0528話 門を守る騎士
非戦闘民が乗った馬車を守るため周囲を取り囲むように戦える仲間を配置したラウル。
脱出経路を確保するまでは馬車郡は少し離れた場所で待機しておき、そこではハルの結界で馬車軍郡を守る。
問題はその後だ。
馬車郡が脱出をする際には当然ながら動いて移動する必要がある。
この間はハルの結界で守ることができないのだ。
門の周囲を守る騎士を退けて扉を開け放ったとしても、弓兵や魔法兵などの遠隔攻撃を得意とする守備兵たちは俺たちを脱出させまいと攻撃をしかけてくるはずだ。
その攻撃を掻い潜り、無事に門を通り抜ける必要がある。
更に入ってきた通りなら外側にも騎士が配置されているはずだ。
弓兵なども居たはずなのでその射程範囲から離れるまで守り抜く必要がある。
この危険なゾーンを切り抜けられるかが重要なポイントになる。
門へと向かう最中、散発的に騎士と遭遇するが、それらの騎士はベルやイヴがすぐに倒していく。
さすがに拘束をする時間的余裕はないため、意識を失わせて隠しておくという対処になっていた。
そうこうしているうちに門近くの通りまでたどり着く。
その通りはモントロワでは『北門通り』と呼ばれている。
そこに繋がる角を曲がれば正面に門が見えるということになる。
通りに入れば、当然ながらこちらの様子も相手側からハッキリと見えるようになる。
守備をする騎士たちも警戒をするだろう。
間違いなく戦闘になるはずだ。
「リュウ、いよいよです」
「ああ」
「にゃー(ちょっと覗いてみるよ)」
さんじゅーろーが野良猫のふりをして通りから門のところの様子を確認する。
「にゃー(結構な数がいる……見えている騎士だけで20名近くはいる)」
「20名……小隊クラスですね」
「俺が入ってきた門だからな……警戒されたのかもしれないな」
「仕方ありませんよ、それより門を抜ける方法を考えましょう」
「さんじゅーろー、門は見えやすか?」
「にゃー(見えるぞ……でかい閂がしてあるな)」
外に出る者を警戒しているのだから門の鍵にあたる閂をしているのは当然だろう。
俺が入ってくる時は外で襲撃騒ぎを起こして、守備兵が仲間を呼ぼうと閂を外したタイミングでミノスが突撃して門を通り抜けたのだ。
このこともあり、おいそれと閂を外すことはないだろう。
「騎士を倒し、遠隔攻撃を掻い潜り、閂を外して、馬車群を連れて外に出る、その後は外の守備をくぐり抜け、安全地帯まで距離を取る……という認識であってますか?」
ラウルの言葉に頷く俺とシゲン。
「口で言うのは簡単ですがね……その一つ一つが高難易度でさぁ」
シゲンが頭をポリポリと掻きながら言う。
ラウルが言ったとおり、閂を守備する騎士団が外すことはないだろう。
魔獣から街を守るために作成されている門、そしてその門の鍵となる閂。
これを破壊することは難しいし、破壊してしまうと門が閉められなくなり、街に魔獣の被害が出る可能性もある。
それは俺たちの本意ではない。
俺たちが街を出た後はまたモントロワの住民を守るための門として、そして閂として機能してもう必要があるのだ。
破壊は目的ではない。
閂は外して出る。
「さて、では具体的にどうするか詰めておきやしょう」
シゲンが作戦を説明する。
「いい作戦です」
「……なるほど、ラウルが頼りにするだけのことはある」
「でしょう、シゲンはこれまでも我々の戦いの作戦を考えてくれていますからね」
「いやいや、あっし一人じゃないでしょう、旦那やさんじゅーろーの協力あってでさぁ」
謙遜するシゲン。
「ではシゲンの作戦通りでいきましょう」
「おう」
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
モントロワの日常は平和なものだった。
もちろん魔獣の襲撃などはあった。
それは主に下級貴族から構成された騎士たちが迎撃にあたっていた。
魔獣の襲撃が、この世界のどこで生きていても発生することだと考えると、それ以外の問題がなかったモントロワは間違いなく平和だったのだ。
そんなモントロワを、ここ数日激動が襲う。
まず発生したのが『瘴気溜まり』。
『瘴気溜まり』は大量の魔獣を生み出す人類にとっての災いでしかない存在だ。
モントロワも大量の魔獣に襲われた。
騎士や冒険者など街にいる戦えるものは全員で迎撃にあたった。
普段は下級騎士に戦わせている上級騎士たちも流石に剣を持って自ら戦いに出ていたほどだ。
街を助けようと奮闘した協力者たちの力もあり『瘴気溜まり』は鎮めたものの、街の被害は甚大だった。
家屋は大半が押しつぶされ、大量の被災者と孤児が生まれてしまったのだ。
そして続けて冒険者の捕獲命令だ。
領主からの指示で最近モントロワで影響力を増していた商人の屋敷への襲撃命令が出たのだ。
しかも、その内容は屋敷にいる冒険者たちを全員連行してくること、理由は不問という不可解なものだった。
そして街の封鎖。
住民を含め、誰も中から出すなという命令だ。
外からの襲撃を受けたが、まだ中からは誰も出してはいない。
さらに街の哨戒。
何を警戒すべきなのかは教えられていないが、住民には通りに顔を出さないようにお触れもだされている。
そのため通りにいるものは全員声をかけて怪しいなら斬っても構わないという命令だった。
屋敷への襲撃も門の封鎖も街の哨戒も全て不可解な命令だ。
だが、領主の命令は絶対。
騎士たちはそれぞれの担当となった場所で指示された任務についていたのだ。
領主からのお触れもあるなかで街を出ようとする住民はいない。
商人や冒険者からの不満は出てきているようだが、領主の許可がないと街を出ることはできないという問答が繰り広げられていると聞いている。
そんなところに配置されなくてよかった。
門を守る騎士はぼんやりとそんな事を考えていた。
門の外での襲撃騒ぎがあった関係で門を守る騎士の数も増えている。
「まったく……暇でしょうがない」
ふわぁっと欠伸をした騎士が、再び目を開けた時にその視界に映ったのは剣を構えて突撃してくる剣士の姿だった。
お読みいただきありがとうございます。
もし気に入られましたら、
ブックマーク登録や★評価、いいねを頂けると
モチベーションに繋がります!
よろしくお願いします!!




