トップの条件
--ナギside--
「ふむ…いいだろう」
書類と反省文を受け取ったレオナ先生はペラっとめくってオーケーを出した。
「ちゃんと読んでます!?徹夜だったんですよ!」
「ん?ああ、読んでるよ。神に祈るほど反省したんだな」
絶対読んでない。神に祈るなんて一言も書いてないから!
「先生!」
「ちゃんと読んでほしいのか?内容によっては容赦なく再提出にするぞ」
「…それでいいです」
再提出だけはいや!
「眠い…。書類は?」
渚が目をこすりながら言う。
「それは改めて確認する。だが基本的には問題ないだろう」
そう言ってじろりと私たちを見る。
「それにしても徹夜するほどの量か?この程度であれば夜までには終わるだろう?何かしていたのか?」
「え?昨日は生活必需品とか家具とか服とかいろいろ買い物とかしていたので…」
寮に帰ったのは日が完全に暮れてからだ。
「…配慮が足りなかった。それに金もかかっただろう。次からは申請しろ、最低限のものは用意してやる」
「え!?申請すれば用意してくれるんですか!?じゃあ私…」
「何を言っている?赤月生徒の分だけに決まっているだろう。それにお前はすでに補助金が出ているはずだ」
「むぅ…」
「赤月生徒も補助金の申請が通ったら自分で何とかするように」
「はーい」
そんなやり取りをしていると後ろから別の声が聞こえる。
「なんだ?金がないのか?お前ら」
「カミラ先生」
私達Fクラス担任のカミラ先生だ。
「貸してほしい場合は言え。10日で1割の利子で貸してやる」
「え?貸してくれるんですか!?今月ピンチで…むぐ!」
お礼を言いって貸してもらおうか相談しようと思ったら渚が手で口をふさいできた。
「ナギ、ダメ。完全に詐欺」
「ちっ、引っかからんか」
借りようと思っていたがダメらしい。
銅貨10枚借りたら11枚で返したらいいだけでしょ?
計算間違ってるかな?
「学生相手に何をやってるんだ、カミラ…」
呆れたような顔ででレオナ先生はカミラ先生を見る。
「さすがに冗談ですってレオナ先生!学生相手にたかってたら私が教職降ろされちゃいますからね」
「…まぁいい。それよりもうすぐ朝礼だろう?」
「わかってまーす。ほれ行くぞ、落ちこぼれ共」
「むぅ…落ちこぼれ…」
間違っていないけどなんか納得できない。
「行こ、ナギ」
「…うん、わかった」
渚がカミラ先生についていくので私もそれに続いた。
「また何かあったら言え!」
そんなレオナ先生の声を残して私たちは職員室を出ていった。
「…」
カツカツと3人で廊下を歩いている中、渚はふと足を止めた。
「…渚?」
「どうした?赤月渚。忘れ物か?」
少しうつむいて渚は口を開く。
「カミラ先生、どうすれば学校で一番になれる?」
「あ?一番?なんでそんなこと…いや、天上の力か」
渚はこくりと頷く。
「私も聞きたいです!渚が元の世界に戻るの、手伝いたいので!」
「…かなり難しいぞ、本気か?」
「はい!」
私と渚はまっすぐにカミラ先生の目を見る。
「…一番簡単なのは成績で一番になることだ。ここ数年は全部それだな」
「えっ?」
思ったより地味。
っていうか成績って私達じゃかなり厳しいかも…。
「もちろんFクラスのお前らがそれをできるとは思っていないし実際できないだろう」
「む…」
失礼な!できる気はしないけど。
「それにちょっとお勉強ができて力を使う者に選ばれたとしても元の世界に帰るほどの力は使えない」
「えっ!?じゃあ目指す意味ないじゃないですか!私達そのために頑張ろうとしてるんですよ!?」
「話は最後まで聞け。成績以外でも選ばれる可能性はあってな。力を使える量はその功績によって変わってくる」
「功績?」
「ああ、例えばそうだな…。過去の事例であるのは研究で新魔法属性を発明した、前人未到のダンジョンを踏破した、危険度がA級の魔物を一人で倒したなどだ」
「えっ!!」
「??」
渚は首をかしげてはてなマークを頭に掲げている。
「私…わからない。どれくらいすごいの?」
「ん?あぁ、お前はそうだったな…。簡単に言えば熟練の研究者や冒険者達が一生をかけてできるかどうかの偉業だ。ただの学生がホイホイできるようなことじゃない」
「そ…そんなの…」
「無理だと思うか?」
「う…」
怖気づくように一歩下がる。
「そう思うだろう、それが普通だ。だがな…それらを成し遂げた奴らのほとんどはお前らみたいなバカだったらしい」
「えっ」
「!!」
カミラ先生は少し挑戦的な顔でにやりと笑う。
「ふっ、お前らのこと、少し気に入って来たよ。期待はしていないが目指してみるがいいさ。ほら、早く…」
「もう一ついいですか?」
渚はまた声をかけた。
その目は真剣に見える。
「なんだ?」
「天上の力を使ってできることって他には何があるんですか?例えば見つけたいものがあるとか探してる人がいる場合、探せたりしますか?」
「その程度なら成績でトップを取った場合でも可能だ。狭い範囲であれば個人でも簡単にできるぞ」
「ありがとうございます」
「?」
どうしたんだろう?何か探したいものでもあるのかな?
キーンコーンと朝礼のチャイムが鳴った。
「ほら、もう行くぞ。お前らのせいで大遅刻だ」
そうして教室へと向かっていった。




