休日と杖
--ナギside--
「うーん…」
こんにちは、ナギ・ミスティアです。
先日、渚とともに洞窟の依頼を受けに行ってドラゴンと対峙した私たちは二日間の謹慎を言い渡されました。
実際は謹慎というより怪我の休養みたいな形ですが、学校の休みも相まって少し長い休日みたいなものです。
そんな私は現在とあることをずっと考えています。
「むー…」
「あの、ナギ?」
「あー…どうしようかなぁ…?」
「聞いてる?ナギ」
「でもなぁ、やっぱりこっちかなぁ…?」
「ナギ―!…無反応。こうなったら」
「うん、やっぱりこっちに…うひゃう!!」
背中に何か冷たいものが入ってきた。
「なに!?なに!?」
立ち上がり、体をくねらせながらそれから逃げようとする。
服を引っ張り出し、背中からシャツを通り抜け、コトリと落ちたものを見ると氷がそこにあった。
「うぅ…これ、渚?ひどいよぉ…」
涙目で犯人の方に視線をやると仕方なさそうな目でこちらを見ていた。
「ナギが悪い。返事、全然しなかった」
「あぅ、ごめん。呼んでたんだね」
ちょっと反省だ。
「いい。それで、何考えてたの?」
「あ、そう!渚にも相談しようと思ってたんだ!実はね、これなんだよ!」
そう言って私はとあるものを取り出した。
「私が壊した…杖?」
そう、私はその時気を失っていたけどドラゴンと戦ったときに真っ二つに割れてしまった杖だ。
「これをね、新しく…うぇぇ!?どうしたの?」
見ると渚は頭を下げている。
「ごめん、私のせいで壊した。大事な杖。どうしたら許してくれる?」
「えええ!?やめてやめて!別に怒ってないよぉ!」
渚は頭を下げ続ける。
「でも…」
「もともと買い替えようか悩んでたものだし大丈夫だよ。それに学校から支給される杖も持ってるから!」
「…そう?」
「そうそう!この杖もお母さんと住んでいた家に転がっていたのをなんとなく使ってただけだし!だから全然…」
その瞬間、渚はゴン!っと土下座のポーズを取り出した。
「この度はお母様かお父様の遺留品を壊してしまい大変なご迷惑を…」
「だからやめてってばー!」
私は全く気にしていないのに渚は謝り続ける。
えーっと、えーっと、どうしよう!
何かごまかすようなことは…。
「あっ、そうだ!せっかくだからこれから渚の杖を買いに行かない?」
「私の…杖?」
「うん!渚も学校からもらえると思うんだけどデザインがあんまりよくないんだよね。私も買いたいしどうかなと思ったんだけど…」
渚は頭をあげて考える。
「さ、さっき考えてたこともそれなんだよ!いろんなデザインがあってね、この本に載ってるんだけど…」
そう言ってさっきまで読んでいた本を開いて差し出す。
「…」
しばらくペラペラとめくる。
「ど、どうかな…?」
そして私の方を向くと答えた。
「行く」
今日は魔法杖の店に行くこととなった。
「いらっしゃいませ」
いかにもという杖のイラストが入った看板が立っている店の中に入ると片眼鏡をかけた中年の男性店主が出迎えてくれた。
「…いろんな杖ある」
目を輝かせている渚はあちこちを見渡している。
私もつられて店内を見渡すと20畳ほどのスペースに片手で軽く持てるスタンダードなものから私の身長ほどある大型の杖、装飾が全体に施されているものなど様々な杖があるのが見てわかった。
「すごいね、私も来たの初めてだよ」
キョロキョロと見ていると店主がこちらに話しかけてきた。
「杖を購入するのは初めてでございますか?」
「はい、二人ともそうです。今時でイケイケなのが欲しいんですけど!」
「ナギ、その言葉古い」
「え?」
今考えたのに?
「今時…ふむ、難しい要求ですな。前に使っていた杖などは?」
「渚は杖自体が初めてで、私は壊れてしまったので…」
「壊れて?その杖を今お持ちで?」
「え?はい、これなんですけど…」
そう言って割れた杖を差し出した。
「ほう…立派な杖ですな。ん?これは…なんと…!」
片眼鏡に手をやりながら杖をあちこち観察する。
「あの…」
「失敬、これはアロ系の魔法で大量の魔力流してしまわれたのですな。かけた術者はおそらく別の方ではありませんか?」
「わかるんですか!?」
「はい。アロ・レクト・アスレクト。それぞれ魔力の出入り口の大きさがあるのですが、出入り口の小さいアロ系で大量の魔力を通すと杖を通して術者に跳ね返ってきます。その痕跡がきれいに残っておりましたので」
「でも渚は跳ね返りなんて…えっ?もしかして先生が打ち身って言ってたのって」
「ナギ、違うと思う。だったら診断の時言うはず」
渚が即座に否定する。
「どのような怪我を負われたのかは存じませんが、確かに術者には帰ってきておりません。全て杖が肩代わりしております。よい物をお持ちですな」
「えへへ、ありがとうございます」
そうして割れた杖を返してくれた。
「しかし、このレベルの杖を使っていたとなると…うーむ…」
「何か問題でもあるんですか?」
「最上級レベルの杖でしたので長年魔力を通すことによってあなた専用の杖へとなっております。新しく購入となると魔力の通しにくさや使いづらさが気になるようになるかと…」
「え!」
初級のアロ・フレアでさえ苦労してたのにさらに大変になるってこと!?
私魔法使えなくなっちゃいそう…。
「同等のものもご用意可能ですが、どうしてもお値段が高くなります」
「…ちなみにどれくらいですか?」
嫌な予感がする。
「ザッと金貨7枚ほど」
「ななっ…!」
「?」
ありえない金額に戦慄する。
渚はよくわからないようで首をかしげていた。
「ナギ、どれくらい?」
「えっとね…2,3年は遊んで暮らせるくらい…」
「っ…!」
それを聞いて渚も青ざめた。
そう考えると何年もなんてものを使ってたんだろう。
平気でその辺に放置したり遠くのものとか引っ掛けて引き寄せてたりしてた!
「いかがなさいますか?」
はぁ…でもしょうがないよね。
そんな値段払えるわけないし、壊れたものはしょうがない。
分相応なものに乗り換えるって考えよう。
「大銀貨1枚くらいで新しいものを…」
と同時に渚が口を開く。
「あの…この杖、修理できませんか?」
意を決したような顔で店主を見ていた。
--おまけ--
渚「学校、杖を支給してくれるの?」
ナギ「うん!見た目がただの木の棒みたいな感じだからあんまり使ってる人いないけどね」
渚「へぇ、見てみたい。どこにある?」
ナギ「えっと…」
渚「ナギ?」
ナギ「家中探さなきゃ…わからない…」
渚「ナギ…」




