0527話 最後の準備
「ここかっ!」
「おい、大人しく……!」
俺の後を追いかけてきていた騎士が5名ほどでマクシミリアンの屋敷の門のところに到着し、俺たちに向かって投降を呼びかける。
だが、その言葉は最後まで言うことはできなかったようだ。
騎士の目に写っているのは俺たちが馬に跨がり整列している姿だろう。
俺たちの姿は出陣前のように見えただろう。
「なななっ!」
「な、何をしている!」
騎士のうち俺たちの様子に驚いた2名の騎士が尻もちを付く。
残りの3名は剣先を俺たちに向けたままジリジリと後退しつつ、それでも大人しく投降するように叫んでいた。
「はぁっ!」
正面に立つ俺やラウルに注目していたためか自分たちに向かっているベルたちの姿は目に入っていなかったようだ。
ベルの蹴りが無防備な騎士の側頭部に直撃する。
「がっ……は……」
うめき声を上げて倒れる騎士。
「なに!」
「い、いつの間に!」
仲間が倒れた様子を見て驚きの声を上げる2名の騎士。
「ぐぁっ!」
「が……」
続けてその騎士たちも倒れる。
「油断しすぎだって」
「確かに」
イヴとリサがベルに気を取られた騎士たちを昏倒させたのだ。
そのまま残っている2名の騎士に声をかけるイヴ。
「あんたらはどうする?」
尻もちをついている騎士たちは既に戦意を喪失しているようだ。
件から手を離すと、両手を上げる。
「降参する」
「い、命だけは……」
その怯えた姿を見てイヴは軽くため息をつく。
「安心しな、拘束はするが命までは取らない……あたいらが遠くにいくまで大人しくしておいてもらえればいいさね」
「わ、分かった……」
「言う通りにするから」
「りょーかい、んじゃ、縛っちまうから大人しくしてなよ」
イヴは尻もちをついていた騎士を素早く後ろ手に縛り上げる。
「3分だけ待っといてくれ」
イヴの言葉に俺は頷く。
イヴは2人の騎士を館の中に連れて行く。
意識を失った騎士たちはアーガスらが抱えて運んでいった。
「こ、これは……!」
「まさか……強襲班か……」
別働隊がある商人の屋敷を襲撃に向かったという話しは聞いていたようだ。
だが、その後は自分たちも任務を任されたため、どういう結果になったかは知らなかった。
そして、その答えが目の前に広がっていたのだ。
全員が後ろ手に縛られ、両足を拘束されていた。
頭から大きな布袋が被せられている。
この布袋の目的は視界の遮断だ。
意識が戻っても視界が効かなければ、行動には制限がかけられる。
こうすることで時間稼ぎができるというわけだ。
「あの鎧はアペルサッチ小隊長どの……」
「意識を失っているだけさ」
「まさか小隊クラスの騎士団を全滅させるほどとは……」
「お前たちはいったい?」
「知りたいかい……いいけど知ったらそれなりに覚悟しておきなよ」
「……い、いいや、いい」
「さぁ、さっさと拘束してくれ、そして大人しくしているから……」
「ああ、そうしてくれ……こっちも余計な手間はかけたくないんでね」
そう言うとイヴは2人の騎士の両足を拘束する。
ギチギチに縛られ、身動きできない騎士たち。
「水と食料は隅に纏めて置いてある……命に影響はないように対処してあるから心配するな」
イヴの言葉が理解できずに小首をかしげる騎士の二人。
「んじゃぁな、達者で寝ろよ」
そう言って騎士たちの後頭部を強く叩くイヴ。
その衝撃で騎士たちは意識を失った。
「あとはこれを被せて……と」
他の騎士たちと同じように布袋を頭から被せて寝かせておく。
アーガス達が連れてきた意識を失っている騎士も同じように並べておく。
意識を失った騎士たちが寝かされているのは屋敷の一階にあるリビングに当たる部分だ。
屋敷を狙ってきた騎士たちで投降したレオナ以外の騎士は全員、ここで寝かされている。
先に開放すると街を守備する騎士の数が増えるかもしれないのでチーム:龍翔<ドラゴニア>が街を出るまではここで大人しくしておいてもらうためだ。
マクシミリアンの屋敷を狙って騎士団を差し向けてくる相手なのだから、当然第2陣が来ることも考えられるし、単純に屋敷を捜索する部隊が派遣されてくることも考えられる。
それらの部隊がこの騎士たちを発見し、救出する想定だ。
また首尾よくチーム:龍翔<ドラゴニア>が街を脱出した後は、トリスタンら隠密部隊がそれとなく騎士団に情報を漏らし、救出へ向かわせることにもなっている。
目的は彼らの命を奪うことではない。
廊下へ通じるドアは少し開けておく。
合わせて玄関も同じく少し開けておく。
こうすることで角度によっては外から中を確認できるようになり、中にいる騎士たちを発見しやすくなるだろう。
「さて、と」
準備を終えたイヴは再度、自分に充てがわれた馬に跨る。
「待たせたね、万事問題ないよ!」
イヴの宣言により、全ての準備が整った。
そして、チーム:龍翔<ドラゴニア>は前進を始めたのだった。
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