アロ・フレア
--渚side--
「あ…あ…」
全身に泥をかぶせられて窒息したものだと思っていたけどそうは問屋が卸さなかったようだ。
私が無事だった程なので当たり前と言えば当たり前かもしれないけど。
ドラゴンはゆっくりと辺りを見渡してこちらを発見する。
「っ…!」
「グルルルル…」
生暖かい息を吹きかけ、鋭い目がこちらを睨めつける。
「な、渚、わた、私の後ろに!」
震えながらもナギは前に出て杖を構える。
目には涙を浮かべて息も絶え絶えだ。
「はぁ…うぐぅ…魔力がもう…」
ドラゴンはゆっくりと大口を開け、そして
「これでも食らう!」
私はその中に石を投げつけた。
口の中に入った瞬間、強い光がドラゴンを包んでパキン!という音がする。
「グル!?」
ドラゴンが少しのけぞり、石だったものを吐き出して怯む。
投げたのは火の鉱石だ。
洞窟内を照らしていたものが泥の衝撃で落ちていたので魔力を込めて放り込んだものだ。
「ナギ!杖を!」
「え?」
ナギの手をつかんで一気に魔力を流し込む。
「グルル!」
異変を感じたドラゴンは下がろうとするがそうはさせない。
「お願い、出て!アロ・フレア!」
そう唱えると杖から細く青い炎がドラゴンに向かって噴出する。
「ギャアオオォォォォ!!」
炎はドラゴンを完全に包み、少し後退して暴れる。
完全に離れて逃れようともしているが泥の地面に足を取られ、その場に留まらせている。
「うあぁ!!」
その炎を発しているこちらも喉が焼けるほど熱い。
息ができないほどだ。
でもこれがダメならやられるだけだ。
倒すまで続けなきゃ!
瞬間、ピシッ!という音がして炎が出なくなる。
「えっ!」
さらにバチッ!と杖が弾かれ、泥の上に落ちる。
「うぁっ!…なんで」
見ると杖が真っ二つに割れていた。
同時にナギがべしゃりと崩れ落ちる。
「あ…ナギ?起きて!ナギ!!」
ナギはぐったりとしていて完全に気を失っていた。
「グルッ!」
ドラゴンは炎が弱まったのを感じてこちらを睨んできた。
完全に怒らせたようだ。
まだ燃えているのにもかかわらず熱せられた爪を立て、私達二人に腕を思いっきり振りかざす。
「グアァァァ!!」
「もう…だめ!」
そして、ドラゴンの爪がこちらに当たる寸前、
「レクト・アイス」
ジュウゥゥという音が洞窟内に響き渡る。
爪は目の前数センチ先、私たちの目の前で止まっている。
「……はっ…はっ…」
目の前の光景が信じられない。
ポタポタと水滴が落ち、時が止まったかのようにドラゴンは完全停止している。
そう、ドラゴンは全身氷漬けになっていた。
「これ…は…?」
体を引きずるように爪から離れる。
「ん?思ったより効きが甘かったな」
そんな声が聞こえた後、パキパキという音が聞こえて氷がさらに拡大した。
「間一髪だったな。おい!生きてるか!?」
暗がりの中、ゆっくりと姿を現した人物はとても見覚えのある人だった。
「レオナ…先生…?」
「そうだが…その声、赤月生徒か?」
「…はい」
「はぁ、嫌な予感的中か。もう一人いるのはナギ生徒だな」
レオナ先生はこちらに近づいてきて私たちの状態を確認していく。
「…」
「ふむ、気を失っているだけだ、魔力の使い過ぎのようだが…」
「な、ナギを…先に…。足…怪我…」
「わかった、私に任せろ。…それより洞窟内でこの規模の泥の魔法に炎とは。無茶を…っておい!」
私はべシャリと倒れ、そのまま目の前がブラックアウトした。




