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龍翔記  作者: GIN
529/693

0529話 門前の戦い

「なっ、なぁっ!」


剣を構えて突撃してくる剣士を見た騎士が声にならない声を上げる。


慌てて腰に刺した剣に手をやるが、それを抜く暇はなかった。


「どけっ!」


勇ましい声が聞こえたことで、剣を抜くのは間に合わないと考え、身を固める騎士。


これが戦闘経験の高い騎士ならばこのような行動は取らない。


身を固めるくらいなら逃げたほうがマシだし、顔を庇うように腕でガードしてしまうと自分の視界をも隠してしまうからだ。


だが、恐怖を先に感じてしまうと身体が強張ってしまい、このような行動を取ってしまう。


そんな騎士の様子を見たベルはその騎士を前蹴りで蹴り飛ばす。


「ぐぁっ!」


「て、敵襲!」


「門を通る気だぞ!」


「守れ守れ!」


騎士の一人が倒されたのを見て、他の騎士たちがざわつき始める。


「敵は何人だ!」


「ひ、一人だ!」


「なんだとっ!」


向かってきたのがたった一人と聞いて驚きの声を上げる門を守る騎士たち。


門を守る騎士は総勢30名。


かつ周囲の櫓などに弓兵や魔法兵などが配置されている。


更に馬よけの串付きのバリケードなども用意されており、体制としては万全だ。


そんな門に向かってくるという状況からして外へと向かう気だと考えられるが、それを成し遂げるには一人という人数はあまりにも少ない。


だが、そんなことはどうでもいい、と門を守る隊長を任命されている騎士は考えた。


「一人ならさっさと捕らえよ!、騎士は正面から、遠隔兵は後方を狙い退路を断て!」


「はっ!」


騎士隊長の指示に従い、数人の騎士がベルの前に立つ。


「一斉にかか……!」


攻撃の号令をかけようとした騎士隊長の後方で爆発が起こる。


ドォンという爆音とともに舞い上がる砂煙。


「何だ、何が起こった!」


騎士隊長の苛立った声をあげる。


「と、突然、爆発が……」


「くっ……閂はどう……!」


状況を確認しようとした騎士隊長の声を遮るように再び爆音が響く。


「う、うわぁぁっ!」


門の左右に立てられた櫓に乗る兵たちの声が聞こえる。


櫓を支える支柱の一つが折れ、櫓が傾いている。


上に乗っていた弓兵は落ちないように必死に崩れる櫓に掴まっていた。


「くそっ……いったいどうなってやが……」


再び状況を確認しようと視線を動かす騎士隊長の目に移ったのは、さきほどまで立っていた女剣士とその周囲に立つ3人の姿だった。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


「まったく……」


俺は横に立つベルを軽く睨む。


俺の視線に気づいたのかベルは小さく舌を出していた。


「作戦はどうした?」


「あー……でも突撃するって話しだったよな?」


「そうだが、一人で突撃する作戦じゃなかっただろ」


「……そうだったな」


「まったく……一人で突撃して怪我でもしたらどうするんだ」


「……心配してくれるのか?」


俺の言葉に不思議そうな顔をするベル。


「……当たり前だろ?」


「そ、そうか」


急に顔を背けるベル。


「どうした?」


「な、なんでもない!」


「……くくっ、悪魔娘も純情だね」


「まったくだ……これから戦いだというのに」


イヴとリサが呆れながら言う。


「う、うるさい!、誰が純情だ!」


ベルがムキになって二人に反論している。


「まぁまぁ、分かったからさ」


「そうだな、今更だろ」


「うるさい、うるさい!」


「おい、そろそろ戦闘開始だぞ」


騎士たちが剣を構えながらこちらの様子を伺っている。


爆発が起き、櫓の一つが倒れ、そこに俺たちが現れた。


俺たちの目的は分かりきっているだろう。


「お、おいっ!、貴様ら!」


騎士隊長と思しき男が話しかけてくる。


「……なんだ?」


俺が代表して答える。


「お前たちの目的は……聞くまでもないな……」


「そうだろうな」


「……領主様の命令で門を開けることはできない、しかもお前たちは敵対の意志があるようなのでこのまま帰すわけにはいかない、大人しく投降しろ」


「断る」


「だったら力付くで拘束するだけだ……こちらは小隊レベルの騎士に加え、遠隔攻撃もある……痛い目に合いたくなかったら……」


「ぐぁぁっ!」


騎士隊長の言葉を遮るように兵の悲鳴が響き渡る。


崩れていない方の櫓から弓兵の一人が落下してくる。


「まったく……」


俺の視線に先にはナイフを持ちながらニヤリと笑うリュドミラの姿があった。


「く、くそっ、敵はやる気だ、一斉にかかれ!」


騎士隊長の命令に従い、騎士たちが一斉に襲いかかってきた。

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