変態だった友達(※微エロ要素有り!)
※このエピソードは、次話「閑話休題 坂上咲の過去」のネタバレを含みます。
どちらを先に読むかはお任せします。
二時間目が終わった休み時間。
教科書の片付けを終えて美桜ちゃんの席に目をやると、ちょうどさっちゃんも結ちゃんも美桜ちゃんの所へと向かっていた頃だった。
私もその仲に加わるために、椅子を引いて腰を上げ、同じように美桜ちゃんの所に行く。
……とここで、なんて声をかけて合流しようかと、考えてなかった自分に気づく。やっぱりここは、気軽に“やあ”とでも言って自然に入るべきか。
なんて悩んでいるうちに、私の足はもう美桜ちゃんの席の近くまで来ていた。さっちゃんも結ちゃんも、同じく合流しようとしている。よしっ……じゃあここは気軽に気さくな感じで……。
「やあ」
「ね、みっちゃん結ちゃん。果歩ちゃんも。一緒にお手洗い行かない?」
あ……。
私の、密かな渾身の挨拶なんてどうでもいいかのように、さっちゃんは皆にトイレへと誘い出した。しかも私のことは、ついでみたいな感じで呼ばれた気がするのは気の所為だろうか。ま、いいけどね別に。この中じゃ所詮新参者だし。
「うん、分かった」
「いいよ行こー」
「……ん」
私は別に尿意を催してはいないんだけど、これも女友達特有と言われる社交辞令的なやつだろう。ここで“私は大丈夫”なんて言って誘いを断ったりなんかしたら、次からも事あるごとにハブられるかもしれない。そう思って、これから何が起こるか分からないけれど、一言だけ発しながら首を縦に振って前向きに返答した。
美桜ちゃんも椅子を引いて立ち上がり、さっちゃんの先導の元に私達三人もついていく。
「何か頼み事?」
「……うん。だからお願い」
「りょーかい」
横に並んだ美桜ちゃんがさっちゃんに何やら訊いている。さっちゃんも、どこか緊張した様子で答えている。何か相談したいことでもあるのだろうか? それも内密に。ならばここは、私もさっちゃんの友達の一人として、力になりたい。
皆して静かに、それ以上喋らないまま、とうとう目的地のトイレまで辿り着く。ただならぬ雰囲気に胸の動悸がドキドキと高鳴って口の中が渇く中、先行しているさっちゃんが先トイレ用のサンダルを履いて扉を開ける。
続いて私達も中に入ると、そこにはまだ自分達以外の人影はなかった。四つ並んでいる内の、入り口近くのトイレだけは閉まっていて、先客がいるようだった。
他の三人共、トイレの空き状況に目をやって確認した後、
「じゃあ、うちらはあっち行くから」
と言いながら、さっちゃんは一番窓際に近い個室を指差しながら足速に動き出す。……ら?
「ん、分かった」
と返事をした美桜ちゃんも、何も言わずに美桜ちゃんを追い抜かした結ちゃんも後に着いていく。私は、事情も何も分からないまま、とりあえず遅れて美桜ちゃんの動きに習う。
そして、そのままさっちゃんは奥の個室に入っていき、何故か結ちゃんも一緒に入った瞬間に、扉は閉められた。
「えっ?」
「果歩はこっち!」
「わっ!」
明らかにおかしな光景に戸惑っていると、美桜ちゃんが私の腕を引いて一個前の個室へと引き釣り込んで扉を閉めた。
真ん中に洋式トイレが鎮座してあって狭い中、そのまま美桜ちゃんがカチャッと鍵を掛ける。その後も、誰の話し声も聞こえない。何が何だかさっぱり分からないけれど、どうやら私達の不審な動きを目撃した他の人は居ないようだった。
「美桜ちゃん?」
「しっ!」
何も聞かされず、何をすればいいのかも理解できず、不安になって美桜ちゃんに声をかけるも、美桜ちゃんからは静かにするように厳しく口に人差し指を当てて合図されてしまった。
{果歩は何もしなくていいから! 大丈夫だから! あたしらはここでただ静かにしていればいいから!}
「……???」
続けて囁くような小声で、だけどはっきりとそう告げられる。
まるで意味が分からない。さっちゃんは、何か相談したいことがあるんじゃなかったの? なのに何で今、当のさっちゃんと結ちゃんとで二手に別れるようなことをしているの? 私は何もしなくていいって、どういうこと?
