底からの移動
~渚side~
「そろそろ…動ける」
イリスはそう言うとゆっくりと立ち上がった。
「おい、大丈夫なのかよ、その姿で」
テオの言う通りイリスは女性の姿のままで男には戻っていない。
「平気…。早く助けを…呼んだ方がいい…」
「でも…」
ぐうぅぅ…
と、どこからか音がした。
音がした方向を見るとナギが顔を真っ赤にしていた。
「ナギ」
「やめて、聞かないで!どこも鳴ってないから!」
「…」
あぁ、そろそろ昼を超えたころだろうか。
巣穴から外を見ると太陽が真上に来て日が照っている。
「せやね。僕もお腹空いたわ、はよ帰って先生も助けてごはん食べよ」
「さんせ~」
「急に緊張感なくなったな」
「うぅ…」
そうして私たちは移動することとなった。
「どっち行く?」
外に出て道を確認する。
前と後ろの2択で光景はほぼ変わらず岩だらけの場所だ。
「誰か道がわかるやつは…いねぇよな」
「どっちでも変わらんて。せやな…じゃあミーネちゃん、お願い」
「わかった~」
その言葉だけでわかったのか、ミーネが急に杖を地面に立てて手をはなした。
カランと倒れて杖の先の方向を見る。
「こっちが正解~」
「あ、懐かしー。私も子供のころよくやったよ。杖をこうやって…っと危ない!また割れたら冗談にもならないよね」
ナギが杖を取り出して一人であたふたとやっている。
「ナギ、意外とわんぱく?」
「わんぱくって何?普通だよぉ」
「いらねぇことやってんじゃねぇよ、早く行くぞ」
見るとみんなはすでに先へ進んでいた。
「あ、待ってー!」
「…どの世界でもそういうの、やるんだ」
そうつぶやいて私も歩き出した。
…
歩き続けて10分。
景色は一向に変わらず岩の壁と道が続いている。
「私の棒頼み~、失敗だった~?」
「反対行っても同じやと思うで。まぁ飛べそうなもんもないのは予想外やったけど」
何かないかは一応確認しているが目新しいものは何もない。
「見つけても飛んで大丈夫なのかな?またあいつが…。先生、無事…なんだよね?」
また思い出してしまったのかナギは顔を曇らせた。
「問題ない。先生があれでやられるわけない」
「でも…」
慰めてはいるが心配が勝つようで顔は晴れない。
「だーもう!何回言やいいんだ!無事っつってんだろうが!ナギ、俺に勝った女がそんな女々しくてどうすんだよ!」
「だってー…」
テオの言葉にナギは小さくなる。
「あかんてテオ君。ただ心配してるだけやろ?また泣かせるんか?」
「ぐ…」
何も言い返せないようだ。
「心配いらない…。多分…無事。落ちる直前…念話が来た」
「は?」
「えっ」
イリスの言葉にみんなが固まった。
「『すぐ戻る、逃げろ』って。気が付いたら…みんなを逃がそうと…体が動いて…」
「…」
「はぁ…イリス、お前なんでそれ早く言わねぇんだよ」
「ごめん…。言うタイミング…逃して…。それにしゃべりすぎて…休憩が…」
ここまで多く喋ることがないのかイリスは深呼吸しだした。
「お前のせいでナギがいらねぇ心配をなぁ!」
と続ける途中でソウマが手で止める。
「ま、ええやん!みんな無事やったし。それもこれもみーんなイリス君の手柄やし」
「う…まぁそりゃあそうだが…」
「え~?ソウマ君も~飛ばされた時~風魔法で~」
「おっとミーネちゃん、それはあかん」
「もぐ~」
ソウマがミーネの口を手でふさいだ。
「どうしたの?何かやったの?」
私が聞くとソウマはバツの悪い顔で口を開いた。
「あー…先生がやってたんを見よう見まねですぐそこにいたナギちゃんとテオ君にかけただけや。落下するときに風魔法かけて下に落ちる衝撃をやわらげてん」
「そうだったのか…ソウマも助かった」
「あ、ありがとう、ソウマ君…」
礼を言うと神妙にしていたソウマはパッと顔を笑顔に変える。
「いやー!ほんまうまくいってよかったわ。ちょっと失敗して二人が吹き飛ばされていったのは内緒な」
「うおおい!!いい話だったろうが!つか俺とナギだけ離れた場所にいたのお前のせいかよ!」
「え?あれ?だとするとソウマ君たちはどうやって落下の衝撃を…」
「は~い!私が水魔法~、下に向けて撃った~」
ミーネが手をあげる。
「あれ助かったわー。渚ちゃんも気失ってるみたいやったしもうダメやと思ってんから」
「そうだったんだ、ありがとうミーネ」
「どういたしまして~」
「ふふ~ん♪」
「ソウマお前…助かったのは事実だからなんも言えねぇ…」
テオは出した拳の場所が見つからないといった具合に力を入れている。
「ま!とにかく先生も無事やろうって」
その時、声が聞こえた。
「おや、ようやく見つけましたよ」
「!?」
一番聞きたくなかった声がその場を支配した。
1章、寝不足
2章、空腹
デバフが…。




