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12,優は身体測定でハプニングします(されます

202×年4月上旬、水野優13歳


(面倒なことになってしまった……)


 優は保健室に向かいながらの廊下にて、ため息をこぼす。

 昨夜の愛川との約束があまりにも嬉しかったのか、普段よりもテンション高く登校したら身体測定の時間に体調が悪くなってしまったので教室で待機。午後になったら回復したので放課後に測定することになっていた。


(クラスメイトに見られる心配はないからいいか!)


 放課後に身体測定をする人はそうそういないだろう。そのため比べられる男子もいない。席が後ろでクラスメイトの中で会話する頻度が高い星野昇ほしののぼる、彼は成長期真っ只中で優の理想、少なくとも身体測定で隣に並ぶと悲しくなってしまうだろう。


(星野さんには申し訳ないけど、助かった……)


 不本意で放課後の身体測定になってしまったが自身のコンプレックスを誰にも、さすがに保健室の先生には見られてしまうが、クラスメイトに知られない見られないというのは得になりそうだ。

 優は胸を撫でおろしながら保健室の扉をノックし、どうぞの声で入っていく。

 いつもの保健室とは違い、心音を図る機械や聴力検査の機器などがあり、少し狭く苦しくなっていた。午前の時は体育館で行っていたが今はここに一時的にしまい、後ほど業者が回収するのだろう。

 ちなみにいつもの保健室とはいったが優はここに来るのは初めて、お世話になったことはまだない。


「そしたら服を脱いじゃって」


 保健室の先生は慣れたように表情変えずに坦々と検査の準備を始める。先生はメガネをかけた女性のベテランさん、年齢は50代くらい。ああだこうだ言ってくる男子生徒には手厳しいというか容赦ない様子だが、基本的に優しい。特に女生徒には人気だ。

 優は返事をし、部屋の隅にスクールバックとともに脱いだシャツを置いていく。

 上裸、学校でそのような姿になるにはやっぱり恥ずかしい。ただモジモジしているのも束の間、そういう生徒にも慣れている先生は、はよおいでおいでとジェスチャーする。優は慌てて身長を測る装置に向かう。

 先生には大変申し訳ないので表情のおくびにも出さないようにするが、ベテランの先生で助かった。これが若い先生、ましてや女性であれば恥ずかしさで悶えたくなっていただろう。歳が離れていて助かった。

 そして体重、聴覚、採血、心音一通り終わった。スルスルと事は進みとくに問題はなさそうだ。

 心音検査が終わり、検査台から降りようとした時だった。


「失礼しまーす!」


 元気がよくハキハキとして、よく響く高めの声とともに入ってきた。


「あれ?水野くんじゃん!水野くんも身体能力まだだったんだ!」

「そ、そうです」


 優の知るその人物は、クラスメイトの中でもよく顔を合わせる子。優の隣の席の子だ。


「なんだー!言ってくれれば一緒に行ったのにー!私も放課後になっていたからさー」

「何言ってんの丸井さん。というかノックしてきなさいな」

「はーい。てか水野くんの体に赤い点がいっぱ~い!おもしろ~!」


 先生の忠告を軽く無視する丸井。丸井夏希まるいなつきはそのまま心音検査が終わったばかりの赤くなっている蚯蚓みみず腫れに興味津々のようだ。

 サササーと一気に優の元まで駆け寄り、赤くなっている部分をツンツンと触り始めた。


「おもしろ~い!てか水野くんの肌めっちゃキレイじゃん。うらやま~」

「丸井さん!何してんの!男子の裸に触って!はしたないわよ!」


 ツンツンと笑顔で触り続ける丸井を先生は、雷を落としながらヘッドロックのような態勢で優から引き剝がした。PTAがその現場だけ見ていたら顔面蒼白だろうが、先生はそれすらもこなれているので丸井が苦しそうにはしていない力加減。ズルズルと引きずられているが。


「あ、あぁ……」


 優はぷるぷると震える。見られた触られた、隣の女子に。

 恥ずかしさのあまり優は言葉にならない声で絶叫した。



「おまたせ!それとあらためて、ごめんなさい」

「だ、大丈夫です。びっくりしただけなので……むしろ自分が叫んで申し訳ないというか……」


 優が絶叫した後、丸井は先生にこっぴどく注意された。そのまま謝罪といきたいところだったが先生の都合で早く検診を終わらせたいとのことで、優はしっかり着替えて保健室の廊下で待機、丸井は検診を受けながらガミガミと言われていた。その場から逃げたい思いで溢れかえっていたが先生がしっかり仲直り、しっかり謝ることと言われたので従いここにいる。

