第44話 強者
「君はもしや、プレイヤーなのか?」
「えっ?」
呼び止められた男に言われた一言は、衝撃的だった。
一度もそのようなことを匂わせたつもりはない。
この場で話したのは、テイマーだということと魔物達の話だけだ。
それだけでゲームから転移してきたことがわかるはずがないと思っていた。
そもそもプレイヤーという存在を知っている者がいるとも思っていなかった。
この世界に来てから、図書館で調べたが、プレイヤーという言葉は一言も出なかったからだ。
「そ、それはどういう意味ですか?」
「そのままの意味だと思うが。君が只者じゃないとすぐわかったし、レベルも尋常じゃない。」
「レベルまで……もしかして『鑑定』持ちですか?」
「その通りだ。ドラゴンの話が出た辺りで、勝手に見させてもらった。」
ちなみにプレイヤーという称号はない。
普通に見ただけでは判断できない。
しかしそれは、レベルやステータスが、常識の範囲内であればだ。
オレの場合、レベルが100の時点でアウトだろう。
そして、ドラゴンを使役していることも要因だ。
この世界のテイマーは、レベルが低いこともあるが、ドラゴンのテイムに成功したものが、報告されたことがないらしい。
ドラゴンに乗る竜騎士も存在するが、実はドラゴンではなく、下位種のワイバーンであることがほとんどだ。
上位種であるドラゴンは、テイマーのレベルを40まであげなければ、厳しい。
それはテイマーが、他のジョブに比べてステータスが低くなりがちだからだ。
普通、魔物をテイムする際は、戦って弱らせ、自分の力を認めさせ、『テイム』をすることで成功確率があがる。
それをドラゴン相手にやろうとするテイマーが、この世界にはいないのだ。
「それだけで決めるのは早計では?それにプレイヤーとはなんですか?」
「私は君がプレイヤーだと確信しているのだが……まぁいい、説明しよう。」
「その前にあなたは何者?ハーラルト公の後ろに控えていたのは知ってますが。」
「私はオリヴァー・ホルム、Aランク冒険者でもある。今はハーラルト公の警護に当たっている。」
冒険者としてオレより上のランクは初めて会った。
武器を携帯していないので、どういうスタイルはわからないが、グスタフ達と比べると、雰囲気や圧が違う気がする。
かなりの手練れだろう。
まだ若いところをみると、まだ成長中なのだろう。
そして、プレイヤーについて説明してもらった。
この世界、「パレット」が危機に瀕した時に現れる存在で、この世界の住人では考えられない、強大な力や武器を保有し、世界を危機から救ってくれる。
伝承として残っているのだが、各国の王族、それに連なる者にしか伝わっていないそうだ。
オリヴァーも連なる者の一人で、伝承を聞かされて育ったらしい。
「それはまた大袈裟な伝承に聞こえますね。」
「いや、実際にプレイヤーとやらは複数現れ、世界を危機から救ったことが幾度かあるらしい。」
「それで、ドラゴンやオレのレベルを見て、プレイヤーだとおもったんですね?まぁ違いますけどね!」
「今はそういうことにしておこう。戦争中だしな!活躍楽しみにしているぞ!」
オレは、軽く会釈をして、テントから去った。
面倒なことが起きそうだなと思ったのと同時に、他にもゲームのプレイヤーが来ていそうだとも思った。
あの頃のプレイヤーの中で、来てほしくないプレイヤーもいる。
オレみたいなソロもいれば、パーティーを組んでいる者もいた。
それならまだいいが、あのゲームはPVP,プレイヤー対プレイヤーができた。
それをメインにしているプレイヤーもかなりいたが、月に一度発表される、倒したプレイヤー数のランキングの上位は、イカれた連中が多かった。
基本的にパーティーを組んでいる者が多かったが、対プレイヤー用に揃えた装備やジョブ編成で、パーティー殲滅もしているソロプレイヤーもいたのだ。
その様な者が来ないことを祈ろう。
実はゲームで、ランキングトップと殺り合うことになったことがあるのだが、何体も魔物達を犠牲にして、ようやく勝ったくらいで、その時はほぼ全滅といってもよかった。
