狂気の幕引き
突然拘束が解かれ、唖然としている私達。
泥の中で倒れているネメシウス。
そして、そのネメシウスに杖を向けてにらんでいる先生。
…助けに?本当に?あの傷で?どうやって?
いろいろな疑問が出てくる。
「ほんとに…先生?」
ナギがつぶやくように口を開くと、
「あぁ、しつけぇな。んなことより早く逃げろっつっただろ。中途半端に立ち向かってんじゃねぇ」
この悪態の付き方はカミラ先生だ。
やっぱり生きていた!
「あの時、首を噛み切ったと思いましたが?」
ネメシウスは立ちあがりながら言う。
「鍛え方が違うんでな。毒まで仕込みやがって…気分最悪だぞお前」
「つまり逃げ切ったというわけですか」
「つーか殺した。不意を突かれるわ時間かかるわで最悪だ。絶対レオナ先輩に怒られるわ。どうしてくれる」
「殺した…?そんなはずはありません。何度か確認をしましたがここへ戻ってくる反応がありました」
「あぁ、こいつだろ。アロ・フロート」
そう唱えると上から何かボールのようなものが落ちてきた。
「あなた…」
それは狼の首、カミラ先生を襲った狼だった。
「魔力による干渉で連絡を取ると思って逆利用させてもらった。重かったがしっかりとお前の居場所を道案内してくれたよ」
「!!…あぁ…私が…私の…」
それを聞いた瞬間、だらりと首と手の力を抜いてブツブツとつぶやき始める。
「んだこいつ、気持ちわりぃな」
「せ、先生、テオ君があかん!そんなに持ちそうにない」
ソウマが焦りながら叫ぶ。
「あぁ、わかってる。こいつを傷口にぶっかけとけ、死んでなかったらどうにでもなる」
そう言って小さな小瓶をソウマの方に投げた。
「これは…」
「傷薬みたいなもんだ。早くしろ、死ぬぞ」
「!」
言われた通り焦りながら中身をテオにかけるとジュワアァという音がなり、傷口が塞がっていく。
「傷が…」
「応援は呼んであるからそこから一歩も動くなよ」
「え?」
「それでこっちも…5分で済ます」
カミラ先生は脱力状態のネメシウスへ突っ込んでいく。
そして泥の中に入り、杖を思いっきり振りかぶって横振りする。
「!」
ネメシウスは避けるそぶりもなくボキッという音が鳴って吹き飛んでいった。
「う…」
倒れている姿を見ると腕が完全に折れてあらぬ方向へ曲がっていた。
「お前もうちょっとなにかやるそぶり見せろよ。罠張りまくって突っ込んでいった私がバカみたいじゃねぇか」
先生はそう言うとネメシウスがゆっくりと顔をあげて起き上がる。
「あぁ…あ…!」
「あ?なにを…」
「そんなことはどうでもいいのです!私は悲しんでいます!このような横暴が許されていいのか!彼らは私の友であり、世界を救う仲間でもありました!それをあなたが!あなたが殺して滅ぼしの一歩へ近づけさせました!そう、これは許されてはいけない行為なのです!」
「何言ってっかわかんねぇよ!」
もう一度振りかぶろうとした瞬間、ネメシウスの包帯がカミラ先生を襲う。
「先生!」
「レクト・フレア」
即座に魔法を唱えて下がり、襲ってくる包帯を焼き尽くした。
「私の包帯を…!」
「フロート魔法の一種だな。強引な使い方しやがって、バカみたいに魔力食うだろ」
「…」
「なんだよ、ショックだったのか?ボロボロできたねぇから買い替えた方がいいぞ」
「…いいえ、そろそろ時間のようです」
さっきまでの激昂などなかったかのように無表情になる。
「あ?時間だぁ?」
「私にとっても心苦しいですが、今まさにひずみが閉じようとしている、行かなければなりません」
「やっぱりお前…。そんなことを聞いて行かせると思うか?」
「いいえ、行かせるしかないはずです。この場にいる死にかけの者をあなたは放っておけないのでは?」
「……」
「私もあなたと殺り合いたいのはやまやまなのですが応援も来るようですしね。これ以上は引いた方が賢明でしょう」
そう言いながらネメシウスはゴキゴキと折れた腕を強引に元の方向へ戻す。
「急にまともなこと言いやがって。腕戻しながら言うんじゃねぇよ、ちっとは痛がりやがれ」
意も返さずネメシウスは両手を広げて宣言する。
「カミラ、あなたは私の傷に賭けて必ず殺します。ええ、必ず」
「ちっ」
「ここにいる皆さんも同様です。無益な殺生は好みませんが、障害となる以上仕方ありません」
その言葉に私達は動けなくなる。
「そして最後に、渚と言いましたね。あなたは必ずお迎えに上がります。それまでは死なないよう重々お気を付けを」
「っ…!」
「それでは皆さま、お元気で」
ネメシウスは服の中に仕込んでいたのか大量の手りゅう弾を足元に投下した。
「先生!爆発!」
「っ!クソが!」
私が叫ぶと先生は手を前にする。
「レクト・シールド!」
同時に爆発が起こり、この場一帯に轟音が鳴り響いた。