 それが終わり、今こうして丸井は深々と頭を下げ、優は慣れない対応に困惑しているところだ。

 丸井夏希、優の隣の席のクラスメイト。活発系、いわゆる陽キャ全開の女の子。面倒見も良さそうで隣の優にもよく話しかける。学級委員長をこれから決めるがきっと彼女がなると思われた、それぐらいクラスメイトからの人望と人気がある。本人もやる気満々。

 陽キャオーラは凄まじいが、校則はしっかり守っている。茶髪で少しオレンジかかった自毛はショート。ヘヤピンも派手なものでないが自身に合うものをチョイスしている。身長は平均的で運動神経も良く、部活について話した時は「ハンドやるー」とハンドボールに入るようだった。

 その時優は「帰宅部です」と自身なさげに話した時、丸井は残念そうにしていた。おそらく入学記念レクリエーションの時に迷惑かけないように動き回っていたのを隣の席の子は見ていたのだろう。運動できるのにもったいない、そんな表情をされた。

 そんな面倒見良い系陽キャの丸井と、流れ的に一緒に帰ることになりそうだ。


「水野くん……苗字言うのめんどいから優って呼んでもでもいい?」

「え?ええ、良いです、けど……」

「私のこともなつきーて呼び捨てでいいから、タメなんだし!」

「そ、それは流石に!難しいっていうか恥ずかしいです!」


 グイグイくる丸井に優は翻弄される。小学校時代にもそういう子に話しかけられた事はあるがクラスメイトでは無かったのでかわした。

 しかし丸井はクラスメイトでしかも隣の席、上手くやりくりするしかない。ここで安易に逃げてしまえば今後の学校生活が大変になるかもしれない。

 彼女が嫌というわけではない、苦手というわけじゃない。どちらかと言えば他人と話す時アガってしまう自分にもやもやする。


「そ、そのごめんなさい。自分話すのが苦手で……名前を呼ぶのも……」

「ごめんごめん!優の呼びやすい感じでいいから。それと分かってるよ、教室の時もそうだもんね。教えてくれてさんきゅ。優の話すペースで全然オーケーだから!」


 そう言って丸井はフレンドリーな笑顔で優の背中をポンポンと叩く。

 しかし優のその行動に猫のように跳ね上がり驚く。

 優は誰かに体を触られるという行為が極端に苦手。ある程度知っている人でこれから触ると見て分かるものであればそこまで驚きはしない。実際叔父や愛川とのスキンシップは大丈夫だ。

 今回は不意打ちでしかも異性、そしてまだ丸井のことを優は警戒を緩めているわけではない。その3点セットが優を猫にさせた。

 その光景に丸井も目を見開き驚く。しかし優が涙ぐんでいるのをみて何でそうなったのか察することができた。


「あはは……ごめんねー。つい癖というかなんというか……私結構こうして触れたりすることが多くてさっ。ただそうだねぇ……アニキたちがいるからってのはあるけど、こうなんて言ったらいいのか……優が特別というか……普段私も男どもにそんな軽々しく触れるわけじゃないかねー」

「……自分は男として認識されていない?」

「あー!違うの!違うの!ごめんごめんっ!」


 丸井の発言によって優の表情がさらに曇ることになり、申し訳なさが募っていく。

 優としても今の丸井の発言で合点がいくところがある。なぜなら保健室で裸を触られたから。そのことを思い出しこちらは羞恥が募る。


「ホントにごめん!でも優は体小さいし、肌はキレイだし、髪はサラサラだし、女子が羨むものをだいたい持っているからなー」

「……それ同じこと言われたことあります」

「やっぱり。優みたいに私もモテたいなー」

「……モテたい?」


 いつ、どこで、どんな時に自分のそんな話が蔓延っていたのだ。といっても優はそこまで周りの話に耳を傾けているわけではないが。

 丸井はしてやったりな表情に変わり、


「そうだよ!優って可愛いよね~ってさ、クラスメイトがね」

「……それモテているんですか……?」

「そうよ!小動物系男子はモテるんだぞー。という感じで話していたことあったし、今回こうしてちゃんとしっかり話してみたかったんだ。教室だと昇のガードきついから」

「は、はぁ……」


 確かに優は星野と話すことが多い。いつもの休憩時間やお昼休みの時なにげなく一緒に過ごす。優としても嬉しかった。彼も引っ越しでこの学校になったらしく、そのため同じ境遇の優と親しくなりつつあるという感じだった。

 ただそれがガードが堅いと言われる意味が不明だ。優は苦笑しながら首をかしげる。


「ずっとここで話していたら先生に、早く帰れーって言われるから一緒に帰りましょっ。駅方面なんだけど優は?」

「お、同じです……」

「ラッキー。今日はよろしくね!」


 そんなわけでクラスの中心人物的存在で隣の席の女子と一緒に帰ることになった。

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