デコピン対決
テオがこちらを見ながらにらんでいる。
「俺とお前でタイマンの勝負だ」
「ひぃ!なんで私なのぉ!?」
そんなテオに仕方なさそうな顔でソウマは見る。
「テオ君も頑なやなぁ。毎回一日絡んだら満足するやん」
「るっせぇよソウマ。忘れたとは言わせねぇぞ、昨日知らねぇ間に俺を気絶まで追い込んだ女だからな」
「気絶って…ハンカチで転んだ件!?あれは私のせいじゃ…!」
「言い訳はいいんだよ!」
「待った、ナギに何かするんだったら私を倒してからにするといい」
渚が私とテオの間に入った。
「な、渚?」
「転校生か、お前は後の予定だったが邪魔するなら容赦しねぇぞ」
「問題ない、どこからでもかかってくるといい」
じりじりとにらみ合う二人。
そんな中突然ミーネが間に割り込んできた。
「喧嘩~ダメ~!叩いたり殴ったり~危ない~!」
「あ?殴っ…!そんな野蛮なことしねぇよ!ガッコ内で恐ろしいこと考えるんじゃねぇ!」
「??違うの~?」
「ああ、そうじゃなくて…なんだ!もっとこう…高尚な不良のやることだ!」
「高尚な…不良?」
一言で矛盾していそうな言葉に唖然とする。
一体何を…?
「ああ、どちらかが倒れるまでやる。デコピン勝負だ!」
声高らかにテオは宣言する。
「でこ…」
「ピン?」
…言っている意味は分かるのに何もわからない。
「ひーっひっひひひひ!!デコピン!デコピンって!!」
ソウマはそれを聞いた瞬間腹を抱えて笑っている。
「うるせぇぞソウマ!これは真剣勝負だぞ!」
「あーおもろ!水切り程度じゃあかんって言ってたからほんまに殴り合うんかと思ってたわ」
「…女は殴らねぇ」
「男も殴れへんやん」
「殴れるけどやらねぇだけだよ!もういいだろうが!」
「??水切りって?」
渚が聞く。
「僕の時は水切り勝負で友達にしてくれたんや」
「…へぇ」
「あの時は俺も子供だったからな。だが今回は違う!撃たれた場所が真っ赤に染まるデスゲームだからな!」
「くくっ!デスゲーム!」
そんな仰々しいものだったっけ?デコピンって。
「えと、私もやるの?」
恐る恐る聞くとテオはくわっと目を開く。
「当たり前だろうが!お前のために考えてきたゲームだぞ!」
「えぇ…?」
「ナギ、任せてほしい。私のデコピン力、53万はある」
「??」
何その数字?なんかすごそう。
「ええやん!じゃあうちのクラスで」
「な!?俺とこいつのタイマンだぞ!勝手に…!!」
「私もやる~」
ミーネが両手をあげて賛同する。
「イリス君もやるやんなー!」
「…」
離れた場所に座っていたイリスががたりと立ち上がってこちらに来る。
「あぁー!!しょうがねぇ!全員まとめて俺がぶったおしてやる!」
「決定~」
そうしてなぜかデコピン大会が始まってしまった。
「ルールは簡単だ!交互にデコピンをして降参宣言をさせた方が勝ち。同じ場所にやるから痛みは蓄積される悪魔のゲームだ」
そんなテオの説明を聞きながら6人が向かい合う。
「じゃあ一回戦、赤い印付いた紙が当たりや!」
いつの間にかくじを用意していたようでそれぞれが引いていく。
「はずれか」
私は真っ白の紙だった。
「あっ」
「…」
渚とイリスの紙を見ると赤い印がついているのが確認できた。
「じゃあ一回戦!渚ちゃん対イリス君!」
いつの間にか仕切っていたソウマが声高々と宣言する。
「…」
「負けない」
「そうやなぁ、どっちからに…」
「お先にどうぞ」
自信満々の渚が前髪をかき上げておでこを出す。
「お!じゃあイリス君、張り切って~レッツデコピン!」
「…」
イリスが右手を出してデコピンの体勢に入り…
「いってもデコピ…ひっ!」
バチン!とデコピンとは思えない音が教室に鳴り響く。
「いっつ!!…やったね!」
渚が痛みを我慢しながら即座にデコピンの体勢に入る。
バチン!
「っつ…!」
のけぞりながらもイリスは反撃に出た。
バチン!バチン!バチン!バチン!バチン!
