伊豆の物語 二人セゾン
⑥しかしながらその日は意外に早く来た いつも通り階段を昇り四階へと顔出しに来ると 部屋前が慌ただしく医師なり看護師なりが出たり入ったりしていた 皆厳しい顔つきをしていた 男 医師であろう 家族を実家のひとを大至急呼び寄せる様に指示する声が聞こえてきた 部屋を飛び出してきた看護師の肘を掴んで状況を聞き出す 雄基の連れと知って歩きながら慌ただしく説明する ここ数日元気なく頭から何かしらうんこ臭い匂いがするので 清拭をまめに更に入浴させたりしていたが 好転せず 先程急に気を失う様にしてバッタリと倒れたという 意識を失うことはままあったのでソレだけでは大したことではないのだが 今回はどうも様子が違う 医師の見立てでは 助かる確率は30%位 三分の一程度ということだった 雄基の実家は奥州の奥地 酸軽なのでここまでくるのに48時間か下手すると72時間位掛かりそうだとの事だった 実家の者が到着するまで もってくれればいいのだが そう言い捨てて走り去っていった そう聞いて一旦は二階へと引き返したが どうもやはり落ち着かない ええぃ ままよ ベッドから跳ね起きて 再び四階へと向かう 先程より数刻程経っており 医師や看護師の姿は無かった 一段と萎んだような雄基の姿がベッドにあった ベッドサイドに椅子を動かし付き添うことにした 小言を言われるかも知れないが 家族が到着する迄の事だ バクバクしている自分の胸に無理やり言い聞かせるようにして 座り込んだ おい 死神よ ソレともなんか得体の知れないものよ 雄基がなんと言おうと オレは承知していないのだから 勝手に雄基を掻っ攫って行くな 取引は無効だかんな