そのくらい強いのだ。
「……ちゃん?……お兄ちゃん?」
「ん?ハクア?どうした?」
「お兄ちゃん、ずっと難しい顔してた……どうしたの?」
「そうだったのか……なんでもないよ。」
どうやらオレは、プレイヤーのことで頭がいっぱいだったようだ。
オレは、伯爵の陣地に戻り、伯爵とスペンサーとで、作戦の最終確認をしていた。
奇襲部隊にも説明するために、先日テイムした魔物を全て出した。
スペンサーの顔見せ、作戦内容、裏切りや失敗した際の罰等。
大半の魔物が、引き吊ったような顔をしているように感じた。
朝までの間は、かごに戻さず、魔物達をスペンサーに任せ、自分のテントに戻る。
テントの中で、オレは椅子に座って考え事、キングとドロシー、カイルを出してハクアと遊ばせていると、グスタフ達が入ってきた。
「ゲ、ゲスト!あなた緊張しないの?!わ、私達みんなガチガチで!」
「フィ、フィリーネのい、言うとおりよ!なんでそんなに余裕そうなの?!」
「あぁ、お前達か……。テキトーだからじゃない?って緊張してるのフィリーネとニーナだけじゃん!」
ガチガチになっているフィリーネとニーナの後ろで、グスタフとスヴェンがニヤニヤとしていた。
彼らはあまり緊張していないようだ。
ただ彼女達二人はどうにかしないと危ないようだ。
配置は伯爵のすぐ側で、直接の戦闘は少ないはずだが、戦場では何が起こるかわからない。
そんな状態で戦場に行けば、パニックになってしまうだろう。
緊張をほぐしてやらないといけない。
「模擬戦でもするか?少し身体を動かしたら、変わるんじゃないか?」
「そ、そうね。そうかもしれないわ。やりましょう!」
フィリーネ以外のメンバーも了承し、少し拓けた場所で模擬戦を行うことになった。
何故か他の冒険者や兵士達も観客として集まってしまった。
今回の模擬戦は、一人一人やって体力を使いすぎても、まずいので、四対一で行うことにした。
ハクアやキング達は後ろで観戦だ。
「お兄ちゃんがんばれぇー!!」
「任せろ!!四人ともボコボコにするから見てな!」
「ハクアちゃんやめて!ゲストが本気になったら、私達死んじゃうから!!」
ハクアの声援を、ニーナが全力で止めさせようとした。
しかし、時すでに遅し。
せっかくだから、本気を少し見せてやろう。
「ちょっとだけ、本気だしてあげるよ!これに慣れたら、緊張せずに戦場に出られるでしょ?」
「戦場に出る前に、生きてられるか不安ね……」
「じゃ、始めるよー!始め!!」
オレが自分で合図を出し、模擬戦を開始した。
オレとグスタフ達の実力を図るために、高みの見物をしている冒険者達や兵士達も、一瞬も見逃さないように、じっと見ている。
グスタフ達は、グスタフとニーナを前衛、フィリーネが魔法で後方支援と、遠距離攻撃、スヴェンは遊撃のようだ。
オレのジョブは、今回もテイマーと魔法剣士で、武器は業火炎獄のみ。
『手加減』は常時発動させている。
模擬戦が始まると、グスタフとニーナが突っ込んで来たが、黒炎で壁を作り、行く手を阻む。
しかし、黒炎の壁を間髪入れずに、フィリーネが水魔法で消火する。
水が蒸気となり、視界を隠すが、蒸気の中から、炎を纏ったグスタフが上段から斬りかかってくる。
それを半身でかわし、グスタフの腕を掴み投げようとしたが、ニーナが背後から、『氷刃』で作った刃で突いてくる。
オレは、グスタフを掴んだ腕を軸に、飛んでグスタフの反対側へと回り、ニーナをグスタフごと体当たりで、ぶっ飛ばした。
グスタフの影からスヴェンが接近していたのは、気付いていたので、体当たりの反動のまま、回し蹴り顔面に当て、意識を刈り取る。
遠くでフィリーネが大きな魔法を使おうと、魔力を杖に集めているのを発見し、それを阻止するために、黒炎でフィリーネの周囲を囲む。
フィリーネが水魔法に切り替えようと、慌てている隙に、瞬時に接近し、喉元に剣先の突き付け、模擬戦が終了した。




