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7章 王国マリア編 17話 都市ニシバル防衛後半戦

いつもアクセスありがとうございます。

7章も終わりが見えてきました。


「さぁ、狩りの後半戦の始まりだ!」



 レウロスが予備戦力として門内にいた冒険者達を呼び寄せ的確な指示を飛ばし陣形を取らせつつ、魔法士達に遠距離魔法を発動させ動きの遅いオークを消し済みにさせ数を減らしていく。


 動きの素早いウォーウルフの進路に回り込んだ俺は、火魔法ファイヤーショットを左右に数発放ち牽制し進路を狭め、1頭ずつ順々に襲い掛かるウォーウルフを難なく斬り殺す。



 ドドォーン! ズドドォォーーン!!


「 ん? 」


 ウォーウルフを斬り倒しながら横目で状況を確認すると、レウロス達が放つ雷魔法ライジングショットが俺の直近の魔物達に向けて放ちはじめていた。


「あっバカ!俺を巻き添えにする気か・・」


 グゴオォォォ!


 タイミング悪く巨体のオーガが正面に現れ俺に狙いを定めてきていた。


「クソッ!」


 反射的に右足に力が入り、地を蹴って後退する瞬間にミスが起きた。


 ズルッ


 血の海とかしていた地面に右足を取られ踏ん張れず、その場に背中から倒れ込み左手で受け身を取った時に上空からライジングショットが降り注いでくるのが見える。


 ドドォーン!


 耳を塞ぎたくなるほどの轟音と共にビリビリっと軽い衝撃を受けたが、俺を狙うオーガに命中し絶命してくれたまでは良かった。


「おいおい」


 絶命したオーガの巨体がそのまま倒れ俺の上に落ちてくる。


「マジかよ!」


 片手剣を両手で握り直し全力で振りオーガの上半身を分断し押し潰される最悪の場面を回避したが、代償に大量の血と臓物そして泥を全身に浴びてしまった。


「くっせぇ・・」


 血生臭い匂いと魔物特有の匂いで何度か吐きながら立ち上がり周囲の戦況を確認すると、前衛役の冒険者と魔法士達の連携で魔物の数は当初から見て2割まで減っている。


 その分、ぶっ倒れている魔法士達も大勢いたことに魔力回復ポーションの数をケチるんじゃなかったと後悔し、どうするかと考えていたら違和感を感じた。



「・・あれ?」


 周囲にいるオーガ達がお俺を無視して街へと向かっている。どうやら、オーガの血や泥を浴びたせいで魔物と認識されているみたいだ。


「俺も魔物化してしまったな・・」


 そう呟いていると東門がなんか騒がしく感じた俺は、気配探知スキルで確認すると北側の魔物は全滅し、こちら側の後始末をしに勇者達がやってきたようだ。


「このタイミングで主役のお出ましか・・格好つけやがって」


 魔物化?した俺は、魔物達に襲われる脅威がなくなり余裕をこいて東門を眺めていると魔力が収束されていくのを感じた。


『みんな、そっちの状況は?』


 マリアから念話が返ってくる。


『ハル、もう大丈夫だよ。勇者様達が今から魔法で残りの魔物を殲滅してくれる見たい』


『マリア・・今からなんだって?』


『だから魔法で殲滅してくれるみたいで、もうじき発動するよ』


『・・嘘だろマリア。あいつら状況も確認せずに強大な魔法をぶっ放すのか?』


『スタンピートには有効打って説明してたけど』


『はぁ・・コレ詰んだな』


 そう呟きながらアイテムボックスからHP回復ポーションと魔力回復ポーションを飲み干し遠くに投げ捨てる。


『えっ?ハルどうしたの?詰んだってなに?』


『マリア、俺の位置確認してみな』


『・・ウソ、逃げて!お願い早く!』


 マリアの泣き叫ぶような念話と、遅れて理解したアルシアとシェルが騒いでいるが、強制的に念話の繋がりを切断して空を見上げると大きな魔法陣が形成しはじめて、中心に金色に輝く光が生まれだんだん大きくなっていく。



「アレが北の方で発動したやつと同じ魔法陣か・・」


 勇者の魔法を俺の魔法で、どれだけ抵抗できるかと思いついた俺は集中し魔力を凝縮し上空の魔法陣へぶっ放す。



「くらえ勇者!阻害魔法マグネティズム・ディスタールブ!!」


 天高くかざす片手剣の切っ先から、7つの色に輝く光の帯が互いに絡み合いながら上空を駆け上り魔法陣の中心へ向かっていく。


 その光を追いかけるかのように周囲の地面から真っ黒な砂粒が大量に舞い、7つの光に絡みつっこうと必死に追従するため俺の周りから光が失われ真っ黒な砂嵐となった。


 

 バリィィィン!!



