実力テスト
教室の扉をがらりと開けると私たち以外の4人全員が席に座っていた。
「あっ!てめ!」
「ひぃっ!」
私を発見するや否やテオはがたりと立ち上がった。
「二人とも~遅刻~」
ミーネはマイペースで通常運転だ。
「えっと…」
「あー、いいんだよ。野暮用で私と一緒にいただけだ」
「あ?チッ、センコーか。命拾いしたな」
後ろから入ってくるカミラ先生を見るとテオはまた肘をつきながら座り直す。
助かった…。
「先生も遅刻ですよー」
ソウマはおどけた風に言う。
「私は教師だからいいんだよ」
「えー?生徒の出席にかかわるんですし先生もなんかあってもええんじゃないですか?」
「うるせぇな、私の王国だぞ。何してもいいに決まってんだろうが、殺すぞ」
この先生ほんとめちゃくちゃだよ…。
「暴言…」
渚がぼそりという。
「なんか言ったか?」
「いえ何も」
何もない風に私たちは席に着いた。
「お前ら全員そろってるなー。…あ?こんなチビっこいのいたか?昨日見たっけな?」
「い!た!よ!気絶して意識はなかったけど!」
「あー、そこに転がってたやつか。もうそんなところで寝るんじゃないぞ」
「寝…!この…!」
言葉を失うテオ。
「ひぃ!ひぃ!朝から笑かさんといて!」
ソウマは腹を抱えて笑っている。
ともかくテオはレオナ先生には逆らえないっぽい。
覚えておこう。
キーンコーンとチャイムが鳴る。
「あーあー、お前らのせいで授業はじまったじゃないか。時間は有限なんだぞ、もっと自覚を持て」
「私たちのせいなんだ…」
「まぁいい、今日は実力テストだ。クラス分けテストとは違ってお前らに合わせた問題だから気合入れて解けよ」
うぐ…またテストか。
ため息をつきながら配られたプリントを見る。
「あれ?簡単?」
どれも基礎の基礎といったような問題ばかりに見える。
「お前らに合わせたと言っただろうが。初等部に出ていれば10分で解けるはずだ。よし…じゃあ始めろ!」
一斉にペンを持って解き始める。
「(最初は基礎魔法学か。えーっと…魔法における初級、中級、上級の詠唱起動キーを答えろ?『アロ』『レクト』『アスレクト』だね。簡単簡単!)」
順調にペンで書き進めていく。
確かにこれなら10分で終わるだろう。
チラッと前の黒板を見ると
1.基礎魔法学 30分
2.歴史と社会学 30分
3.数学 30分
4.語学 30分
間10分休憩
と書かれていた。
4つのテストをするようだ。
っていうかこの先生午前で終わらせるつもりだ。
その下に午後自習と書いてある。
この調子なら午前も余るんだろうな…。
そうして各30分テストを進めていった。
「3…2…1…そこまで!こっちに解答用紙を持ってこい」
レオナ先生の声に全員が息をつく。
「…っだあ!頭使ったぜ!」
「あ~、まだ解いてたのに~」
「疲れたなぁ!なあイリス君!」
「…簡単」
解答用紙を提出したと同時にみんなは話し始めた。
私も同様に提出した後、渚に目を向ける。
「渚、どうだった?」
「えっと…」
「静かにしろ!カンニングとみなして0点にするぞ!」
先生の声に慌てて席へと戻った。
「よし、これで全員だな。回答欄のずれも考慮しないからな。お前のことだ、ナギ・ミスティア!」
「うぐ…!」
確認したので今回は大丈夫なはずだけど振り分け試験で1問目から回答欄をずれて書いてしまった私は何も言えない。
というか指名しないでほしい、しかも終わった後に!
「よし、採点結果は後日となる。本日は以上だ。解散!」
そうしてレオナ先生は出ていった。
「あぁ~終わった。先生も意地悪だぁ、私頑張ったのに!渚はどうだった?こっちの世界の試験だから難しかったんじゃ…」
渚に顔を向けて話すが渚の方は少し落ち込んだように首を横に振った。
「ナギ…私、文字読めない」
「え…」
「ほとんど解けなかった」
「あ…。ああ!!そうだった!!」
異世界から来た渚は文字が読めなかった。
昨日書いた申請の資料も私の補助があって書いていた。
9割が名前や年齢などを書くだけだったので補助も一瞬だったけど。
「どうしよう!今から先生に…」
「いい、ちゃんと覚える。音声が一致してるからすぐだと思う」
「でも大変じゃ…」
そうして騒いでいると声につられたのかソウマとミーネがこちらにやってきた。
「んー?どないしたん?」
「文字が~どうしたの~?」
マズい、声が大きすぎた。
異世界とか言ったら口を縫われちゃう!
「あー!えーっと実は…そうだね…」
どうしようどうしよう!このままじゃ…!
「私、記憶喪失。文字とか歴史も何もかも全部忘れてここにいる」
「う"ぇあぁ!?記憶喪失!?」
突然の爆弾発言に私は驚愕の声をあげる。
「…なんでナギちゃんが驚いてんの?」
「あ…」
ソウマの疑問にハッとする。
いけない、これ渚が乗り切るための嘘だ!取り繕わないと!
「そ、そうなんだよ!いやぁ、参っちゃってね!だから私の部屋で一緒に暮らしてて!」
ご、ごまかせたかな?渚もこくこくと頷いている。
「え~?そうなの~?一緒に暮らしてるんだ~」
「ふーん、大変やなぁ」
よかった、何とかうまくいったらしい。
そんなやり取りしていると二人の後ろからまた人影が現れる。
「二人とも、どいてくれ」
「ん?おっと、どうしたん?テオ君」
やってきたのはテオだった。
「おい、ナギとか言ったな。ちょっと面貸せよ」
「…え?」
「てめぇに誰が一番上かわからせてやる」