「やべぇ…」
「ひぃぃ…これデコピン対決だよね…?」
私こんなのされたら死んじゃいそう。
「あー、長引きそうやし二回戦行こか!」
「ええ!?これほっといてもいいの!?」
「ええんやって!ほらナギちゃん、くじ引いて!」
「う…」
まだまだバチバチとやりあってる音を聞きながらも私はくじを引いた。
今回も白だ。
「えっと、誰が…?」
「私、赤だ~」
「俺だ」
声のした方を見るとミーネとテオが二回戦の相手だった。
この二人…なんかすごいギャップだ。
どういう勝負が繰り広げられるんだろうか?
「じゃあ二回戦!ミーネちゃん対テオ君、開始!」
「レディーファーストだ!ミーネ、お前からやれ」
ソウマの掛け声とともにテオが先行を譲る。
「え~?いいの~?ありがと~」
ふわふわとしたもの言いとゆったりとした動きで右手を上げ出した。
「じゃ~行くよ~?」
「よし来い!」
でこを差し出したテオに対してミーネの指はほとんど力が入っていないように見える。
「えいっ!」
へにょっとした動きに音も出ず指の軌道さえ確認できるほど遅いデコピンだった。
「…あ?はっ!全然効かねぇな!」
「あれ~?」
ミーネは指を見るがあれでは軽く触った程度だろう。
「じゃあ俺の番だ!心して受けろよ!」
「わかった~」
ミーネがでこを差し出しテオは思いっきり指に力を入れる。
そして…
「…」
「…」
そして?
「…?」
「俺の負けだ…」
「ええ!?」
どういうこと!?
「ミーネには手をあげられねぇ…」
「ミーネちゃんの勝ち―」
「やった~勝った~」
「ちょ…ずるい!」
「あ?ずるくねぇよ。俺が負けを認めたんだ!俺の負けでいいだろうが!」
「うぐ…」
何も言えない、なんで負けた人に説教を食らってるんだろう…。
「じゃあ三回戦、僕対ナギちゃん!」
「わ、私?」
「そうやで、はよせな!ナギちゃんからやって!」
「は、はい…」
言われるがままにでこを出したソウマに指を向ける。
もうやるしかない。
「…えいっ!」
ソウマの額をうつとぺちんという音がする。
「ああっ、いったいわー!もう続けられへん、僕の負けやね!」
「え!?そんな…」
全然痛くなさそうに言葉を連ねる。
「この痛さはナギちゃんとテオ君の対決を見な治まらへんなぁ!」
「えぇ!?そんな…!」
最初からそのつもりだったんだ!
どうしよう、私絶対負けちゃうし痛いのは…。
「俺は最初からそのつもりだったからな!早くやろうぜ」
テオの方はやる気満々だ。
「ナギ、フォームが違う」
気が付けば額を赤くした渚がこちらを見ていた。
「渚!えっと…勝負は?大丈夫なの?」
「ドロー。なかなか強かった」
イリスを探すと同じく額を赤くしながら元の席へと戻っていた。
「アドバイス、いいよね?」
「あ?…ああ、好きにしろよ」
渚の言葉にテオは同意する。
「ナギ、手を出して」
「え?う、うん」
言われたとおりに手を出した。
「弾く指は人差し指じゃなくて中指。手首を左手で固定させてじっくりと力を溜める」
「え、えっと、中指で…力を溜める」
渚のガイドの通りに指を動かす。
「そして一番重要なのが、おでこに当てるのではなく脳まで貫通させるイメージ」
「貫通…」
中指に力を入れていつでも放てる状態だ。
「よし、撃って!」
「え、えい!」
溜めていた指を解放するとパァン!と破裂音のような音が鳴る。
「…は?」
テオが目を丸くしている。
「すごい…。私より才能ある。天才かも」
デコピンの天才って何?
「じゃあ本命!テオ君対ナギちゃん!」
「…は?いやいやいや!待て!待てよ!」
「テオ君、覚悟決めな!」
がしっとソウマがテオを羽交い絞めにする。
「そうだ!俺はミーネに負けたんだぞ!なんで俺が!」
「でも最初はテオ君が吹っ掛けたんやろ?責任持たな!」
「頑張って~」
「ナギなら勝てる」
「じゃあ、レディーファーストでナギちゃんから」
「お、おい…」
さっきのアドバイス通りにもう一度指を構える。
「じゃあ…いくよ?」
テオの額にセットが完了する。
「や、やめ…」
「えいっ!」
…その日以降、F組から破裂音と断末魔が聞こえるという噂が出始めるようになった。
「はい、ナギちゃんの優勝!」
こうしてデコピン女王の勲章を手に入れた。
いらない。
楽しくなって書いてしまいましたがしばらくF組出てこないかもしれません。




