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ママはネクロマンサー~娘のわたしは聖騎士だけど、それでもママが大好きです!〜  作者: mabaru


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28話 ただいま

 顔色と性格の悪い死神に、気合の入った一発をキメて。

 そしてそのあとの記憶はソレイアにはない。

 

 カッコよく決めポーズをとったかと思えば、ぱたりと倒れてしまった。

 力を使い果たしたのだ。

 

 後から聞いた話によると。さすがのテレサもぐったりで、どうしようかと考えていたところ、ようやくかけつけたジャダとロイド先生が運んでくれたという。

 あの失礼な男と護衛のひとたちは、警備隊のひとたちに回収されたとか。

 スカルゴは戻っても、誰も帰ってこなくて、大変だろうな。と、ソレイアはちょっとだけかわいそうに思った。

 

 

 そして、パチリと目を覚ましたソレイアは、テレサと一緒に我が家のベットで横になっていることに気づいた。

 

 最近は別々で寝ることが多くなっていたので、ソレイアはなんだかとても懐かしい気がする。

 静かに寝息をたてているテレサ。

 ゆっくりと近づいて、その胸に額をおしつけて抱きしめる。テレサの匂いがいっぱいでホッとする。


「…お転婆娘が、ようやく起きたのかしら」


 どうやらテレサは起きていたらしい。

 ソレイアの頭をなでながら、優しい声でそう言ってくれた。


 後悔は全部、忘れられないけど。

 今だけ、ちょっとだけ、それは横に置いておいて。

 テレサに甘えたい。


「ごめんなさい、ママ」


 自然と言葉がでていた。でも一回じゃ足りない。

 たくさん、たくさん、ごめんなさいと言いたい。


「大丈夫。分かってるわソレイア。…伝わってる。それに、私もソレイアに言わなくちゃね。…ごめんなさい」


 うん、いいよ。分かってる。

 そう声に出したいけど、涙がでちゃって、泣いちゃって、言葉にできない。

 なんでこんなに、お腹がひきつるんだろう。

 エーテル操作も上手くいかない。あれだけ練習したのに。


「頑張ったわね、ソレイア。貴女を誇りに思う。怖かったでしょうに。泣かずによく戦ったわ。…だから、今は泣いていい。安心して」


 もう、テレサのパジャマはソレイアの涙でぐしゃぐしゃなのに、ずっと、ぎゅっと抱きしめてくれる。

 

 たまにはいいのかな。このままで。

 思い切り泣いちゃって。

 恥ずかしいけど。でもママだし。

 ママだけに見せるならいいのかも。

 

 安心する。

 帰ってこれた。

 ここに、帰ってこれたんだ。

 

 耳元でちいさくテレサが「おかえりなさい」と言ってくれる。

 そしてソレイアも、声にならなかったかもしれないけれど「ただいま」と言ったのだった。

 

 

 離れ離れになりかけた母娘は、ここにようやくひとつの答えを導き出した。

 それはなんてことのない、ありふれた、親子のかたち。

 けれど、このふたりとっては、とても大切なものになったのだ。







 






 ......。





 背中をとんとんされている。

 これでは眠ってしまう。

 

「……。」

 

 しかしふと、ソレイアは我にかえった。

 

 わんわんと泣いて、思い切りテレサの愛を堪能して落ち着いたソレイアは、だんだんと、これで丸く収まったのだろうかと疑問に思ってきた。


 これはいつものパターンだと学習したのだ。

 

 なんかいい感じの空気に流されて、いつも本質をはぐらかされてきた。

 だから生死の境を乗り越えて、少しだけダークに成長したソレイアは聞きたいことを聞こうと思ったのだ。


「…ねえママ」


「......なあに?」


「この子のパパって、わたしのパパと同じ人なんだよね?」


「んっ」


 テレサは、このままうやむやにならないかと思っていた話題を正確に射貫かれて固まった。

 背中とんとんが効かなくなっている。

 これはどうしたことなのか。妙な空気が漂う。

 しかし、この甘い空間に少しだけスパイスがかかったような緊張感。これを乗り越えなければ、母とは名乗れないのかもしれない。


「そ、そうね。ちょっと偶然出会ってね。そのう、…意気投合したというか。流れでそうなったというか。相性が良かったというか」

 

(子供に向かって何を言っているのか!)

 

 テレサは脳内でセルフツッコミをしながら、いつもの冷静さをどこかに置き忘れてきたように、しどろもどろとなっていた。

 どうしてこう言い訳がましくなってしまうのか。 

 ハッキリと言ってしまえばいいのに。

 なぜだかあの男との内容を、ソレイアにはあまり知られなくない気持ちになるのだ。

 しかし世の母親たちも、父親とどう関係しているのか、娘に話したりするものなのだろうか。


「ふうん…それで? いつパパはこっちにくるの?」


「えっ」

 

 まさかそんな返しが来るとは思ってもみなかったテレサは当惑する。

 

 こっちにくる?

 あの男が?

 なんで?


 ソレイアの目が「当然だよね」と語って、テレサを捉えている。

 

 おかしい。この流れはおかしい。いやおかしくないのか。

 この話題の主導権を完全にソレイアに握られている気がする。

 さっきまであんなに感動的な雰囲気だったのに。

 これはソレイアの成長、なのか。

 

「…仲直りしたから。この子ができたんでしょ?」


「ん”ん”ん”」

 

 返答に困る。

 ある一方向から見たら仲直りしたようにみえなくもない所業ではあったように思えるけども。具体的にそうだったかどうかまでは、はっきりとは覚えていないというか、なんというかーー

 

 テレサは混乱していた。


 

 ソレイアはあまり勉強が得意な方ではないが興味があれば貪欲にその知識を求める。

 弟妹が欲しいと思った時から、そのあたりの発生条件はチェックしていた。実地で村の家畜や犬猫がどうしているのかも観察済みである。

 あんな、ぶちかましみたいな事、仲良くなければできないはずだ。

 それなのに 煮え切らない態度のテレサ。

 何かパパを呼びたくない理由でもあるのだろうか。

 

 しかしどんな理由があろうとも、ここは引き下がるべきではない。ソレイアの直感がそう告げている。

 遠慮なんてしていたら、第二第三のソレイアが生まれてしまうのだ。


 ソレイアはスッとダーク度を高めた。


「あのねママ。わたしも姉になるから。もちろんこの子の面倒はみるわ。それはもう、可愛がると思う。…でもね、ママはハッキリ言ってズボラなの。骨に任せて放任してちゃいけないの。…だから」


「ーーパパを呼ぼうね?」


 満面の、有無を言わさぬ、太陽のような、まっすぐで、少しだけ黒い輝きの笑顔を放ち、ソレイアはそう言った。

 

 その圧倒的な破壊力に、ズボラと言われたテレサはなす術もなく、あっさりと白旗をあげるしかなかったのだった。


「……はい」


 

ここまで読んでいただきありがとうございます。


この物語も、次回エピローグで締めくくりとなります。

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