疑問ばかりが頭に浮かんで落ち着けない。とりあえず、“何もしなくていい”と言われたからには、ここでひたすら待っていれば何かわかるようになるのだろうか?
あっ。と、分からないなりに静かに巡らせていた頭で、一つの可能性に思い当たる。
(もしかして、美桜ちゃんにも話せない、さっちゃんと結ちゃんだけの内緒事があるっていうの?)
でも、だとすればそれって一体なんなんだろう? こんなにも頭が良くて頼りになる美桜ちゃんにも打ち明けられないことってあるの? 美桜ちゃんなら、秘密があるなら誰にも話さずに守ってくれるのに。
と、何よりもまず両親からの秘密の言い訳をも忠実に守っていると知っているからこそ思えるようなことを考える。一つは何とか閃いたものの、まだ謎が謎を呼んでしまう。ここまでのことを思い返してみても、判断材料があまりにも少な過ぎて推察もできない。
{ねえ咲……。また、したくなっちゃったの?}
「!?」
とここで、さっちゃんと結ちゃんが閉じ籠もっている方から、そっと小さな話し声が聞こえる。この声は、結ちゃんのものだ。
「…………」
{分かった}
問いかけられたさっちゃんは、何も言わない。多分、頷くとかの動作で答えたのだろう。それを受け取った結ちゃんが返事をして、また静かになる。
「んっ」
とここで、さっきまで黙っていたはずのさっちゃんが唐突に大きく、それも上擦った高い声を漏らす。なんでそういうことになってしまっったのか、私にはまだ分からない。
{どう…………?}
一枚隔てた壁の向こうで、結ちゃんが小声で何か言っている。上側は筒抜けとはいえ、個室の反対側からじゃよく聞こえない。だから私も、美桜ちゃんが立っている方へ向かう。
{気になる?}
と、私の動きに気づいた美桜ちゃんが言った。
私が頷くと、美桜ちゃんは、
{いいよ。じゃあ、こっちにおいで}
と、さらに奥の狭い場所へ移動してくれた。なので、私も隣に立って、壁に耳を当てる。
「あっ! んんっ!」
「っ!?」
{もう、静かにしてよ! 他の人に聞こえちゃったらどうするの?}
すると、さっちゃんの上擦った声がよく響いてきた。
(えっ!? まさか、これって……!)
あまりにも衝撃的過ぎて、私まで驚きの声が漏れそうになる。予想だにしてなかった展開に、頭では察せても理解が追いつかない。だって、ここは学校で、さっきはそういうことに否定的だったはずのに!?
いや、そうでもなかったのか? いやでも、あれはあくまで創作の話であって……。
「んっ! ふぅっ……あんっ!」
{ほらまた! いいの? 咲が、本当は身体が敏感で、えっちな娘なんだって、バレたら……}
「っ……やぁ! ん!」
{だったら、せめて声を我慢してよ……。アタシだって、聞いてて……恥ずかしいんだから}
「……んっ」
ダメだ。あまりにも甘くて可愛くて、いやらしくて魅惑的過ぎる声に耳も頭も持っていかれて、状況の整理すら覚束ない!
結ちゃんの声も聞く限り、今、この壁の向こうでは大変な変態的行為が行われている! 二人とも顔を真っ赤に火照らせながらイケないことをし続けてちゃっているんだと思うと、私まで全身が熱くなってくる。
{み、美桜……ちゃん}
{ん? どうかした? もしかして、身体が熱くなってきちゃった?}
{……うん}
聞きたかったのは、そういうことじゃないんだけどな……。でも、その指摘はあながち間違いじゃなかったから、肯定した。
{ふーん。じゃあ、果歩も服を脱いじゃう? そしたらちょっとは涼しくなるよ}
{〜〜っ! ばかっ!}
美桜ちゃんが真面目な顔でとんでもない提案をしてきたせいで、私の熱は憤怒と羞恥でさらにヒートアップしてしまった。勢いに任せて、でも小声になるよう努めて、ハッキリと暴言を吐いてやった。
美桜ちゃんのばか! 本当にバカ! 大馬鹿過ぎ! 最低! 変態! もう知らない!
