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ママはネクロマンサー~娘のわたしは聖騎士だけど、それでもママが大好きです!〜  作者: mabaru


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22話 禁域へ

 日も暮れて、割増になった馬車の料金を教会にツケて走っていく。

 

 グラスト王国の西端にある、ポータルへと向かっているらしい。なんでもそこを通れば教国にあっという間にいけるとかなんとか。

 ポータルを使うのは初めてで、ソレイアは少しそわそわした。

 幌馬車の中ではスカルゴと名乗った神官が神の愛をひたすらに説いていてうんざりした。

 自分には母の愛だけで十分すぎると思ったので聞き流すことに決めた。

 

 ガタガタと揺れながら、走ったり泣いたり怒ったりして消耗した体力を回復しようと眠気がでてくる。

 たまに首の骨が外れそうなほどの揺れがあるけれど「急いで」と言われた手前、行者さんは悪くない。しだいに神官の説法が子守歌のように感じだし、まぶたがとろんと落ちてくる。

 ロイド先生に教わった、エーテル体を半覚醒状態にして寝ようと考える。

 これで完全ではないが肉体を休めつつ、警戒しながらも眠れるはずだ。

 

 そうしてソレイアを乗せた馬車はポータルの手前までは、順調に進んだ。



 ポータルの手前、そこに偉そうにふんぞり返る男が幾人かの護衛を伴って、ソレイアたちを待ち構えていた。


「…そいつが、例の子供か?」


 嫌味そうなその男が顔をゆがめながらソレイアを見て、そう言った。

 第一声がそれだ。挨拶もなにもない。

 馬車の揺れで首を捻ったみたいで寝覚めの悪かったソレイアは、さらに気分が悪くなった。

 

 大人のくせにちゃんと挨拶もできないんだろうか。

 挨拶しないなら、こちらからする必要もない。


(もしかしてこれが父親とか言わないよね?)


「…ディケンズ様、どうしてこちらに。…私どもがお連れするようにと仰せつかっておりましたが」


 さしものスカルゴもどうやら目上ぽい失礼な男に、いきなり神の愛を説いたりはしないらしい。

 しかし言葉の端に非難めいた色を感じさせる返しだった。

 スカルゴはきっと出世できないタイプだと、ソレイアは思った。


「本物かどうかもわからんのに、わざわざポータルを通す必要もあるまい。…ふん、生意気そうな面だ。確かによく似ている。その髪色も目つきも。忌々しい、アイツにそっくりだな」


 吐き捨てるようにそういった失礼な男は、今度は紋章を見せてみろという。

 

 とってもめんどくさい。

 

 道は、寝ていたから覚えてないけど大体の方角は分かるからここから走って帰ろうかな。とソレイアは本気で思いだしていた。


「ソレイア様の聖騎士章は私どもが、しかとこの目で確認しております。あの方の面影もあります。間違いなく次代の教国を背負って立つに相応しい、素晴らしい指導者へと成られるでしょう。…その方に対し、あまりにも礼を失してはいませんか?」


 なんだかスカルゴの中でソレイアの未来がバラ色に輝いているようで、据わりが悪い。

 いつの間にそんなことになったんだろう。

 父親に合わせてくれるっていうからついてきたのに。

 あれかな、言葉の行間を読め、っていうやつなのかな。

 それはまだソレイアが未習得のスキルだった。


「はっ、下っ端の神官風情が、後ろ盾を得て調子にのっておるのか? いくら我がルクシオ家の血を継いでいようとも、どこの馬の骨かも分からぬ女の産んだ小娘など、せいぜいが使い走りであろうよ。もしくはアイツの母親のようにその形だけは良い面でもって、男どもを誘うかもしれんな?」


 お、ケンカか? 

 いま、ママのこと悪く言った気がするけど。

 飲んだ唾は吐けないぞ? 

 わたしは村の子とケンカする時も全力だったからね。

 大人相手だったらもっと全力でもいいよね。

 私はいまダークソレイアだから。遠慮なくいくよ。

 それにママは馬の骨どころじゃないから、ドラゴンの骨くらいあるから。


 あまりの暴言に言葉を失うスカルゴと、静かに殺気を漏らすソレイアを見て、相手にするのも嫌になったのか、失礼な男は振り返ってポータルを開くよう護衛たちに命じた。

 もうすでに帰りたいメーターが八割を超えていたソレイアは、「会いたいならそっちから来てよパパ」という伝言をスカルゴに託そうかどうか本気で悩んでいた。


 でもスカルゴだからなあ、七転八倒したあげくにとんでもない解釈の変換をされて伝わる可能性が高い気がする。

 その線はなしかな、とソレイアが独り言ちていると、怒声が響いた。


「なぜ、ポータルが開かんのだ! 先ほどまで使えていたではないか!!」


 怒っているのはあの失礼な男だ。

 ポータルは連続使用できないって子供でも知ってるけど、もしかして知らなかったのかな。

 来る前に注意されたんだろうけど聞いてなかったんだろうか。

 あれで生きていけるんだから貴族って不思議だな。とソレイアは感心した。


「申し訳ありません、ソレイア様。ポータルのチャージを待たねばなりません。その間のお食事は簡素なものしか用意がございませんが、…いかかでしょうか?」


 そういってスカルゴが差し出してきたのは干し芋だった。

 もしソレイアが普通のご令嬢なら泣きが入っていただろうが、田舎育ちのソレイアには特に問題はなかった。食べられるだけありがたい。

 なんなら、ロイド先生から学んだ野戦訓練の実力を試すときかもしれない。

 どう提案しようかソレイアが迷っていると、また怒った声がする。

 アンガーマネジメントがなってない大人は、近くにいるだけで迷惑だな。とソレイアは思った。


「もうよい! 待っていられるか。馬で突っ切るぞ!」


「ディケンズ様、お考え直しください。禁域を突破するなど無謀です!」


「端を通ればよかろう! 我々には聖別された武具もある。何を恐れることがあるか。禁域など教国の領域に広がることもできておらぬではないか。それよりも半日も待って、あの娘を取り返そうとこの国の者どもが来るほうが危険ではないか!」


 禁域の表層部分は片づけた、とテレサが話していたようにソレイアは記憶している。

 この人たちがその情報を知っているかどうかわからないけれど、確かにそれなら端っこを通れば大丈夫なのかな、と思ってしまう。

 それに対死霊に特化したジョブが集まる教国出身の護衛たちなら、危なげなく連れて行ってくれるかもしれない。

 だが、ソレイアとスカルゴに馬はない。

 馬車は早々に戻ってしまったし。

 そこはどうするつもりなのだろうか。

 もし引きずっていくとか言い出したら、さすがに顔面を殴ることも辞さない勢いのソレイアだった。


 結局、ソレイアは護衛の一人と相乗りの形で馬に乗り。スカルゴだけを残して先に進むこととなった。

 そこも大層もめた。

 ご利用は計画的に。と、ぐだぐだな方針に振り回されると切実に思う。


 スカルゴはチャージを待ってポータルで戻るという。

 ソレイアもそっちがよかったが、あの失礼な男だけならともかく、護衛三人を相手取るのは難しい。

 馬相手では走っても逃げ切れないだろう。

 大人しく、くっついていこうと決めた。

 護衛たちの戦いぶりにも興味があるし。テレサが使役する以外の死霊を見るのも初めてだ。と、少しわくわくしていた。

 

 ここにきてソレイアは重大な判断ミスをする。

 

 その生い立ちのせいか、他の死霊を知らずに育ってしまったことによる認識不足。

 その本当の恐ろしさを、身をもって味わうことになったのだ。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

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