0688話 ラウル領への旅路 その3
それからトロッコは朝日が登っても、その陽が落ちても走り続けていた。
これまでは休憩を挟みながら食事の際に休憩を取り、夜の移動を避けていたが、昨夜の襲撃を受けて移動を優先したのだ。
だが、トロッコもいつまでも走り続けられるわけではない。
動力がヒーやアブちゃん、コダマらに頼っている状況であり、魔力が尽きると動かなくなってしまうのだ。
そうして走り続けてから二度目の朝を迎える頃についにトロッコは止まってしまった。
「しばらく休息をとるしかありやせんね」
岩場を背にしたところにトロッコを止めたヒヨシマルがいう。
「そうね」
セラの怪我は瑠璃の回復薬による治療が完了していた。
「さて……アイツらがどこまで追ってきているか……」
フォライーが呟くが、当然のことながら誰も答えを持っていない。
沈黙が周囲を包む。
一緒にいる住民たちにも疲れがみえる、ただ文句を言うものは誰もいなかった。
「周囲に気配はありません、しばらくは大丈夫でしょう」
「それはよかったわ」
フォライーが軽く周囲を見回った結果、後を追うような存在は見かけられなかった。
そのため一行はしばしの休息へと入ったのだった。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
少し前。
セラやフォライーが激戦を繰り広げた場所に降り立つ影。
足元には倒れている二つの影、セラたちを襲撃したものたちだ。
「……」
二つの影を見下ろすものの顔は見えない。
「……ウッ……」
「カ……」
二つの影は微かに残る意識で、そこにいるものが誰かは把握しているようだ。
「……」
立っているものは言葉を発しない、ただ頭巾から覗く冷たい目で倒れた二つの影を見ているだけだ。
しばらく時間が過ぎたころ、新たに二つの影が現れると立っているものに向かって跪く。
ぼそぼそと小さい声で二、三の言葉を交わすと立っていた影は一瞬で闇へと消える。
新たに現れた影は倒れている影に向かって懐から取り出した小瓶の中身を振りかける。
すると倒れていた二つの影が立ち上がる。
「……無様な」
「うるさい」
「いてて……」
「……」
セラたちを襲撃した小柄と巨体に加え、新しく現れた長身と腕組としているもの。
「次は……」
「……分かっている」
「交代だろ」
長身の言葉を受けて小柄と巨体がぶっきらぼうに答えた。
その答えを受けて長身は腕組のほうを目だけで見る。
黙って頷く腕組。
4つの影は互いを見合うことがないままスッと姿を消した。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
翌朝、魔力の回復したヒーらが全力でトロッコを前進させていた。
距離を稼ぐことを優先しているため、坂や多少の起伏は無視して直進しているので乗り心地は最悪だ。
だが、その事にも文句をいうものはいない。
やはり先日の襲撃の影響は大きく、住民たちの顔は暗い。
「さぁ、皆様、目的地まであと8日ほどの距離です……もう少し頑張りましょう」
ジョセフが住民たちに気を配っている。
前回の襲撃以降、トロッコの舵はヒヨシマルではなくジョセフが握っている。
かなり辛い作業だろうが、彼なりに自分にできることを選択しているのだろう。
「セラ様」
「ええ……」
「……やれやれですぜ」
フォライーの言葉に軽く答えるセラとヒヨシマル。
3人は週芸が再び起きることを予感していた。
そして、その予想はそれから更に2日ほどの距離を進んだところで現実のものとなった。
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