長い一日の終わり
あの緊迫した部屋から解放されるとレオナ先生とカミラ先生についてこいと言われてみんなで移動している。
そしていつもの調子という感じで二人で話していた。
「災難だったな、カミラ」
「―――!―――!」
「いやほんと早く言ってくださいよ。細かいこと知ってればもう少し話早かったのに。つか隊っていつの間に…大丈夫なんですか?」
「―――!―――!」
「すまんな、契約関連であちこち駆けまわっていて時間がなかったんだ。仮契約では効力がないからな。とはいえ授業ではなく飛行訓練はしていたんだろ?」
「―!―――――!」
「まぁそうですけど…って」
「――――――!」
口を閉じたまま叫んでいる私を見た。
「なんだ!うるせーぞ金髪ナギバカミスティアが!」
ひどい言い草!
「しゃべれないんやと思いますよ」
ソウマが助け船を出してくれた。
「―!―!」
「ん?あぁ、すまないナギ生徒。口を封じたままだったな。まぁ放っておいても効力は切れるんだが」
レオナ先生は杖を取り出し、こちらに向けて一度振った。
すると急に口が動くようになる。
「ぷはぁ!これ何なんですか!あの人たち何なんですか!?っていうか部隊って何ですか!渚はもう会えるんですよね!隊長とか大隊長って!?私達なんで捕まったんですか!」
「すげぇな、聞きたいこと片っ端から聞いてやがる」
「ナギちゃん~落ち着いて~」
「…」
まくしたてるように喋るとみんな少し引いている。
「えっ!なんで私引かれてるの!?絶対テオ君とかも騒ぐと思ってたのに!」
「俺を何だと…!いやもともとそのつもりだったんだが…」
「ナギちゃんの黙らされるやつみて日和ったんやろ?」
「え~?そうなの~?」
「ばっ!ちげぇよ!…ちげぇよ」
あ、日和ってそう。
「ふむ。何か心配しているようだが、懲罰の縛りが効くのは現在ナギ生徒だけだぞ。それに制限があるからそんなにポンポン使えん」
レオナ先生が説明する。
「私だけ?どういう…」
「その前に赤月生徒を迎えに行く。2度説明するのは面倒だからな」
「渚…!無事なんだよね!」
「無事に決まっている。…と、この部屋だ」
レオナ先生は1つの部屋の前で立ち止まる。
そのままガチャリと開けようするが思い留まってノックをした。
しばらくすると「どうぞ」という声が聞こえてきたので改めてドアを開けた。
「失礼する、赤月生徒は…何をやっている?」
「どういうことですか!?渚!大丈夫…えぇ?」
その部屋に渚はいた。
見張りと思われる男の人も3人ほど。
その3人と渚が懸命に紙のようなものを折っていた。
「あ、ナギ、みんな」
「レオナ大隊長!カミラ隊長まで!これは失礼を!」
見張りの3人は慌てて立ち上がり敬礼をする。
「いや、そのままでいいが…」
折っていた紙を見ると立体的なオブジェに仕上がっていた。
「え~すご~い」
「…面白い」
「鳥?これ翼やんな」
「こっちは膨らんでるぞ。どうやってんだ?」
みんなはワイワイと紙のオブジェを観察する。
「お前たち…いや、いい。赤月渚、説明を」
カミラ先生はあまり聞きたくなさそうに聞く。
「暇すぎて折り紙してた」
どこまでも渚ペースだった。
「もう!私がどれだけ心配したと思ってるの!?渚のバカ!」
先行してズンズンと進んでいく。
「あの、ごめんナギ。私も心配してたんだけど何もするなって言われて…」
「むー…」
「ナギちゃん、あんま怒ってあげんといたら?」
「そうだよ~?渚ちゃん~かわいそう~」
みんなが私をなだめてくる。
「でもこっちは大変だったんだよ?私ずっともどかしくしてたんだから!」
「まぁ気持ちはわかるけどよ、無事だったからいいんじゃねぇか?反省してんだろ?渚」
「…?」
渚がテオの方を見る。
「なんだよ?」
「テオが怒らないの意外。どうしたの?」
「おい、前言撤回だ。一回痛い目見とけ」
「あ、ごめん。そんなつもりなかった」
「…もしかして…理由…あった?」
それまでずっと考えこんでいたイリスがしゃべりだす。
「イリス君?えと、理由って?」
「…折り紙?っていうの…してた」
渚を見ると少し驚いた顔をしている。
「…一応。仲良くなって内側から情報を得ようとしてた。その過程で見張りの人も一緒にやるのに成功した」
「あ…う、渚…。そうだったんだ、そうとは知らず…ごめん」
「ただ、熱くなりすぎて折り紙メインになってた」
「渚―!」
「もういいだろうがお前ら」
カミラ先生に首根っこをむんずとつかまれる。
「あう…でも…」
「でもじゃねえ。いろいろあって気が立ってんだよ。私がキレる前に謝っとけ」
「う…はい。ごめん渚」
「ううん、私も」
素直に謝ると、つかんでいた手を離してくれた。
「…もう外は暗くなり始めてんな。説明は後日でいいんじゃないすか?先輩」
「カミラ、私のことは先生と呼べと言っただろう」
「あ、すんません、つい。どっちにしろ今日は私も血が足りないんで食って寝たいす」
「あぁそうか、一戦やり合ったんだったな」
…よくよく考えるとこの先生、なんで首をかじられて平気で過ごしてるんだろう?
噛まれたの頸動脈っぽいところだったような…。
「あ?どうした?」
「い、いえ!なんでも!」
チラッと見ただけなのに!
「そういえばカミラ、F組生徒。お前らは昼も食べてないんだよな」
「あぁ、そういえばそうっすね。ここの連中も食べ物くらい出してくれればよかったんすけど」
「おなかすいた~」
「動きっぱなしやしなぁ」
レオナ先生の言葉で思い出してしまい、急に力が抜けてくる。
「だったら私がおごってやる、どこがいい?」
「え!?ほんとですか先生!」
突然のおごりに目を輝かせる。
「おご…り…!」
「お~!やった~!」
「太っ腹や!僕らめっちゃ食べますよ!」
「俺肉!肉がいい!」
「テオ、病み上がりじゃないの?」
「いいんだよ!肉食えば治んだよ!」
「先輩やりますねー!じゃあお言葉に甘えます」
「よし、じゃあついてこい!」
「「「はい!」」」
そうして長い1日が終わっていった。
この先世界を賭けて戦っていくことを知らずに。
二章完
読者「え!?世界を賭けて!?」
作者「え!?世界を賭けて!?」
こんな気分です。