私は、今に至るまでの二人の事情が訊きたかったのに、美桜ちゃんは、今や致している二人の情事に夢中だった。
頭がピンク色に染まりきってて絶賛妄想でお楽しみ中の美桜ちゃんには、聞く耳を持ってくれなくて取り付く島もない。せめて、憶測を含めてでもいいから説明して欲しかったのにな……。
そういえば、さっき美桜ちゃん、どさくさに紛れて“果歩も”って言った気がする。も? “も”ってことは、この分厚い仕切りの向こうで二人はもう脱いでいるとでも言うのか!?
(はぁーあー!)
心の中で、クソデカ溜め息を、苛立ち混じりに漏らす。
結局、結ちゃんとさっちゃんがどうしてこんなことをおっ始めてしまうようになったのか、分からずじまいになってしまった。
(……まあ、いいか)
周りの声を無視して、冷静に考えてみたら、大した損失じゃないことに気づく。
どうせ、美桜ちゃんは真相を知っている。相談されたからなのかは分からないけれど、知っていたからこそこうなるようにスムーズに動いたのだ。今思えば、この休み時間が始まってすぐの時、さっちゃんが言い出したことは全部、美桜ちゃんと結ちゃんにだけ伝わる合図……というか、合言葉だったのだろう。
私だけは何も知らないままここまで着いて来てしまったけど、多分、新しく友達として認めてくれて、迎え入れてくれたさっちゃんからの温情なのだろう。
もちろん、私もこんなさっちゃんと結ちゃんの秘密は、他の人には絶対にバラさないし、前向きに受け入れるつもりではある。けど、そうまで信頼してくれた根拠を考えたら、それは、私が曲がりなりにも美桜ちゃんの親友であるというのが大きいに違いない。
ということは、だ。今は詳しい事情は訊けずとも、あとからでもこっそり本人達に尋ねればいい。今のところ私には、情事までは訊くつもりはない。
{ん゛ん゛ん゛ん゛んんーーーーーー……………}
(それならそうと、頼むから騒ぎになりませんように……)
二人にとって大事な時間が大事になるような最悪な事態には発展して欲しくない。かと言って、私には誰も止めるつもりはないし、できることはと言えば、精々無事に教室まで帰れるように祈ることぐらいだ。
宗教的にも倫理的にも冒涜に値しかねない真似に加担しておいて、何に祈っているんだという感じもしないではないが、強いて選ぶとするならば、愛と運命の神が良いか。
どうか、この世に慈悲があるのならば、私達の行いを許してくださいお願いします!
{ーーっっ!! 〜〜〜っっっ!!!}
なんかさっきからとんでもない声とか微妙に漏れ聞こえちゃっているけど、本当にどうか後生ですからよろしくお願いします!!!
そうして、文字通りに休み時間中ずっと、人知れずトイレに籠城していた私達は、チャイムが鳴り始めてすぐに聞こえた荒っぽいノックの合図と共に飛び出した。他の生徒が既に教室で待機していた頃を見計らって、無人になってた廊下を突っ走り、自分達の教室に先生がやって来るか授業を始める前かの、残り僅かなギリギリの時間帯を狙って、何とか何事もなく教室まで戻れた。
余りにもギリギリだったせいで先生に咎められたけど、美桜ちゃんが、
「すみません。ちょっと、お腹の調子が悪くて、心配した友達が慌てて駆けつけてくれたから遅くなりました!」
と上手いこと言い訳をしてくれたお陰で、どうにか事なきを得た。
そんなこんなで普段通りに授業が行われ、落ち着いて、後になって冷静に考えてみた結果、
(っていうか、もう一人私が増えたんだし、わざわざ二人ずつ個室に閉じこもらなくても、私か美桜ちゃんのどっちかが一人外に残って様子を見たら良かったんじゃ……)
という最適解に至り、またこんな事をするようならそう提案しようと決めた。
一方、咲と結の入った個室で何が行われていたのかは、
https://novel18.syosetu.com/n4424lo/
に記してあります。(※もちろんR18作品になります!)
興味がありましたら、読んでみてください。




