0521話 モントロワの動き
「うぉぉぉっ!」
雄叫びを上げながら襲いかかってくる覆面の信者。
「どけっ!」
ガブリエルの拳がその信者の顔面に決まり、そのまま仰向けに倒れる。
「こっちだ、リュウ、テレーザ!」
「ああ!」
ガブリエルが道を開けるために信者たちを倒していく。
俺も迫ってこようとする信者に剣先を抜けて牽制しつつ、それでも襲いかかってきた信者は容赦なく斬っていく。
「ぐぁっ!」
「ぎゃっ!」
悲鳴を上げながら倒れる覆面の信者たち。
既に倒れている信者たちもいるなか俺たちはマルタンの元までたどり着く。
「おつかれ、リュウ」
「ああ……あの倒れた者たちはマルタンの仕業か?」
「うん、ちょっとね……飲み物に薬を仕込んで休んでもらったよ」
そう言いながら懐から小瓶を取り出し、軽く振って見せるマルタン。
「あの人数を抑えるのは難しいでしょ、だから間引いといた……と、いってもしばらくしたら起きるから急いで逃げよう」
「ああ」
教会の外にも覆面の信者は数人いたが、すでにマルタンが制圧済みであり、拘束されて寝転されていた。
「ここで暫く時間を稼いでから追いかける、先に行ってくれ」
そう言って教会から出ようとする覆面の信者たちを倒していくガブリエル。
「ガブリエル!」
「大丈夫、いざとなったら逃げる手段も私にはある」
「すまない……後でな」
俺はガブリエルの背中にそう言って駆け出す。
「ああ、後でな」
こうして俺たちは教会を脱出する。
向かう先はマクシミリアンの屋敷だ。
マルタンの先導で俺とテレーザ、そしてシェリィは脇目もふらずに全力で走った。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「よし、これくらいでいいだろ」
「そうだな」
モントロワの門で襲撃騒ぎを起こした後、リュウが中に入ったのを確認して撤退したガイルとミノス。
二人は追撃を振り切ると街道横にある高台に身を隠していた。
モントロワからは一定の距離があり、街中の喧騒などは聞こえない。
だが、高台であるため、中の様子を見ることはできていた。
街はひっそりとしており、出歩いている住民の数も少ない。
そして騎士が巡回をしている様子が見えていた。
「随分、警戒しているな」
「ああ、中ではかなりの騒ぎが起きているのだろう……そこに我々の襲撃だからな、より警戒が強くなったのだろう」
「ふっ……とはいえリュウを中に入れるにはああするしかなかったしな」
「ふむ、それは同感だ、首尾よく中に入れたのだし、作戦自体は成功だろう」
「あとは……」
そう言ってガイルは後方に目をやる。
「あれだな」
「ああ、だが、これだけ集めれば十分だろう」
「段取りはどうだ?」
「問題ない……」
そう言ってミノスは足元に伸びているロープに目をやる。
そして同じようなロープがガイルの周りに何本か見えていた。
「コイツを斬ればいいだけだ……試してはいないが、中身は簡単なものだから問題ないだろう」
「土木が得意なミノスが大丈夫と言うなら大丈夫だろ」
「そうだな」
「さて、こっちは言われたことは全部、終わったぜ……次はお前の番だ、リュウ」
ガイルは奇妙な静けさをみせている眼下のモントロワに向かって呟いた。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「そんな!」
「私たちはどうなるのですか?」
「……皆さんは被害者という扱いになると思います、そして被害者だと言い張ってください、そうすれば危害を加えられることはないでしょうから」
「そんなことすれば、あたなたちが……」
「構いません……我々は冒険者です、ここを離れて別の街へ行くだけですから」
ラウルはそう言うとカトリーに目をやる。
「この街の冒険者ギルドへは話しを通してあります、まずは事態の推移を見守るということで、すぐに我々が資格停止になったりすることはありません」
「ありがとう……」
カトリーの報告を聞き、ラウルは住民たちに向き直す。
「お聞きのとおりです、我々がこれまで積み上げてきた実績などもあり、冒険者ギルドは表立っては居ませんが味方してくれていますで、ですので我々は大丈夫です」
「しかし、私達が被害を訴えることであたなたちに不利になるのでは?」
「私たちはチーム:龍翔<ドラゴニア>に救われたんだ……足を引っ張るようなことはできない」
「ありがとうございます、ですがそうすれば皆様に危害が加えられる可能性があります、私達としては自分たちの評判より、そちらのほうが気になるのです」
「……なんてこった、互いに相手を思いやるからこそぶつかるとは……」
「しかし、ここの領主は一体、何を考えておるんじゃ……」
口々に領主に対しての不満を口にする住民たち。
マクシミリアンの屋敷の離れに避難していた住民たちは、急遽チーム:龍翔<ドラゴニア>が街を離れることになったと聞く。
厄災から数日、ようやく動揺も収まったタイミングだったので、最初、住民たちは怒りを見せた。
追い出されると思ったからだ。
だが、ラウルの説明を聞いて住民たちは困惑する。
街を離れる理由はモントロワ領主とのトラブル。
トラブルの原因は被災者である住民を保護したことが住民を惑わせたと判断されてしまったこと。
そして、そこにイムロット教も絡んできたことでモントロワで活動するのは難しいと判断したのだ。
リュウの許可はまだ取っていないが、状況を報せにカスミとミカエルが向かった。
危険なモントロワに留まるという判断をリュウが下すとは思えないとラウルは考えていた。
「あなたたちは、モントロワを出てどこへ行かれるんだい?」
「国境線は封鎖されているだろうから、ブラウカ王国方面へは抜けられないよ」
「……そうですね……最初は国都ラマティアへ向かうつもりでしたが……それも危険でしょう」
ラウルは少し考える。
「行くアテはあるのかい?」
「……そうですね、なくはないです」
この時、ラウルの頭に浮かんでいた行き先はスーシアン東部にある自らの領地だ。
自身を狙う暗殺者の存在があるため、帰還を先延ばしにしていたのだが、この状況ではそうも言っていられない。
まずは落ち着ける場所へ移動し、身の潔白を証明する必要があれば、それに対応していくことになる。
「ラウルさん?」
「どうしたんだい?」
「ああ、すみません、少し考え事を……行き先はありますのでご心配なく、この屋敷の物は自由に使ってよいと館主のマクシミリアン卿も言っておられましたので当面の生活に困ることはないかと思いますよ」
「それはありがたいのじゃが……」
「領主が我々のような民のことを考えて助けてくれるかのう……」
「……無理……じゃろうな」
「わしらが領主を嫌っていることを領主自身も知っているからの……自分を嫌っている者を助けるような男ではないわ」
「モントロワは……わしらはもう終わりじゃ」
「……」
口々に領主への不満と将来への悲観を口にする住民たち。
本来はもっと強いのだろうが、厄災にあい、少し弱きになっている面もあるのだろう。
「……皆さん、私から一つ提案がありjます」
口を開いたのは住民側としてこの会談に出席していた厄災が起こった際にカミュに助けれた女性だ。
「どうした?」
「なにかいい案があるのか?」
「領主の交代は無理じゃぞ……ここは世襲で領主が決まっておる」
「ええ、私もモントロワの住民ですから領主の交代が難しい事は知っています……そうではなくて……」
女性は意を決して顔をあげるとラウルを見ながら言う。
「ラウルさんたちチーム:龍翔<ドラゴニア>の皆さんには行く先がある様子……であれば私達もモントロワを捨て一緒についていきませんか?」
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