 上空で何かが割れる轟音が響き渡り、街から響めき声が遅れて聞こえるなかすぐに聞こえなくなると同時に、その場で立っていられないほどの揺れを感じで座り込んだ。


「気持ち悪りぃ、脳が揺らされているみたいだ」


 暗闇と無音の世界に1人取り残されていると、黒い砂粒が一気に地面へ引き戻され明るさと音を取り戻すことができた。


 大量の砂粒が地面に落ちたというのに砂埃が微塵もない現象に違和感を感じながら立ち上がりながら周囲を見ると魔物達は倒れたまま動こうとしない。



「なんか知らんけど・・倒したのか?」



 ・・・・キラッ


 たまたま視界に入っていた東門から一瞬何か光った後に、一呼吸終わらない間で俺を狙う矢に気付きギリギリのところで片手剣で弾き軌道を変えることができた。


 バンッ


「あっぶね!」


 次弾から逃れるため、右後方へ移動し狙ったやつを探し見つけると東門の警戒監視哨に彼奴らがいた。


「あの鎧・・やっぱ勇者か。北側を片付けてこっちに来たんだな」


 1人で嫌味を込めながら呟いていると勇者が風魔法を使い声を拡声した。


「お前の部下を全て殲滅した!もうお前しか残っていない。諦めて魔の国へ帰るか、ここで死ね!」


 俺は、生き残っているらしい魔物を見つけるためキョロキョロ見渡し探すが、立っている魔物はいない。きっと勇者の位置からしか目視できないと気付き、気配探知スキルで確認する。


「・・他に誰もいないじゃないか・・ってことは、まさか俺が魔物を率いた奴だと思い込んでいるのか?」


「これが最終警告だ!そのまま、背を向け立ち去れ!」


 勇者が抜剣し空に向けると、刀身が金色に輝き出し異常な魔力を感じる。


「この聖剣テノクオで、お前をこの世界から消し去る!」



「聖剣テノクオ?・・・・そこはエクスカリバーとかじゃないのか、王国勇者よ」


 金色に輝いていた刀身が根元から剣先へと輝きを収束し、切っ先に金色の魔力玉が出現する。


「それって、北側で見た光の柱の正体なんじゃ・・・・」


 脳内に警告音がけたたましく鳴り響くような頭痛に襲われ背筋にどっと冷や汗をかく。一瞬の判断で俺の生死が決まるこの瞬間に懐かしい声が聞こえた。



『ハル、躊躇わずに東門に突っ込むのじゃ!』


『え?ナトリア?』


『そうじゃ。まだハルに死なれては困るのじゃ』


『ありがとう。このまま突っ込むよ』


 俺は、生と死を司る女神ナトリアの言葉を信じて東門へ全力で突っ込んで行く。


『なぁ、このあとどうすれば?』


『・・知らんのじゃ』


『はぁ?女神だろナトリア!』


『妾は、戦法など管轄外じゃ。戦女神アーテナなら詳しいぞ』


『このクソ駄女神が』


 プシュー!!


