修理屋
--ナギside--
「値段も予算内だったし、良さそうなのがあってよかったね渚!」
「うん」
現在無事に杖を買った渚とともに修理屋へと向かう最中である。
「それに全属性だよ!?店主さんですら見たことないって言ってた!これなら天上の力の目的もあっさり達成できちゃったりして!…渚?」
私がはしゃぎながら話していると渚は少しうつむいて立ち止まる。
「ナギ。全属性のこと、あまり言わない方がいいかも」
「え…なんで?」
「たまたま全属性、話が出来過ぎてる。異世界から来たの、関係してるかも」
「えー?そうなのかな?渚がすごいっていうだけでそんな変なことでもないと思うんだけど」
「もしそうだとしても用心必要。全属性って知った時の店主の目、危機感覚えた」
渚の目は真剣そのものだ。
「…そっか、わかった。誰にも言わないようにする」
「ありがとう」
渚が再度歩き出したので私もそれに続いた。
「あーあ、それにしても残念だなぁ」
「残念?」
「みんなに渚を自慢をすることできないんだもん。こんなの知ったらご近所でも噂になっちゃうかもしれないから!」
「じま…ふふっ。ナギは私のお母さんなの?それに私のすごさ、町内レベルなんだ」
「あははっ」
渚が笑い、私も笑った。
そんなやり取りをしながら修理屋へと向かった。
「こんにちはー!」
杖の店主から教えて貰った修理屋の場所へ行くとそこは店というより作業場のような場所だった。
細かな作業をする作業台や隅に溶鉱炉のようなものも見える。
声に反応したのか奥から30代くらいの男の人が出てきた。
「なんだ?今日はもうしまいだ。新規の依頼なら明日にしてくれ」
身長が一頭身くらい高く顔がかなり怖い。
「大きい…じゃなくて杖を直してほしいんです。杖屋の店主からお話が言っているかと思うんですけど…」
「あ?杖屋?そういえばじじいから連絡あったな。あんたらがそうか」
「は、はい。おそらく…」
鋭い目を細めて詰め寄ってくるので体を縮めてしまう。
「まぁいいか。杖、見せてみろ」
「はい」
壊れた杖を取り出して渡すと割れた断面を観察した。
「こいつか。あーあーこんな上等なもんを雑に使いやがって。完全に割れてんじゃねぇか」
「すみません…」
思わず謝ってしまう。
「直せる?できれば直したい」
ナギが聞く。
「どの程度直す?」
「できれば完全に」
「…大負けにして金貨3枚。期間は3ヶ月だ」
「っ!」
杖屋の店主さんが言ってた金額よりかなり高く、そして長い。
そんなの…。
「そんなに…払えないです」
思ってた通りやっぱりそうだ。
さっきの杖屋で新しいのを買っておけばよかった。
「だろうな、金持ってるやつに見えねぇ」
「じゃあ大銀貨1枚に負けて。納期も3日で」
「えぇ!?渚!?」
「バカ言え、俺が破産しちまうわ。無理に決まってんだろ」
「じゃあ5枚」
「渚、もういいよ、大丈夫だから。すみません、無理言って。依頼はキャンセルで」
そう言って私は手を出すが強面の店主は目を細めて私を見る。
「早まるな、こんないい杖めったにお目にかかれねぇんだ。完全には無理だが俺にかかりゃ…」
その時また奥から声がした。
「親父、今日はもう店じまいじゃ…」
「「あ」」
見覚えのある顔がこちらを見ていた。
「ってめぇら!」
クラスメイトのテオがここにいた。
「テオ君!なんでここに!?」
「俺の家だからだよ!おめぇらこそなんで…!」
「私たちは杖を直しに…」
「テオの知り合いか?ガールフレンドか?やるなこいつ」
「ちげぇよバカ親父が!ちげぇ!」
「えと、クラスメイ…」
「姉貴分です。ナギの舎弟」
「それもちげぇわ!」
渚がとんでも発言を言う。
「なんだガッコの友達なら早く言えよ!じじいの客だと思って身構えちまったじゃねぇか。茶飲むか?こいつ普段どんな感じだよ。姉貴分って言ったな、タイマン張ってボコボコにしたのか?」
