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84 飯行こうズ。実は飯行こうぜの誤字を放置した結果(笑)

「マンドラゴラは一見、動物のようにも見えれば……植物のようにも見える……。しかし通常の動物植物とは異なり、魔力なしには成長しない……」


マンドラゴラの話を進めるルーカスの授業で、ミリーはちらりと前方の席を見る。前の方ではネルカがノートを広げ、ペンを持ち、一見ルーカスの話を聞いているように見えるが、実際のところ集中できていないようだった。ウトウトこそしていないものの、疲れていると言うか、心ここにあらずという感じで、表情こそ見えないものの、何かに気を負っているのがよくわかる。


隣ではゲイルが懸命にノートをとっており、ルーカスの話を聞いていた。授業中、ゲイルは意外と他事を考えることが少なく、ネルカのことに気づいてはいるだろうが、少なくとも心配しているような素振りは見せていない。ゲイルがそういう人間ではないと分かっているものの、授業中にネルカを気遣っている様子が見てとれないため、気にしてないのではないかと心配になってしまう。そして彼が冷たい人間だと考えてしまう自分に嫌気がさし、思わず頭を横に振ってしまう。


「そこで私は……。マンドラゴラが動物でも植物でも……、そして魔物でもなく、魔法の輪郭に有機化合物が付着した1つの魔法陣であると仮説をたてた……」


壇上ではルーカスがとんでもないことを言い始め、生徒たちがざわざわと声をあげ始めているが、その後ろの席で、ミリーはネルカとゲイルを交互に見ていた。




その日のルーカスの授業では結局ミリーもまた授業に集中することができなかった。


「では次回……、なぜ人間は魔法を使えるのかについて説明しよう……」


気がつけば授業は終わり、ルーカスの姿が壇上から消えている。ハッと我にかえったミリーはすかさずゲイルに話しかけようとするが、その前にゲイルが席を立って、前の方へと行ってしまった。


「おーい!リズ!飯行こうズ!」


誰の目にも明らかに落ち込んでいる、或いは調子が悪い、或いは不機嫌そうなネルカ相手に普段通り声をかける辺り、さすがはゲイルだとクラスメイト達は感じていた。


さすが空気を読めない男、ゲイル!略してさすゲイ……。


一方のミリーは、普段なら真っ先に自分に声をかけるはずの彼がネルカを優先したのを目の当たりにして、実はかなり気を遣っていたのだと分かり、内心ホッとしていた。


ただ、それも(つか)の間で、ほんの一瞬ネルカの肩がビクリと揺れていたのが目にうつった。


すぐには顔をあげず、ゆっくりと顔を見上げ、ゲイルの顔を見る。ミリーの席からは授業中彼女の横顔は見えない。授業後初めて見た彼女の顔は、何かを思い詰めているかのようだった。


「飯行こうズ!」


再びゲイルが誘うと、ネルカは腕をくみ、考え事に耽るかの様子を見せる。その様子は思い悩んでいる様子から悩んでいる様子へと変わったかのようだった。


「飯行こうズ!」


「分かってるからちょっと待ってよ」


3度目の誘いに初めて返答を見せる。その様子に苛立ちは見てとれず、今日初めて彼女の失笑と苦笑が混じった笑みを見てとれた。


その瞬間、教室内の空気はほんの少し落ち着いたものへと変わった。


「飯行こうズ!!!!!」


「ああ、もうわかったから!付き合うから!まったく、男の子なんだから女の子の返事くらい待ってよー」


ネルカは苦笑を漏らしながら立ち上がり、「行こっか」と先に扉へと歩いていった。


「ミリー!俺は俺で飯食ってくるからそっちはそっちで友達とでもとってきてくれ!ファーノ!頼んでいいか?」


「はい。構いませんよ?」


ミリーの昼食の予定を勝手に決めてしまったゲイルだが、ファーノの了承もあったため、今更断ることができず (尤もミリーも断る気がなく)、素直にコクりと頷いた。


その瞬間、ミリーを食事に誘う機会を逃したと悟ったクラスメイト達はガクリと肩を落とすのであった。


ゲイルとネルカの姿が見えなくなったと同時にファーノがミリーに声をかける。


「折角の機会なので久しぶりに二人で食事をしませんか?」


「はい。よろしくお願いいたします」


その会話を耳に入れたノエルは自分も機会を逃したとガクリと肩をおとし、彼女を慰めるように背中をさするアインもまた、残念そうな表情を浮かべるのだった。

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