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18,生徒会長と優の友人の実力

作者より:今回から主人公、優以外の視点が入ります。よろしくです!

202×年4月中旬、田中夢14歳



 静かな生徒会室、田中以外いない少し大きな教室。

 田中は戸締りをするため窓から夕陽が眩しく差し込む光をカーテンで遮る。明かりは点けていなかったので部屋は一気に暗くなる。

 田中はこれからの部活のために伸びをして体をほぐす。そしてストレートに揺らしていた髪を邪魔にならないように束ねていく、ポニーテールに。

 広い生徒会室も暗くすれば落ち着く。


(優しいか……)


 初めて言われた。普段は生徒会長として、ましてや兼任することになった応援団長としてそれ相応にふさわしい態度ではなくてはならないと、自然と今の厳しい自分になってしまった。

 特に何をしたわけでもないのに、男子にビビられる。女子は愛想笑いで誤魔化される。中のいい友人はいるがそれ以外の夢に対しての態度は自信が好むものではない。

 なりたくてなってわけじゃない。ただ先輩を見て、先生を見て、大人を見て、生徒会長とは応援団長とはと考え参考にしているだけ。

 夢は自身にも周りにも厳しくしたいわけではない。確かに校則や法律は守るべきだとは思う。ただ未然に防ぐためにああだこうだとお節介をするわけではない。それがウザイということは父親が一番しつこく教えてくれる。それと加齢臭が少し気になる田中にとって大切な親だ。

 普通に話しかけてくれる。星野は夢におびえずに堂々としている。流石サッカーで全国までいった精神力はこれぐらいでは怯まない。

 そして水野優。こちらを見ておどおどあわあわしていて、また自分はビビられているのか、そう思った。しかし、こちらに恐怖しているのではなかった。単純に初対面と話すのが苦手なのだろう。水野の態度で分かっていった。

 優しい、そう言ってくれたのは彼が二人目。一人目は父親だ。ただ父は普段の生徒会長としての雰囲気を知らない。学校の出来事を話さないわけではないが、父は忙しく運動会の行事を観にくることはない。仕方がないことは分かっている。

 優は生徒会長としての振る舞いを、応援団長としての振る舞いを直に感じたはずなのに優しいと言った。真面目だね、厳しい、しっかりしているね、そんなことは日常茶飯事で言われる。優しいと言う人は生徒会にすらいない。

 自分を認めてくれているような、他の人には話すことは到底難しい感情が今の夢を満たしている。こんな表情も誰にも父にも見られたくない。


 部活のため夢は体育館に訪れる。着替えの前に部員に挨拶する。

 その後女子更衣室に向かい、いつもの体操服に着替える。いわゆるジャージのタイプの服装ではなくセパレートのスウェットのようなもの。レオタードをバックから取り出す。

 先ほどの挨拶の時、部員から「なんだか楽しそうだね!」と言われた。そんなに浮かれていたのだろうか、気持ちの切り替えができていなかっただろうか、夢は着替えながら自分の顔を確かめる。

 最近は生徒会の業務にも慣れ、応援団の新体制の雰囲気にも慣れ、周りから言われることにも慣れ、直接いえば今の生活に飽きたしまっていた。それを2人の大型新人、片方は小柄で臆病な後輩がぶち壊してくれた。

 これからの残り少ない中学校生活が面白くなりそうだと、夢は誰もいない更衣室で一人にやけた。



202×年4月中旬、水野優13歳 


 マンションに戻り、身支度を済ませた優は愛川の晩ご飯ができるまでの間、田中に言われた星野についての動画を、愛川がいつも使っているタブレットで探す。スマホで検索しようとしたら「そんなちっちゃい画面を見続けたら目が悪くなるよ!」とオカンのようにタブレットを渡しながら注意された。

 普段タブレットは愛川が使っているが、元は優にパソコン代わりと叔父がプレゼントしてくれた物。優はタブレットとスマホの性能と使う用途が変わらないのでわざわざタブレットにこだわる気持ちはなかった。あらためて手にするとスマホより重く画面は大きい。

 タブレット用のタッチペンで「星野昇」と動画サイトで検索する。するとタイトルにその名が入りながらサッカー関連の動画が数多く出てきた。田中が言っていることは本当のようだ。

 さっそく何個かの動画を観ていく。小学生時代の星野は今の優と同じくらいの身長で雰囲気もどこか似ているように思った。しかしサッカーを始めると周りの人をスルスルとドリブルでかわす。この動画ではフォワードだろうか、チームの先頭でボールを受け取り次々と決めていく。その動きは成人したサッカー選手とあまり変わらないように優に写る。


(本当に星野君って凄いんだな……)


 田中が言っていた、インタビューの動画を発見する。カメラを直視することなく目線はどこかに逃がしながら、小声で抑揚をあまり出さずに話している。普段学校でやりとりする星野とはまるで別人。

 そしてサッカーのプレイになれば目つきが変わり、同級生を簡単にいなしてしまう。明らかに同年代では敵うものがいないほどの技術。魅せら優は夢中で星野に関する動画をサーフィンする。

 そのせいで優の後ろに忍び寄る同居人、もとい幽霊に気づかなかった。


「ー!星野君はどんな感じですか?!」

「にょわ!」


 愛川は優に思い切り寄りかかりながらタブレットを覗き見るようにくっついてきた。そんな勢いに思いっきりびっくりした優は変な声とともに体を跳ねる。


「ちょっとちょっと、動いたら観れないよー」

「愛川さん!急でびっくりしたんです!ご飯は大丈夫なんですか?」

「後は煮込むだけだから大丈夫よー。それより私にも動画みせてみせて」


 愛川に言われ、部屋の匂いを嗅ぐと香ばしくほのかに甘さを感じる。今夜はシチューのようだ。

 それを感じながら愛川に密着されながら共に動画を観ていく。隣からの人肌が温かい。


(来週。星野君に伝えないと……)


 優にとって星野はクラスの中で気軽に話しやすい同性、これからもできるならもっと長く付き合いたい。だから今度は自分から、優はそう小さく決意する。


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