「やめろ聞くな本人の前で!ボコボコにもされてねぇわアホ親父が!」
「誰にでも吠えてる。ナギに敵対意識して返り討ち」
「お前も馬鹿正直に答えなくていいわ!」
「お父さんと身長は似なかったんだね…あっ!ごめん!」
「お前は絶対喧嘩売ってるだろ!」
つい巻き込まれて口に出しちゃった。
「はぁはぁ…で、杖を直しに来たんだろ、俺にかまうな」
「楽しかった」
渚は手をピースにしている。
「あぁ、さっきの続きだが、大銀貨5枚で直す方法はある」
「えっ!?」
「まぁ完全に元の状態というわけじゃないがな。それに実際に直すのは俺じゃねぇ」
「どういうことですか?」
「簡単に言やぁただくっつけてあんた自身の魔力で修繕するってことだ」
「私自身の…?」
「あぁ、時間はかかるし使い心地は元の状態から変わるだろうがな。あんまり知られてねぇがこういうたけぇ杖にはたまに使う技だ」
「…」
確かにそれがいいかもしれない。
大銀貨5枚は予算オーバーではあるけど元の値段を考えれば破格だ。
「はい、じゃあそれで…」
その時、バン!と机をたたく音がした。
「待った。気に入らない点、ある」
渚は作業台を叩いてストップをかけたのだ。
「渚?」
「あ?なんだ?もうこれ以上の提案はねぇぞ。それか完全に直す方に移行したいのか?杖が泣くぞ」
ずいっと渚の方を詰め寄り睨んでいてとても怖い。
しかし渚は引かない。
「そうじゃない、そういうことじゃない」
「じゃなんだ?言ってみろ。俺の提案の何が気に入らないって?」
「大銀貨3枚にならない?」
「は?」
目を丸くして聞き返す。
「予算オーバー。3枚がダメなら…4枚!」
「く…はははっ!俺にビビらずそうまで値段交渉するとはな。いいだろう、気に入った。テオの姉貴分価格だ、大銀貨1枚でやってやる」
「ええぇ!?5枚払いますって!」
そんなめちゃくちゃな割引させるわけには…!
「テオ君!」
助けを求めにテオを見るが首を横に振る。
「親父がこうなったらもう無理だ、値段が下がったんなら受けとけ」
「そうだ!店主の俺が言ってんだからな!完璧に仕上げとくから期待して待ってな」
渚の方を見るとまた手をピースにしてこっちを見ていた。
「渚すごすぎだよ…」
今日一日で思った、私はとんでもない友達を持ってしまったのかもしれない。
帰り道、渚と二人で帰っていると後ろから声が聞こえた。
「おいちょっと待て!」
振り返るとテオがそこにいた。
「どうしたの?ナギに告白?」
「そうなの!?でもごめんなさい!」
「あ~あ…テオ、傷ついた」
「あ!ちが…そうじゃなくて!」
私が慌てているとテオは呆れたような顔でこっちを見ていた。
「ちげぇよ、俺まだ何も言ってねぇだろうが。…あー、なんつーか、明日は学校来るんだよな」
「?うん、行くけど…どうしたの?」
何かごにょごにょとしてて言いにくそうだ
「ドラゴンと戦ったって聞いたからな。一応心配っつーか…どんなだったか聞かせてほしいっつーか…」
少し顔が赤い。
心配しててくれたんだ。
「うん、わかった。明日みんなに話すよ」
「そ、そうか!」
「ナギの活躍しかと聞くがいい」
「なんでお前は…いや、なんでもねぇ。楽しみにしてるぞ、ナギ、渚」
「!!」
初めて名前で呼んでくれた。
「また明日、テオ君!」
「じゃあ、テオ」
「あぁ」
そうして後ろを向いて去っていく。
ふとテオが立ち止まった。
「あぁそうだ!明日飛行訓練だそうだぞ。箒忘れたらボロボロの備品で飛んでもらうだと!」
「え…」
そういえば私、前の試験で箒をダメにしてたような。
それに渚もまだ…。
「あああぁぁぁ!!!忘れてたぁ!!」
明日も私たちは大変そうです。
おまけ
お金の価値イメージこんな感じです。
銅貨 = 10円
大銅貨 = 100円
銀貨 = 1000円
大銀貨 = 10000円
小金貨 = 100000円
金貨 = 1000000円
大金貨 = 10000000円




