクウコは、ちゃんと飯を食べるんだぞ」
幸せそうな顔をする4人に背を向けて歩き出すと、後ろから抱き付かれ振り向く。
「待って、行かないで」
「おっと、今は勇者の仲間だろ?俺と一緒にいるとマズイんじゃないか?」
「「 ヤダ・・ 」」
銀髪と金髪少女のリルとクウコが別れ流のを拒否する姿を見た俺は屈んで2人の視線の高さに目を合わせると、自然に言葉が出た。
「俺と勇者の関係は良くないんだ。簡単にいうと敵対関係かな。だから、リルとクウコが俺の側にいるのはよく無いと思う。みんなと一緒に勇者の元へ帰るんだよ・・元気で」
そっと掴んでいた2人の手を放し離れ、立ち尽くす4人を見ながら笑顔で手を振り歩き去る。
近くの通りの角を曲がったところで隠密スキルを発動しマリア達が待つ場所へと向かった。




