ネメシウスの問い
パチパチと一人の男の拍手が鳴り響く。
ネメシウス・キリシル。
ボロボロの包帯を全身に巻いていてどんな顔をしているのかさえわからない。
「素晴らしい。実に素晴らしい!落下地点から探してみれば全員が無傷ではありませんか!これほど優秀とは思いもしませんでした。まずは弱い魔法を使ってしまった謝罪を」
丁寧に礼をし始める。
「なんで…私たちを?」
私が尋ねるとネメシウスは目を見開いて両手をあげる。
「なぜ!なぜといいますか!あなたが!あなた自身が!それを知っているのはあなたではありませんか?私はそれを追ってきただけなのですから」
「わっけわかんねぇよ!渚が何を知ってるっつーんだよ!知るわけねぇだろが!」
「そう~あなたが急に襲ってきた~」
「いえ、いえいえいえいえいえいえいえ。根拠はあるのですよ。ひずみが起こった場所へ向かっていると忌々しい覚えのある魔力反応。そしてこの世界ではありえない属性の残滓。何より…これを知っていました」
懐から取り出してきたのは拳銃だった。
「そんなわけわからんの知ってるからなんなん?たまたまかもしれんやん。そんなん雑貨屋とかでよく見んで」
「いいえ、知っていることが重要なのです。たとえ人づてでも!これを知っている!この世界にあるはずのないものが!」
「―っ!」
「…この…世界に?」
私に注目が集まる。
「渚…」
「ええ!遠回りな言い方はやめておきましょう!つまりこういうことが言いたいのです。あなた…本当にこの世界の住人ですか?」
「…」
言葉を発することができない。
不気味なほどに口角をあげて笑いながら発する言葉が気持ち悪くてしょうがない。
「お、おいおい、何言いだすんだこのバカ。何とか言い返してやれよ渚」
「…」
「おい…渚?」「渚ちゃん~?」
何も言うことができない。
「何をためらうのです?利害があれば私たちは世界の救世主となれることも意味しているのですよ!」
「き、救世主…?」
意味が分からない。
「目的…は?それと私の出所を言ったとして、安全の保障を」
「安全!安全と言いましたか!?この世界に安全な場所などありません!すべて消え去るのです!それが早いか遅いかの違いなのです!安心してください、私もそこへ向かうのですから」
ニヤニヤと笑いながら拳銃を私に向けだした。
「!!」
「さあ!さあさあさあさあ!!」
「待った。よく見たら僕もそれ、知ってるで」
ソウマが手をあげ、拳銃を指さす。
「…はい?あなたが?」
「せや。それな…骨董屋で銅貨1枚で売ってたわ」
「!」
目を見開き、銃口をソウマに向けようとしたとき、
「今や!」
ソウマは合図する。
「アロ・ウォーターショット!」
「アロ・サンダー」
左右からミーネとイリスが杖を構えて魔法を唱える。
「…」
しかしネメシウスは右手を伸ばしたかと思うと何もなかったかのようにいなされる。
「ファイアナックル!」
その動作の直後、すぐさまテオが追撃を行う。
「しょうがありませんね」
ドゴォ!という音が鳴り響く。
見るとネメシウスは回避行動さえとらず顔面にその攻撃を受けていた。
「なっ…!」
「私を攻撃するのであれば最低限この程度はほしいですね」
「あかん!テオ君、離れ…!」
ソウマの声が届く前にネメシウスはテオの腹に蹴りを入れた。
「ぐっ…おぉ!!」
テオは10メートルは吹き飛び、血を吐きながら倒れた。
「テオ君!」
「テオ!」
私とソウマが駆け寄るが完全に気を失っている。
蹴られた場所は焦げたようにえぐれている。
「こんなの…!」
「アロ・ウォーターショット!ショット!」
「アロ・サンダー!」
ミーネとイリスが攻撃を続ける。
「諦めが悪いことはよいことです。実力が伴っていればですが」
ネメシウスは左手を前に出すと魔法で出した水の弾や雷が急に消失した。
「っ!私の魔法~!」
「なん…で…?」
「そうですね、ではこうしましょう。アロ・ウォーターサンダーショット」
雷を帯びた水の弾がミーネとイリスを撃ちぬいた。
「あうっ!」
「…!」
二人は倒れ、撃ちぬかれた場所から血が流れる。
「これで残りはあなた方だけですね。そうですね、素晴らしくも私を騙したあなたから…」
ソウマを指さした瞬間、
「うぅ…!もうやめてぇぇー!!アスレクト・アース!」
ナギは杖を構え、唱えた。
すると地面から泥が形成され、波となってネメシウスへと襲い掛かる。
「これは…!」
ズズン!と地震のような音が鳴り響き、この場一帯を泥で埋め尽くしていった。




