27話 終わった…?
地面に足を着地させた陽之衛は瑞兎たちの元へ帰ってくると、刀を瑞兎のうなじに突き刺し、ずず、と押し込んだ。
お互いに苦々しい表情のまま言葉も交わさずに視線を合わせる。
痺れを切らした烏が鳴いて急かしたせいでハッと足元を見ると、寝かせていた夢子の意識が戻りかけているのか呻いていた。
無事だったとわかり安心したが事態の空気は重苦しさを増す。
「彼女で間違いありませんか」と冷静に八咫が問いかけてきた。
瑞兎は小さくうなずき、頭に流れてきたものについて話す。
「夢子様は、やはり将志郎さんへ強い憎しみの念を持っていました。彼女は葦だと自覚がなかったようですが、激しい衝動が悪へ反転したんです」
「それ以上は彼女に直接聞きます」
八咫が遮り、瑞兎たちへ礼をすると身をひるがえした。
用は済んだと言いたげな背中に語り掛ける言葉を探すも、疲れた陽之衛に寄りかかられて前のめりになる。
その衝撃のおかげで聞きたいことが見つかった。
「将志郎さんは釈放されますか」
少し考えたあとに八咫が「取調べ次第です」と淡々と返事をし、烏たちとともに闇に飲まれてしまった。
川のせせらぎが聞こえ始めたことで、ついに瑞兎の力がドッと抜けていく。
その場に二人でしゃがみ込んだ。
「終わったんですよね」
「うん、たぶん。お疲れ様、瑞兎」
頭を撫でられた感触が気持ちよくて思わずすり寄せる。
でも心はたいして明るくはならなかった。
むしろ暗がりが広まった気分だ。
陽之衛も同じらしく、空腹でぐぅぅっと腹が鳴るまで黙り続けていた。
「帰ったらまずはご飯を作らないと。おにぎりでも握ります」
「だな。はぁ、それで結局あれはどういうことなんだ? どう考えても枯れ葦がはみ出てたような気がするんだけど」
「だれかが引きずり出そうとした、ということです」
「可能なの?」
単刀直入な質問に苦笑して否定する。
「無理ですよ──、でもあの人の記憶の中で最後に聞こえたのは、蛇の鳴き声でした」
「蛇……」
ぶる、と陽之衛の体が震えたので慌てて抱きしめる。
すっかり忘れていたが、陽之衛は大の蛇嫌いだった。




