大人の交渉
渚と…もう会えない?
「そんな…そんなこと…」
「おい何言ってんだジジイ!渚と会えねぇって…んなもん認められるわけねぇだろ!」
テオが飛び出しそうな勢いだ。
「はぁ…次から次へと。このようなやり取りをするためにいるのではないのだがね」
ため息をつきながらゲオルグ会長は私たちを見る。
「渚ちゃんは~仲間~」
「認められ…ない…」
「認めなくてもこれは決定だ。君たちの許可は必要ない」
「決定?許可って…」
何を言っているのかわからない。
「だとしてもおかしいんとちゃう?少なくとも渚ちゃん本人が納得しな成立せぇへん事象やろ?」
「そ、そうです!渚が納得するなんてこと絶対ありません!急にそんなこと言われても渚も困ります!」
ソウマに続いて反論するが首を横に振る。
「君たちに詳細を説明して納得させるつもりはない。いずれにせよそれに彼女と関わり合いにならなくなれば今回のようなトラブルもなくなる。君たちもその方がよかろう」
「いいわけねぇだろ!渚は…」
「待て!」
飛び出そうとするテオを先生が止める。
「なっ!止めるなよ!!」
「事態を悪化させるな、交渉もできなくなる」
「…クソッ」
テオを落ち着かせてゆっくりと離す。
「…本人たちの意見を尊重しろ、横からしゃしゃり出てくるな。この件に関しては私達でどうにかする」
「私に襲い掛かろうとするほどの問題児がいる場所に任せろと?それも今回失敗した君がそれを言うのかね?その慢心が奴らを呼び寄せたのではないのかね?」
「…」
「そのような様なのだから不覚を取り、全体に応援要請することとなるのだ」
「わかっている。だからこそ…」
「もういい、議論はこれまでとする。そもそも君は呼ばれていないはずだ。調査へ戻るように。つまみ出せ」
後ろに立っていた騎士のような人たちがこちらに来て先生を連れて行こうとする。
「先生!」
「おい待っ…」
その時、会議室の扉ががらりと開く。
「失礼する」
「次から次へと…。なんだね、今は大事な…レオナ大隊長ではないか」
顔をのぞかせたのはレオナ先生だった。
「レオナ先生!なんでここに!?」
先生は私たちを見渡してホッと息を吐いた。
「間に合ったか。どうにかしてやるから安心しろ」
「えっ?」
カミラ先生のところへ行く。
「カミラ、ちゃんと時間を稼いでくれたようだな」
「…すんません、できれば私だけでどうにかしたかったんですけど」
「いや、こればかりはな。早急に準備をしていて助かった」
ゲオルグ会長怪訝そうな目で先生を見た。
「レオナ大隊長、なぜここへ?できれば今はご遠慮いただきたいのだが」
しかしレオナ先生は落ち着きながら会長を見返す。
「会合ぶりです、ゲオルグ会長。何度も言っているように今は先生です。現在あなたが行っていることが問題行動になると思いこちらに参上しました」
「問題行動?なにかね?」
「ええ、我々の部隊の引き抜きを行おうとしているようで。これは違反行為ではないですか?」
「引き抜き?何を言っている」
「おや、違うのですか?F組は現在私の部隊です。体を張って護衛任務を達成した彼らに感嘆して拘束をしたのかと」
「君の部隊?感嘆?そんなわけなかろう。それに私達は彼らに話を聞こうとしているだけだ。とやかく言われる筋合いはないと思われるが」
…レオナ先生は何を言っているんだろう?
「せ、先生…?何を…」
「発言は許していないぞ、ナギ・ミスティア二等兵!」
「むぐっ!」
レオナ先生が一喝すると、突然目の前に魔方陣のようなものが現れて口が開かなくなる。
「どうしたんや!」「ナギ!?」「ナギちゃん~?」「…!」
私はもちろん、他のみんなも驚いていたが一番驚いていたのはゲオルグ会長だった。
「これは…懲罰の!」
「私の部隊ということが認識いただけましたか?少々強引な手段を取ってしまいましたがこちらが証拠です」
少し考えたあとゲオルグ会長は頷く。
「…なるほど、失礼した。確かにただの生徒ではないようだ」
「しかし、引き抜きではないとなると、さらに問題ですね」
「問題とは?」
「ええ。上司である私に真っ先に報告するべきと判断した情報をあなた方は拘束して聞き出そうとしていた。そのうえでそちらの判断で存在を隠そうとした。これはいけない」
「しかしそれは知らなかったからで」
「それは言い訳としては通りません。まずはあなた方は所属を調べるべきでした。それを行わず拘束とはこちらも安心できません」
「…なるほど、いい手だ」
少し笑いながらゲオルグ会長はレオナ先生を見る。
「だとしても赤月渚は別ではないかね?いくら君の部隊とはいえ彼女は特殊だろう。保護が必須だと思うが」
「赤月渚はこちらの生徒として受理、さらに本人のサインで我がアルカディアの保護契約にサインももらっている。契約もないのに勝手な拘束は困ります」
「何?」
「契約の書類はこちらです」
そう言ってレオナ先生はゲオルグ会長へ1枚の紙を手渡した。
「…確かに」
「ご理解いただけましたか?」
「…いや、まだだ。その保護は充分ではないのではないか?そのような自由な保護では安心できない」
「なるほど、しかし今回の場合は安全と定められた訓練場の範囲のはずです。今回それが崩れたわけですが、我々アルカディア含め3つの団体で保障のサインがされています」
「しかし」
「ゲオルグ会長、その場所はあなたのサインも書いてあるのですよ」
「…」
無言の時間が続いたあと、レオナ先生は指を一つ立てた。
「飛行訓練のために安全と定められた訓練場で行っていたところ、部隊は敵に襲われた。急遽赤月渚護衛任務を開始し、応援を呼びつつ敵を撃退。追い払った後、あなた方は部隊の保護と治療を行い、我々が迎えに来るのを待っていた。いかがでしょう?」
先生は目を細めてゲオルグ会長を見る。
「…私の負けだ。全てレオナ大隊長の…いや、レオナ先生の言う通りにしよう。3階の元君の部屋にいる、赤月渚は連れていけ」
ため息をつきながらゲオルグ会長は少し笑った。