 何かが沸いた音が聞こえる。


『ぬぁ・・高貴なる妾を駄女神と言うのか!今すぐ躾じゃ、表へ出るのじゃ!』


『盛り上がってるとこ悪いけど、ナトリアの相手もここまでだ。次の敵が俺を殺しに来た』


 意識を目の前に向けるとプツンと繋がりが切れる感覚があった。なぜか暴れ騒ぐナトリアの光景を想像し、思わずニヤついてしまう。


「なにがおもしろいんだろうね、リル」


「なにがおもしろいんだろうね、クウコ」


 見た目とは相反する力を秘めている銀髪少女と金髪少女が、俺の行く手を阻むかのように短剣を構え待ち構えている。


「き・・君たちは勇者の仲間か?」


「仲間といえば仲間かもしれない?けど、魔族のあなたには関係の無いこと」


「いやぁ、俺は魔族じゃ無いし・・帝国から来た冒険者なんだけど」


「騙されない!その悪臭は魔族だけ。わたし達は騙されない」


 銀髪少女が冷淡な瞳で俺を睨みつけている。よっぽど魔族に怨みがあるのだろう。


「ちょっと待ってくれるか?臭い落とすからさ・・」


「待たない!・・せぇあ!」


 銀髪少女が飛び出し斬りかかってくる。金髪少女も時間差で仕掛けてくるのも捉えた。


 素早く動く2人は目で追えない速さではなく打撃も軽く実戦向きではなく、しかも一番気になったのがこの短時間で息切れをしていて、2人の連撃を余裕で捌いていく。


「はぁ・・はぁ・・なんだろう、この感覚」


 ポツリと呟く銀髪少女に同意するかのように金髪少女も呟く。


「凄く懐かしい・・身体が何かを訴えている気がするの」


 その言葉を隙とみて、俺は片手剣で斬撃をくらわせるように2本の短剣を彼女達の手から強制的に飛ばし排除した。


 ガキィン・・ガキィン


 持っていた短剣を簡単に弾き飛ばされ、飛んで行く短剣を目で追う2人の背後に周り抱き寄せ拘束する。


「捕らえたぞ!降伏しろ!」


 ドサッ・・


 そう宣言し捕らえた2人の身体があまりにも痩せ細っていることに驚いた俺は、思わず彼女達から腕を放してしまった。


 その場に座り込んだ2人は、俺を見上げジッと見つめている。まるで捨てられた子猫のような表情で。


「なにをしている!お前らの力は、そんなもんじゃなかっただろ!憎き魔族を倒せ!」


 勇者が座り込んだ2人にゲキを飛ばし、戦いを継続させようとしているが本人達から戦意を感じ取ることはできなかった。


 勇者の隣りにいる獣人2人が、座り込んだ2人の元へ行こうとしたところを勇者が静止する。


「動くなミオ!ミリナ!」


 勇者に止められたのは、どうやら猫人族のようだ。噂で聞く獣人シスターズの2人なのだろう。


「おいっ!リル、クウコ!立ち上がれ・・その魔族を倒せ。アイツの怨みを晴らしたいんだろ?」


「「 クッ・・ 」」


 銀髪少女と銀髪少女が俺を睨みつけるが、俺と視線が重なると下を向いて足元の土を握りしめている姿を見た俺は、ゆっくり歩き2人の少女の側でしゃがんでから抱き抱えた。


「「 あぅ・・ 」」


 小さな声を発した2人は抵抗せず、諦めたのか身を委ねている2人だけ聞こえるよう呟いた。


「ちゃんと飯食っていないから、本来の力の半分も出せていないだろ?」


 抱き抱えられた2人は、簡単に見透かされたことに驚き俺を見つめる。


「取って食ったりしないから、俺についてこないか?飯ぐらい腹一杯食わせてあげるよ」


 無言の2人を肯定と決めつけ、この場から去ろうとした時に勇者と猫人族の2人が斬りかかってきた。


 あまりの遅さに2人を抱き抱えたまま避けていく俺の動きを邪魔しないように2人が姿勢を微妙に変えつつ抱き付いていることに気付き、なぜか笑顔になってしまった。


「なにが可笑しいんだ!」


「2人を解放しなさい!」


 勇者と猫人族少女が真っ当なことを言う。たしかに、この2人を連れ去ろうとしている構図に見えるだろう。だが、当の2人は俺に身体を委ねているのだ。


 そこで俺は、1つの疑問を勇者にぶつけてみた。


「勇者よ!1つ聞こう・・なぜこの2人は痩せ細っている?満足に飯を食わせれない立場ではなかろう?」


「そんなん知らねーよ・・2人に聞け!素直にここで死ね!」


 東門を境に2人を抱き抱えた俺と、聖剣を構えた勇者達と対峙する状況の中で、完全に悪役の俺は何がしたいんだろうと冷静に考えはじめる。


「とりあえず、俺は魔族じゃ無いことを証明しないとな・・」


「「魔族じゃない??」」


「あぁ、さっきも言ったけど俺は帝国から来た冒険者だからさ・・まぁ、この汚れ具合じゃ2人の言う通り魔族と間違われても仕方なかったかも・・」


 防戦一方の俺は、隙をついて間合いをとる。勇者と猫人族少女達が次の攻撃をする前に生活魔法クリーンを発動する。


「クリーン!」


 生活魔法クリーンを発動して全身に染み付いた返り血や泥を浄化し本来の容姿を取り戻し声質も戻した。


「お、お前は!」


「また会ったな、王国勇者さんよ?」


「クソッ!お前ら見るな!ここから離脱しろっ!」


 対峙する真ん中当たりで目を瞑るほどの眩い光が突如発光し、辺りが真っ白になったため隠密スキルを発動し東門から逃げることができた。


 強い光を直視してしまった2人は一時的に視力を失い涙を流しているが、今の俺に対処法がわからないためこのまま街の中へ紛れ込んだ俺は、たまたま見つけた広場の隅に座り隠密スキルを解除しフードを深く被り呟いた。


「この子達をどうしようかな・・」


 そう考えていると、いつの間にか目の前に勇者の隣に立っていた猫人族少女の2人が立っていた。


「2人を返してください」


「あぁ、いいよ。今は寝ているだけだから」


「「えっ?・・うそ・・」」


「どうした?連れて帰るんだろ?」


 俺は、フードを外し目の前に立つ2人と視線を重ねた後、想像もつかない言葉を聞くことになった。




「「 ご主人さまっ!! 」」



 その言葉を発し、無邪気に俺に飛び込み抱き付かれた俺は、咄嗟に言葉を発することができなかったのだった。



次回投稿は年明けになります。

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