二人の魔法で
--渚side--
「ここの食堂おいしいんだよね!」
そう言うナギは具材をこれでもかというほど盛り込んだサンドイッチ4切れと大盛りパスタとデザートのケーキを目の前にしている。
こんな量、コ〇ダでしか見たことないな…。
サンプルも置いてあったがどう見ても倍くらいある。
「量、すごいね」
「うん!それに安いからよく来るんだー。お昼食べてなかったからいくらでも入るよ!」
本当においしそうに食べている。
私の方は魚の定食があったのでそれを頼んでいる。
米の方はタイ米っぽく細長だ。
ちなみにこれもサンプルにあったが魚の数が2尾から4尾に増えている。
「ん、おいしい」
一口食べると脂がのっていて新鮮であることがわかる。
「でしょー!いっぱいサービスしてくれるからよく来るんだ!」
確かにこれならいくらでも食べれそうだ。
「でもお金、よかったの?どっちにしろ無一文だからお願いする予定だったけど」
「大丈夫!条件を満たせば学費も生活費も卒業まで出してくれるんだよ。まぁ使ったものとかちゃんと申請しなきゃいけないけど…」
「条件?」
「親がいないとかそういうの。私も親がいないから」
ナギは笑顔でこちらに顔を向ける。
「…え?」
さらっととんでもないことを聞いた気がする。
親がいない…。
自然と胸にあるペンダントに手が伸びる。
私もそうだ。
元の世界では親は交通事故で無くし、すべてを無くしたと感じて施設で過ごしていた。
宝物は母親が残したペンダント。
だから…。
「だから渚も申請すれば…」
「親がいないって…あ…いや…ごめん…」
思わず聞いてしまった。
「…いいの。お父さんはもう亡くなっていて、お母さんは物心ついたころから行方不明なんだ。最初はなんで私が?ってつらくて。天上の力で探してもらおうと思ったんだけど…」
「レオナ先生も言ってた。『天井の力』って何?」
「『天に上する力』。えーっと…アルカディア中の余った魔力を溜めてある魔術具の名称だよ。年に一度、学校の1番になると一度だけそれを使わせてもらえるんだ」
「それを使えば探せるの?」
少し間をおいて頷く。
「…うん。でも落ちこぼれのF組になっちゃったし、もう折り合いもつけちゃったから」
「…」
そう言うナギは少し寂しそうに眼をそらした。
「うぅ…食べ過ぎたぁ…。サンドイッチだけにしておけばよかった…」
「大丈夫?もう寮に帰って休む?」
背中をさすりながら声をかける。
「ううん!これからでしょ!生活に必要な物なんてがいっぱいあるんだから!」
ナギはそう言って手を引っ張る。
「あ、でも今走れないからゆっくり…」
「うん、わかった」
微笑むように笑いナギについていく。
そのあとは買い物三昧だった。
服や歯ブラシなどの生活必需品、勉強道具や家具までいろいろなものを見て回った。
ナギは常に笑いながら案内をしてくれた。
それにつられて私も口角が上がる。
まだこっちに来て1日も経っていないのにとても楽しい時間だった。
「ふぅ…買ったね!疲れたぁ!」
「うん、ありがとう」
日を見るともうすぐ夕暮れ時だ。
「そろそろ帰る?」
「そうだね。…あ!あと一か所だけ行ってもいい?ちょっと行きたい場所があるんだ!」
「?いいけど…」
そうして少し小走りでこちらの手を引っ張る。
…
「着いたよ!」
そこは学校の鐘がある屋上だった。
とても高いが小さな場所で、町が一望できる。
「うわ…」
夕焼けがゆっくりと沈んでいき、一日が終わるのを告げているようだ。
「驚いた?私のお気に入りの場所なんだ!」
「うん、すごく」
「なんでかわからないけど教えたいって思ったから!」
そう言いながらナギは町の方を眺める。
「…」
チラッとナギの横顔を見る。
なぜかはわからない。
目が覚めて最初に彼女を見た時、何かが始まる予感がした。
元の世界では親は交通事故で無くし、すべてを無くしたと感じて施設で過ごしていた。
宝物は母親が残したペンダント。
早く今が過ぎてほしい、そんなことを考えてずっと生きていた。
特に帰りたいとはになんて思わない。
だから…
「渚、元の世界に帰りたいよね?」
「え?」
「そのペンダント、初めて起きた時もそうだったけど気づいたら握ってるでしょ?」
「!!」
気づかれていた。
「私の…お母さんのものなんだ」
「そうなんだ…」
「…」
沈黙が続く。
ナギは難しい顔をしている。
私を元の世界に帰す方法を考えているんだろうか?。
黙っていちゃだめだ、私から境遇とか元の世界に帰るつもりはないって言うべきだろう。
「あの…」
「決めた!!」
急にナギは叫び出す。
「私、学校で一番を目指す!」
「え?」
「それで天上の力を使って渚を元の世界に帰してあげる!」
「いや私は…」
「私、渚のためなら頑張れる気がするんだ!だから私のためでもあるの!」
「!!」
私のためなら頑張れる…。
「でもナギ、Fクラスだって…」
「う…それは追々どうにか…」
「ふふ…」
「!…くくっ」
「「あはははははは!!」」
そうして二人の笑いが木霊する。
その笑い声はどこまでも遠くまで飛んでいくような気がした。
「そろそろ帰ろっか!」
そう言ってこちらを見ながら一歩下がる。
「あ、待って。その前に一つだけお願いがある」
「え、何?変なことは無理だよ?」
ナギは少し引いたような顔になった。
「魔法、見てみたい」
「魔法…?」
「うん、魔法。できる?」
「できるけど…うーん…。でもなぁ…」
「お願い」
まっすぐナギを見ると他意はないことは伝わったのかこちらを見返してくれた。
「…わかった。でも…笑わないでね?」
「もちろん」
杖を出し、夕日に向けてそれを差し出した。
「う~…。まだ…もうちょい…!」
そうして10秒ほどかけてゆっくりと杖の先が光っていく。
「アロ・フレア!」
そう唱えるとろうそくのような小さな火が杖の先に灯る。
何かを燃やすにも時間がかかりそうなとても小さな火だ。
「えへへ、小さいでしょ?そんなに長くできるわけでもないし」
しかし、そんな吹けばすぐに消えるような灯に私は魅入られてしまった。
「きれい…」
「えっ?」
夕焼けに灯されたそれはこれまで見たどんなものより価値のあるものに見えた。
その火を通してナギの目を見る。
ナギは私のためなら頑張れると言った。
そんなナギのために私は頑張りたいと思えた。
だから…!
「私も学校で一番を目指す」
「ええ!?でも」
「私一人じゃ無理だから…二人で」
「二人で…?」
「そう、二人で」
「…それいいね!!私達二人ならできるかも!いや、絶対できるよ!」
それで『天上の力』を使ってナギのお母さんを探すんだ!
二人のナギの魔法で!
私はそう決意した。
おまけ
その日の深夜にて
ナギ「反省文どうしよーー!!」
渚「申請書…眠い…」




