依頼達成
「う…」
ぼんやりとした頭がさえてきて徐々に覚醒しだす。
目を開けると視界がゆっくりクリアになっていくのを感じる。
「あ、起きた?」
その声を聴いた瞬間、洞窟内の出来事が一気によみがえってくる。
「ナギ!無事!?…いっ!」
バッ!と上半身を起こすと頭痛がしてガンガンと鳴り響いた。
「渚!大丈夫!?」
再び背中を元いた場所に沈めていく。
「ここは…」
今いる場所を確認するとベッドの上だった。
ナギは隣のベッドにいて上半身を起こしている。
「あ、えっとね…」
「救護室だ、すでにお前たち二人の治療は終わっている。危ないところだったぞ」
ナギとは逆方面から聞こえる声の方へ顔を向けるとレオナ先生が椅子に座ってこちらを見ていた。
「救護…治療?」
二人とはどういうことだろう、治療が必要なのはナギだけだと思っていたけど。
「赤月生徒、お前肋骨が折れてたぞ。それと全身打ち身。頭も軽く打っていた。治療の副作用で頭痛はあると思うがすぐ治る」
「え…そんなに?」
しかし体を確認したところ頭痛以外に違和感はない。
「医療魔法に感謝だね!」
「あ…」
ナギの言葉に納得する。
そうか、ここ魔法の世界だった。
「ナギも治療を?」
「もちろん!しばらく安静にしとけとは言われたけどねー」
「…」
無言でレオナ先生を見る。
「ああ、足が切れてたのと全身打ち身だが問題ない。赤月生徒、お前よりかは軽症だ」
「よかった…」
安心して脱力する。
「えへへ。それにしても渚、かなり取り乱してたね」
少しいたずらそうな目で見つめてくる。
「う…そんなことない」
「えー?ほんとにー?」
「ナギ生徒の取り乱しようもすごかったがな」
「うえぇ!?ばらさないでくださいよ!」
「おー、聞きたい」
そうしたちょっとしたやり取りに安心して口角が上がる。
本当に無事でよかった。
「さて、そろそろ本題に入ろう。お前たち、なぜあの洞窟にいた?あそこは立ち入り禁止区域だぞ」
真剣な面持ちで問いかけてくる。
「えぇ!?そうなんですか?そうとは知らずまた…でも今回は別のような。とにかく私達そんなつもりなくて!」
「落ち着け、別に怒ってはいない。今回は理由があるんだろ?」
そう言って私を見てきた。
「掲示板の近く。依頼を見た」
「…なるほど、やはりか。この依頼を見たんだろ」
そう言って2枚の紙を出してきた。
1枚はとても見覚えがある。
「あ!それ!」
「表に出ないAランクの依頼だ。うちの職員が一枚落としたらしくてな」
見覚えがない方を見ると数字の1と思われる文字が書いてあった。
「依頼書は全部で2枚に分かれてた?」
「そうだ。2枚目だけではただ花を摘んでくるだけの依頼に見えるがな」
「えっ!でもなんでそんな紛らわしい内容に?そんなのみんな間違えちゃうんじゃ…」
「いろいろ事情があるんだよ。掲示板に乗せるのは1枚目だけだからな。そしてその重要な1枚を落としたのはこちらの責任だ。受注さえせずに行ったのは褒められたことではないがとやかく言うつもりはない」
その言葉にサッと顔色が悪くなる。
「受注…必要だった?」
「当たり前だ。覚えておけ、依頼というのは受注して認証されない限り受けたとはならん。…天上の力のためにやったことなんだろ。焦るのはわかるがまず目の前の学校のことを優先しろ。今依頼が少ないのもわざと制限しているんだからな」
「う…すみません…」
そうして私たち二人はうなだれた。
先生は全てお見通しのようだ。
「いかんな、説教臭くなってしまった。だが、依頼に関しては達成だ。これに関してはお前たちの手柄だよ」
「えっ、どういうことですか?達成もなにも受注もしてないし、私達ただやられて助けてもらっただけですよね」
「ナギの言う通り、洞窟内もめちゃめちゃにした」
「これを見てもそう言えるか?」
そう言うと泥まみれの花を一輪花瓶から取ってきた。
「ナギ生徒はこの花を最後まで握っていた。そしてこの花もまとめてナギ生徒を守るように赤月生徒がロックドラゴンに立ちはだかった。依頼を忘れなかった証拠だ」
「…でも洞窟は」
「洞窟内に関してはこちらでなんとかしておく。…初依頼達成だな」
全て先回りするかのようにレオナ先生は返答する。
心が熱くなった私はナギは目を合わせる。
ナギも同じ気持ちのようだ。
そして笑いあって礼を言った。
「「ありがとうございます」」
「ふっ、礼はいい。ともかく防御力の高いロックドラゴン相手によく無事だった。私が来るまで時間がかかったはずだが…」
「ナギのおかげ」
「渚のおかげです」
「「あっ…」」
ハモってしまった。
「ナギが泥をいっぱい出してくれないと私はやられてた」
「えー?私全然役に立ってないよ。先生が来るとき気を失っていたし。それより火の鉱石を投げたり炎の魔法はすごかったよ!渚、魔法の才能かなりあると思う!」
そんなやり取りをしているとレオナ先生は少し笑う。
「一度修羅場を潜り抜けた者は強くなる。これから頑張っていけ」
「「はい」」
その時、ガラッと扉が開いた。
カミラ先生だ。
「起きやがったかバカ共!」
「あ、カミラせん…えっ?」
ズンズンと近づいて私達二人の顔面をぐわしと鷲掴んだ。
「いいぃたたたいいぃ!!つぶれる!つぶれちゃいます!」
「いだあぁぁ…!」
頭痛がひどいときにこれは効く…。
「お前ら一体何をやらかしたか知っているか?おい。私の監督責任になるんだぞ」
「いぅ…で、でも」
「でもじゃねぇ!なんであんな所に行った!言ってみろ!」
「あうぅ、それがですね…」
「言い訳すんなボケがぁ!」
「いったあぁぁ!!」
「ああぁぁっ!」
思いっきり拳骨をもらった。
何もかも理不尽だ
「よし、カミラも来たことだし私は行く。ここからはこってり叱られるように」
レオナ先生は立ち上がって入れ替わるように扉へと向かう。
「えっ!レオナ先生!?」
「助けて…」
「おい、どこ見てやがる!今話してんのは私だろうが!」
「ごごご、ごめんなさい!」
「す、すみません!」
部屋から出る直前、レオナ先生はぴたりと止まる。
「あぁそうだ。二人は後ほど報告書を書いて提出するように」
最後にそう言って出ていった。
「いやあぁぁ!!」
「ひぃぃ!」
そしてその日、しっかりと怒られた私たちはカミラ先生に二度と逆らわないよう心に決めた。
1章終わり
書き終わってよく考えたらこの二人寝不足だった気が…。
若さゆえ1日くらい徹夜は余裕ということでご容赦を。




