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龍翔記  作者: GIN
533/693

0533話 門前の戦い その5

俺が毒によってグラついたのを見て好機と捉えた短剣使いは激しい攻撃を繰り出してくる。


「くっ!」


俺は刀を支えにしてなんとか立ち上がるとその攻撃をなんとか受け止めようとする。


だが、グラつく足には力が入らず、攻撃の勢いを止められない。


直撃をもらわないようにするだけで精一杯だ。


表情を一切変えずに攻撃を繰り返す短剣使い。


有利な状況や勝利が目前であることなどに対して一切の感情の起伏を見せない。


裏組織の暗殺者として十分に鍛えられていることが分かる。


それだけに油断をしている様子もなく反撃の機会を掴めない。


「リュウ、後ろだ!」


リュドミラの声が聞こえる。


後方から迫ってくる矢の存在に遅ればせながらに気付く。


「くっ!」


リュドミラが知らせてくれたおかげで直撃をなんとか避ける。


「チッ、数が多いよ!」


リュドミラはナイフの投擲によって弓使いを狙っているようだが、櫓の上の弓使いもそんなリュドミラを狙って反撃してきており、中々倒せていないようだ。


短剣使いは周囲の状況には影響されず、一切変わらず俺への攻撃を続けてきていた。


攻撃は速く息をつかせる間もないほど連続して繰り出されている。


しかもその一撃一撃が全て俺の急所を狙ってきている。


俺はグラつく視界と足元の状態で、それらの攻撃をギリギリのところで躱し続ける。


「……しぶといね」


初めて短剣使いを言葉を発する。


俺が予想外の粘りを見せていることに驚いているようだ。


「だけど……これで終わりだよ」


そう言うと短剣使いはこれまでの攻撃に加えて蹴りを織り交ぜてくる。


側頭部を狙ってきた蹴りを右腕でガードする。


細身の身体とは思えないほどの重い一撃だ。


更に短剣の攻撃は、これまでと変わらず激しい。


再び無言になり攻撃を繰り出してくる短剣使い。


かなり追い込まれた状態であることは間違いない。


体を蝕む毒。


短剣と蹴りを織り交ぜた正確な攻撃。


そして油断なく戦う意識。


この目の前の相手がかなりの強者であることは間違いない。


だが、俺もこのままむざむざやられるわけにはいかない。


こんなところで立ち止まっているわけにはいかないのだ。


アイリスの呪いもまだ解けていない。


そもそも最初の旅の目的すらまだ果たしていないのだ。


俺は老師の教えを思い出す。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


「どうしたリュウ!、動きが鈍っているぞ!」


「だ、だって老師!」


言い訳しようとした俺の頭に老師のゲンコツが落ちてくる。


「グエッ……!」


「だってじゃないわい!」


俺は今、老師との組手の最中だ。


手っ取り早い実践形式として組手はかなりの頻度で実施していた。


老師が行う組手はかなり実践を意識したもので様々なシチュエーションでの組手だった。


今日のシチュエーションはずばり不利な状態での戦いだ。


俺は両手を縛られた状態、老師は足を縛った状態での組手なのだ。


俺は両手を縛られているが足が自由な分、動きは早いが攻撃が蹴りに集中することで老師に簡単に見切られてしまう。


対して老師は足が縛られているため動きこそ最小限だが、俺が近づくと拳で反撃を繰り出してくる。


そして決め手となる攻撃を繰り出せない俺が不用意に近づいたときに老師が取った行動は俺が予想できないものだった。


足を縛られている老師は俺の蹴りを身体を反らして躱すと、そのまま逆立ちし、縛られた足を使って蹴りを繰り出してくたのだ。


蹴りによる攻撃をまったく意識していなかった俺はあっさりその攻撃を喰らい、そのまま意識を失ったのだ。


そして目を覚ました俺に老師が言ったのは状況に流されるな、相手の動きに惑わされるな、という言葉だった。


腕が縛られているからといって、足を縛られているからといって、その部位を使えないとは思わないこと。


足を縛られた老師が蹴りを使うとは考えていなかった。


縛られていない腕を足代わりに使うことも考えていなかった。


そのため対処が遅れ、モロに蹴りを喰らってしまったのだ。


老師はむくれる俺を見て、嬉しそうに笑っていた。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


教えられたことはごくごく基本的なことだ。


だが、未熟だった俺にとって、その教えは今も心に残っている。


そして今、毒に冒されて足がうまく動かない状況はあの時の老師と似た状況だ。


といっても老師の真似をして逆立ちするではない。


この状況に流されないことが重要だ。


短剣の攻撃は受け止められている。


苦しくなったのは蹴りによる攻撃が加わってからだ。


そしてその蹴りを受け止めてしまっていることだ。


視界もボヤケており、足元がふらついているのでまずは防御を優先したのだが、そもそも毒がいつ切れるかは分かっていない。


このまま耐えるだけでは、この探検使いの攻撃にいつか押し切られてしまう。


毒や激しい攻撃という状況に流されずに反撃する必要がある。


短剣使いの左のハイキックが俺の側頭部を狙ってくる。


腕でブロックしてガードする。


これまではそうしていた。


だが、今回はそれに反撃の意志を込める。


ハイキックに右の肘、エルボーを合わせる。


メキッという音が響く。


俺を倒すつもりで放ってきた蹴りが肘に当たったのだ。


短剣使いの脛の骨が折れたのが分かる。


「ぐっ……キサマ!」


予想外の反撃に短剣使いは軸足一本で後方にいったん距離を取った。


ぼやける視界で見えているのは片足で立つ短剣使い。


俺は毒によって視界と身体能力に制限を受けているが、短剣使いも俺の反撃で片足を骨折した。


これで多少なりとも状況を押し戻したと言えるだろう。


俺は刀を構える。


短剣使いは黙ったまま俺を見ているようだった。

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