魔法と属性
--渚side--
「修理…ですか」
私の真剣な眼差しに店主は目を細める。
「な、なに言ってるの渚!?杖だって消耗品だよ。それに直せたってとんでもない金額がかかる」
「お金は私がどうにかする。私が壊したから。それにこんな高い杖、10年やそこらでダメになると思えない。ですよね店主さん」
店主は少し考えながら答える。
「…そうですな、手入れをしていれば100年は持つ代物です」
「ですよね、だったら直すべき」
「しかし、完全に割れてしまった杖を直すのに相応のお金もかかるのも事実です。おそらく金貨1枚か2枚か…」
「…」
その言葉に押し黙る。
さっきのナギの言葉を聞いた感じ金貨1枚は100万円ほどだろう、それでもどうにかはしてあげたい。
「私はいいの。こんな高い杖を使ってるっていうのも気づかなかったし」
「でもナギはこれを使ってた。不自由させたくない。お金は何とかする」
「そんなのダメだよ!私の杖なんだから私が我慢すればいいだけで…」
そんな言い合いをしている私たちを見かねてか店主が口を開いた。
「お二方、ひとまず私がごひいきにさせていただいている修理屋を訪ねてみるのはいかがでしょうか?」
「修理屋?」
ナギが聞く。
「はい、こちらを直すのにわたくしでは判断がつきません。ですので修理屋に見せてからの判断でも遅くはないかと。可能な限り低価格でとわたくしから口添えをさせていただきますので」
「え…でもいいんですか?」
「もちろんです。わたくしとしてもこのようなよい杖を諦めるのは忍びない。払えなくともせめて考えるくらいはしてあげた方が杖も喜びます」
「う…わかりました…」
折れてくれたようだ、よかった。
「絶対に直します」
「やめてね!?だとしても私が払うからね!」
「強情」
「渚に言われたくないよ!」
何を言っているかわからない。
「では、連絡をしておきますので後ほどお向かいください」
「ありがとうございます。このあと向かいます。あ、それと渚の分の杖も欲しいんですけど…」
店主とナギは私を見る。
「そうでしたな。お嬢さんは杖は初めてとのことでしたが…珍しい。杖を持っていない方など少なくともこのアルカディアでは見たことございませんでした」
「あ、えと!それはその!」
「遠くの田舎から最近引っ越してきた。その場所、魔法使わず暮らしてた」
「えっ」
ナギがボロを出す前に設定を並べる。
「ほう、それはそれは」
「私にとって魔法を使ってることの方が珍しい」
「では魔物もいないさぞ平和な場所なのでしょうな」
「そう、平和」
追及されるのが面倒だったので記憶喪失設定をやめて田舎育ちにしたけど思った以上にすらすらと嘘が出てきた。
ナギはあんぐりと口を開けている。
「そうなると属性も…。少しついてきていただけますかな?」
「わかりました。ナギ、行くよ」
「うぇあ!?う、うん、行く!」
そうして店主に連れられて店の奥へ向かう。
連れられた場所には一つの道具が置いてあった。
その道具は真ん中に小さな穴が開いていて、花のように6股に分かれたパレットが周りについている。
「これは自然に放出される魔力の属性を調べる道具です。中央の穴に指を入れると得意な属性と魔力量を調べることができます。このように」
店主が穴に指を入れるとパレットに液体が流れ始め、そのうちの2か所がゆっくりと色が変化し始める。
「緑と若干青が濃く現れているでしょう?これは風と水属性の適正があることを現しております」
「すごい…。ここに現れないと他の属性は使えない?」
「いいえ、そんなことはございません。中級程度であれば苦労はあるでしょうが使用することは可能です。どうぞお試しを」
そうして穴から指を抜くと液体が引いていった。
「…」
少し指を入れるのに躊躇してしまう。
「心配することはございません。人であれば必ず1つは適性がございます。それに先ほどの割れた杖で魔法を出したのはあなたのようですし素質も十分とお見受けしますので」
「…じゃあ」
その言葉を聞いてゆっくりと指を入れていく。
液体が流れ始めパレットが光り出した。
「これは…!」
赤、青、緑、茶、黄、白とすべての箇所に濃い色がつきだした。
「全…属性?」
信じられないような顔で店主は私を見る。
「すごいよ渚!これ、珍しいことなんですよね!」
「え、ええ。まさか全属性とは…初めて見ました。魔力量もかなり多く、それにまだ濃くなっている。これほどの持ち主がこの世で存在するとは…いえ、あり得るのでしょうか?」
それを聞いてサッと指を抜いた。
「お嬢さん、あなたは一体…」
私は冷や汗をかきながら一歩下がると、
「はい!じゃあ次、私やって見てもいいですか!?」
ナギが笑顔で手をあげた。
「失礼しました。どうぞお試しください」
店主は切り替えて笑顔で対応する。
助かった…。
「ありがとうございます!何が出るかなぁ!」
お構いなしにナギは指を入れるとまた液体が出てくる。
「渚みたいに全属性は無理でも二つくらい…え…?」
液体は1つのパレットに集約していき、真っ黒に染まっていった。
「これはまた…初めて見ますな」
「え!?あの…真っ黒だけど私大丈夫なんですか!?それに液体がここに全部行っちゃいましたけど!」
「うーむ…魔力に不純物が多いのでしょうか。しかしこの位置は…おそらく土属性に適正があると思われます。吸収液も傾くほどですと他の属性は初級もギリギリかと」
店主は眼鏡を触りながら観察して言う。
「不純物って…しかも土以外からっきしなんですか!?」
「ええ、しかし土の才能は確かにございます。」
「そうなんですか…」
思ったより落ち込んでいるようだ。
「あの、ナギ…」
「うぅ、忘れてたけど初等部の時もやらされた気がする。その時も薄い土だったような…」
「…大丈夫、ナギはナギのいいところがある。私はわかっている」
慰めなのかよくわからない言葉をかけるとパッとナギの顔が明るくなる。
「…そう?うん、そうだよね!ごめん、ナーバスになってたよ。ありがとう渚!それより渚の杖だったね。店主さん、渚によさそうな杖ってありますか?」
「そうでしたな。しかし、全属性となると選ぶのが難しくなります。いっそオーダーメイドを…いえ、そうなると金貨1枚は最低でも必要。となると…」
ブツブツと店主が考え出す。
「…」
改めて店内を見渡すと様々な杖があって少し胸が躍る。
赤や青など宝石のようなものがついているのは属性の補助などを行うのだろうか。
「…?」
ふと端の方で飾られている1つの杖が気になった。
宝石などもついておらず何も着飾っていないシンプルな杖だ。
「どうしたの?渚」
「あの、これは?」
店主に顔を向け聞く。
「あぁ、そちらですか。ものはいいのですが使い勝手が悪い代物でして…」
「というと?」
「調整が難しいのです。特定の波長配分の魔力でないと発動さえ行えません。波長がずれた分は無駄な消費となりますので誰も使いたがらず…。少し試してみますか?」
そう言って杖を持たせてくれた。
何だろう、杖が答えてくれる気がする。
目を瞑れば魔力をどの程度込めればいいかも…。
「アロ・フレア」
自然と声が出るとボウッ!と炎が上がる。
「まさか…これは驚きました。これほどまでうまく使える方がいるとは…!」
そして目を開けて杖を見ながらこう言った。
「これ、ください」
おまけ
属性カラー
赤=火, 青=水, 緑=風, 茶=土, 黄=雷, 白=無




