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77 過労ドナフト

カロゥはくたくたになりながら食堂の配膳列に並んでいた。午前の授業はバルトの政治学だったが、Bクラスの騒がしさに怒ったバルトが教室を出ていってからが地獄だった。


「サッカーしようぜ!」


クラスメイトが突然そんなことを言い出したのだ。


グラウンドに飛び出し、クラスメイトみんなでキックオフ!











……………………。











もし、そうだったらどれ程気が楽だったことだろう…………。


さすがはCクラス。


教室内で始めたのだ。


サッカーという名のなんか別の球技を。


女子生徒が「教室の壁とボールの弾力性を1にして摩擦係数を0にしたらどうなるのかしら?」と言い出すと別の女子生徒が「この為に魔術があるのよ!」と言い出し、教室とボールに魔術をかけた。弾力性1、摩擦係数0になるように。


「ちょっと!みんな!!!?まだ授業中だよ!!!!!」


慌てて止めに入ったカロゥの言葉に返ってきたのは。


「だって自習時間よ?」


黒板にかかれたバルトの「自習」と言う文字。


そうだけどそうじゃない。


そして始まるキックオフ!


男子生徒が蹴飛ばしたボールは壁に当たって跳ね返り、机と傍にいた生徒達 (男女問わず) をなぎ倒し、少しずつスピードを落としながら、壁に当たってを繰り返して最後はコロコロと床を転がった。その時点でクラスメイトの3割が轟沈。


「…………おかしいな。摩擦係数0ならスピードが落ちるなんてことないはずなのに」


キックオフを始めた男子生徒の言葉に「お前、バカだろ」と声が飛ぶ。


「空気抵抗考えてない」


「なるほど!」


なるほどじゃない。


「なら教室内を真空状態にすればいいんだな!」


「バカじゃないの!そんなことしたら私たちが息できないどころか身体が破裂しちゃうじゃない!」


今度は女子生徒が非難の声をあげる。


いよいよ不味(まず)くなってきた気がしたカロゥはそーっと教室から逃走を図ろうとした。というか、誰か教員を呼ばないと被害が拡大する気がしていた。


「だったらどうすればいいんだ!!!」


「そんなの弾力性を2にすればスピードが落ちないわよ!!!」


女子生徒の言葉にその手があったか、と手をポンと叩く男子生徒。すぐさま壁とボールの弾力性を2にした。


そして始まるキックオフ!!!


さて。


物理学が苦手な読者諸君。


弾力性について簡単な解説を。


例えばボールを時速10キロで垂直に壁にぶつけたとしよう。この時、跳ね返った時のボールの速度が10キロで帰ってきた場合、壁 (とボール) の弾力性は1と言われている。つまり、壁の弾力性を2にしてしまえば、ボールは2倍の速さで返ってくるわけで…………。


さらに、ボールの弾力性も2にしている。つまり相対的に見れば、時速10キロの速さで壁がボールに近づいてくるわけだから、相対的に見れば壁も時速20キロの速さで離れていくわけで……。


つまりぶつかったもの同士の弾力性が互いに2なら、たぶん時速40キロの速さで跳ね返る。もしかすると時速30キロかも?ごめん!俺も物理は苦手だったんだ!(*´∀`)♪




まあ、何が言いたいかと言うと、壁にぶつかるたびに、スピードの上がるボールになるわけだから…………。


ボン。


ガン。


ゴン、ゴン、ゴゴゴゴ!


「びゃっ!」


「ギャッ!」


「あんっ!」


「ちょっ!グェッ」


パリーン。


勢い任せのボールは教室内の生徒全員をなぎ倒し、最後にはカロゥに扉を突き破らせ、そのまま3階の廊下の窓から彼を放り投げたのだった…………。




肉体的にも精神的にもボロボロのカロゥ。このままじゃ本当に過労死するんじゃないかなぁ……。


「あ、あの……」


昼食を手に空いてる席を探しているところで、声をかけられたので振り返る。


「えぇっと……。君は…………」


「フォアワード侯爵家の奴隷のミリーです」


何となく覚えがあると思えば、あのミリーかと思い出した。


「初めましてでいいんだよね?僕はカロゥ。ゲイル君の友達だよ」


「はい。よろしくお願いいたします!…………本当に友達いらしたんですね」


最後のボソリと聞こえた言葉の意味を何となく察したからこそ、カロゥは聞こえなかったふりをした。


ちらっと見れば、有名なネルカを除けば皆見知らぬものばかり。ゲイルがいないことに疑問を持ちながらも、自分が割って入る理由はないと思い、「また今度」と言って立ち去ろうとした。


「あの!もしよろしければ……。ご一緒しませんか……?」


ミリーの言葉に振り返るも「今日のところは遠慮しとくよ」と返す。


「むむ?ミリーちゃんの誘いを断るとはいい度胸してるなー」


ミリーが誘われてるところは不満げにするくせに、ミリーの誘いを断ることにも不満を見せるネルカ。どないしろと。


「あはは。今日はクラスで色々あってね。一人でいたいんだ…………」


彼がCクラスであったことを思い出した面々は何も言うことが出来なかった。


ミリー達のテーブルから離れていくカロゥの後ろ姿は、まるで哀愁(ただよ)う独身男性のようで……。


((((((Cクラスじゃなくてよかった…………))))))


ミリー達の心境を一致させるには十分なほど、言葉の重みを感じさせられていた…………。

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