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最強の相棒はスライム  作者: ニコラス
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第46話 焼け野原

リュートの咆哮で、戦場の大気がバリバリと鳴り響く。

帝国軍は、開戦とともに全速前進で突撃するつもりだったのだろうが、リュートの咆哮で先頭が足を止め、将棋倒しのようにどんどん倒れていく。

これだけでも成功と言っても良いくらいだ。

しかしそこまで甘くはない。

これは戦争なのだから。

オレは、黒炎を手のひらに集め、リュートも大きく息を吸い込んで、ブレスの用意をする。

タイミングを合わせて、オレとリュートは攻撃を放つ。


「リュート!合わせろよ!!『黒炎・流星』!」

「任せろ!!グォー!!」


リュートの口から一閃、大地が割れんばかりのブレスが、帝国軍の先頭から消滅させていく。

文字通り、ブレスが通った跡には焼けた土しか残っていなかった。

オレが放った『黒炎・流星』は、土砂を退かした際に使った、『黒炎弾』を小さくし、雨のように降らせる攻撃だ。

小さいと言っても、一つ一つは直径1メートルはある。

直撃すればひとたまりもないだろう。

オレとリュートの攻撃は、ハーラルト公から合図があるまで続く予定だ。

上空からの攻撃に、成す術なく、逃げ惑うしかない帝国軍。

王国側の前衛も、黒炎に焼かれていく者、ブレスで跡形もなく消滅する者を見て、どう思ったかはわからんが、カタカタという音を身体の震えで響かせて、立っていた。

そろそろ初手の一撃を締めくくろう。

オレとリュートは、上空から戦場の王国軍の前衛の前に降り立つ。


「王国軍よぉ!攻め時だぁ!!突っ込めぇー!!」

「「「こんなん熱くて通れないわぁ!!」」」

「へっ?」


良く見れば、オレ達が攻撃した場所は焦土と化し、未だ高温を保っている。

普通の人、まして鎧を着けた兵士が進めば、焼けてしまうだろう。

兵士達が進めるように、水魔法を使って冷す。


「『水散布(スプリンクラー)』これで通れるだろ?突っ込めぇー!!」

「「「うぉおーー!!」」」


改めて王国の兵士達が突っ込んでいく。

帝国軍とだいぶ数を減らせたようだ。

3分の1は減らせただろうか。

後はパニックになった残り十万を、立て直す前に潰すだけだ。

追撃するために、隊列の間から騎馬隊が出てくる。

遊撃のために控えていた騎馬隊だ。

馬上から槍で帝国兵を貫いていく。

もちろんこちらの被害も皆無ではない。

歩兵は捨て身になった帝国兵の剣に、騎馬隊は貫いた帝国兵の最後の抵抗に倒れる。

初めこそ勢いで帝国軍を減らしていけたが、徐々に我に返った帝国兵が増え、数に押され始めた。


「ちょっとまずいなぁ。伯爵に連絡とるか。『連絡(コンタクト)』」

『伯爵様、戦場はけっこうまずい状況です!伯爵様の警護をグスタフ達に任せて、カイルとドロシーとで突っ込んでも良いですかね?』

『かまわん!負けては意味がない!すぐに向かわせる!』


リュートには味方を攻撃しないように暴れろと指示を出し、オレは帝国軍に突っ込んでいく。

王国軍の兵士には、オレより下がってもらうように頼み、黒炎の翼を横に薄く伸ばして、ブルドーザーのように押し込んでいく。

黒炎を薄く伸ばしたおかげで、四肢や頭が焼き切られ、今生の別れを胴体と告げた者ばかりだ。

これだけで楽に片付けることができるが、万を越える相手にそれをするのは、さすがに飽きてしまう。

およそ五千の身体を切り分けた頃に、カイルとドロシーが合流、二人にはそのままコンビで暴れてもらうことにした。

ちょうどタイミング良く、スペンサーからも連絡が来て、いつでも奇襲が可能だということなので、魔物小隊も突撃させる。

奇襲の様子が気になるオレは、カイルとドロシーにこの場を任せて、スペンサー達の戦いを観戦しに行く。


上空から戦場を観察しながら向かったのだが、帝国軍の各部隊の隊長の様子がおかしいのに気付いた。

普通なら大声で指示を出し、自分でも剣や槍を振るうのだと思っている。

しかし、どの部隊の隊長も、虚ろな目をして、ぼぉーっと馬に跨がっているだけだ。

まるで感情のない人形のように。

それも気になるところだが、スペンサー達の戦いへ急行する。


『スペンサー!上で見てるからがんばれよー!』

『うわっ!失敗できない!!』


帝国軍の本陣の後ろまで回りこみ、静かに接近していく魔物小隊。

本陣なだけあって守りは硬く、前線の兵士よりもやり手が多そうだ。

空から見ると、フローラ王女も家紋が入った鎧を身につけ、戦況の確認であたふたしていた。

その姿は、とても指揮官には見えなかった。


『スペンサー!今だな!指揮官は慌ただしくしていて、周囲の警戒は薄そうだ!』

『了解だ!』

「行くぞー皆の者!!突貫!!」

「「「うぉぉーー!!」」」


魔物達の声が混ざり合い、周囲に響いた。

突然の魔物の襲撃に、帝国の本陣はパニック、フローラ王女に至っては、空からでも目尻に涙を溜めているのがわかった。


『スペンサー!フローラ王女は殺すな!できるだけケガさせずに捕らえろ!』

『了解!』


魔物小隊は、先頭にゴブリン、その後ろにオーク、最後尾にオーガ、その周囲をナーガという編隊になっている。

さすがに魔物の襲撃は予想していなかったようで、手練れに見える兵士も焦りからか、ゴブリンに苦戦していた。

そして、一匹に苦戦すると後ろからさらに巨体のオーガとオークに潰される。

魔物小隊による奇襲は成功と言っていいだろう。

実のところ、この奇襲で本陣を落とすつもりはなかった。

パニックを起こしたかったのだ。

しかし、いるはずの人物が見当たらなかった。


『どうやら成功のようだな、スペンサー!!』

『ありがとうございます!敵の部隊が応援に来はじめているので、頃合いを見て撤退します。』

『了解!オレもそろそろ『ご主人様!!カイルがやられそうなの!お願い!早く戻って来て!!』


オレの言葉を遮るように、ドロシーが切羽詰まった声で連絡してきた。

カイルがまずい状況らしい。


『何があった?!カイルならその辺の兵士に負けるわけないだろ?』

『小さい女の子にボコボコにされてるのよ!!お願い!カイルが死んじゃう!早く!』


小さい女の子というワードに、嫌な予感を感じ、急いで戦場に戻る。

カイルがやられる程の強者が、この戦争に出てくると思っていなかった。

ドロシーの補助魔法もかけて戦ったはずのカイルが、負けるということはオレもしんどい。

全力を出さなきゃ倒すのは無理だろう。

すごい速さで戻ってきた戦場の姿は、焼かれて真っ黒だった。

真っ黒な草原の中で、倒れたカイルと、それを庇うドロシー、二人と対峙する小さな人影。


「カイル!!生きてるか?!」

「か、辛うじて……アイツに会うと思わなかったです……ご主人様……全力出してください」

「あぁ、わかった!オレに任せろ!!」


オレはそうカイルに告げ、小さな人影と向かい合う。

やはり思ったとおりの人物が立っていた。


「やっときた!ボクの王子様!!ボクと一緒に、仲良く殺し合いましょう!!」


その人物とは、過去に戦った中で、最強の敵だった。


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