第37話 指名依頼
グスタフ達との模擬戦を終え、屋敷の中で食事をとっている。
もちろん、作ったのはソフィーアだ。
フィリーネとニーナも手伝ったようだが、ソフィーアの調理スキルの高さに、メンタルがガタガタになったようだ。
二人も料理ができないわけではないのだが、あくまで一般人レベルだそうで、それをソフィーアの技術は軽々と越えているらしい。
「うん、今日もうまいぞソフィーア!」
「ありがとうございます。私ができるのはこれくらいですから。」
「ニーナ?私達、戦闘じゃなくて、女も磨かなきゃよね?」
「そうみたいねフィリーネ……完敗よ……こんなの」
二人は燃えている。
冒険者なのだから、多少は女磨きが疎かになってしまうのはしょうがない気もするが。
グスタフとスヴェンはそんな二人に目もくれず、食事に集中している。
戦闘のことや、武器のことを諸々話ながら食事をしていると、部屋のドアがノックされる。
返事をすると、ルシールが真剣な表情で入ってくる。
「ご主人様、来客でございます。この街の領主、キースリング伯爵様の使いの者だと。」
「あら、お父様の?なんでしょうか?」
「とりあえず入ってもらって!応接室に移動するから!」
ルシールは一礼し部屋から出ていく。
オレ達も応接室に移動する。
グスタフ達には食事しながら待っててもらうことにした。
領主に会うのも緊張するし、自分に関係ないことかもしれないと言っていたからだ。
応接室に着き、ソファーに腰掛けソフィーアと話す。
「なんだと思う?」
「いろいろありすぎて逆にわからないですわ!」
「あぁ、えっ?!そんなにあるの?」
心当たりがないわけではないが、それでも片手で数えるくらいである。
冒険者としてなのか、ソフィーアの同居人としてなのか、もしくは別の何かか。
考えてもわからないので、使いの者とやらを待つことにした。
といっても入口から応接室が離れているわけでもなく、すぐにノックされる。
ドアが開くと、ルシールと白髪の男性が立っていた。
短く切り揃えられた白髪、モミアゲから顎まで繋がった白い髭、優しそうな目が特徴的な60過ぎくらいの見た目だ。
「ご主人様、お客様をご案内してきました。」
「はい、通していいよー!」
「失礼します。」
男性が深々と一礼して部屋に入り、オレ達も立ち上がり、ソファーへと案内する。
「初めましてゲスト様!私はキースリング伯爵様にお仕えする、アルバンと申します。」
「どうも。ゲストです。オレは貴族じゃないんで固くならないで!」
「貴族じゃない?なら何故婚約者の話が?」
「婚約者?」
なんか聞かなかったことにしたいワードがあったような……
隣に座るソフィーアを見ると顔を真っ赤にしている。
問い詰めようとしたが、その前にソフィーアがアルバンに問い掛けた。
「ひ、久しぶりですわねアルバン。そのお話をしに来たのですか?もっと別なお話ですわよね?」
「お、お久しぶりですお嬢様。もちろん今日ここに来たのは、別の理由です。」
妙に圧のある話し方でソフィーアが問いただし、今日来た理由を聞く。
それは、キースリング伯爵からの指名依頼だった。
「旦那様がゲスト様に、指名依頼をしたいそうで、お話をしに来たのです。」
「なるほどねぇー。それって近々始まるっていう戦争の召集と関係ある?」
「ゲスト様?戦争があるのですか?お父様もそこに?」
さっきまでの空気が少し緊張したように変わる。
戦争には普通、王が持つ軍と貴族が兵を集めて纏まり、連携をとり戦闘を行うのだ。
その際に兵の指揮は貴族がとることが多い。
総指揮を貴族の中から選ばれ、各部隊を他の貴族が指揮を行う。
そこにソフィーアの父、キースリング伯爵も出るのだ。
総指揮をやれれば、後方で指示するだけで終わる可能性もあるが、そうでなければ戦場に突貫し、討ち死にしてしまうこともなくはない。
それを理解しているからか、ソフィーアの表情が曇る。
「戦争が始まれば、死なない保証はないです。しかし警護が強ければ安全性が高くなります。この街最高ランクのゲスト様はならそれが可能かと思ったのです。」
「まぁできなくはないと思うけど、魔物使って良いなら行くけど。」
「それは大丈夫でしょう!戦争に卑怯もクソもありませんよ!」
オレが参加することは、ソフィーアの表情で即決された。
ソフィーアも少しうっとおしいと感じる父親でも、心配なのだろう。
ついでに、アルバンに一つ聞いた。
「オレの他にも同行させたい冒険者がいるんだけど、どうかな?」
「構いませんよ。旦那様にもお伝えしますので。」
オレは、ドアの横で待機していたルシールに頼んで、グスタフ達を呼びにいかせた。
せっかく強くなって来ているので行かせよう。
どの程度レベルが上がったかは知らないが、警護するなら問題ないだろう。
というかさっさと終わらせよう。
いろいろ考え込んでいると、ドアをノックされ、グスタフ達が入ってくる。
「彼らはDランク冒険者だ。たまにオレが模擬戦相手をしているから、すぐにランクは上がると思うが、連れていけるか?」
「ゲスト?なんの話してる?依頼か?」
「あぁ、オレに指名依頼が入った。戦争中の領主様の警護だ。そんなに大変じゃないだろ?」
グスタフ達パーティーは、苦笑いしている。
まず、貴族っていうのが苦手らしい。
それを言ったらソフィーアだって貴族なんだけどなぁ。
とりあえず修行の一つとして受けさせることにする。
その後、いろいろ内容や報酬等を聞き、準備をするように言われる。
出発は五日後の明朝、アンファングの門の前に集合だそうだ。
それまでは、新武器を使いこなす為に、模擬戦を重ねることにした。
グスタフ達、各々が課題を持ち、真剣にこなした結界、レベルも5ずつくらい上がっていた。
オレも、屋敷に残るソフィーア達の安全の為に、魔物達の配備を見直し、訓練を行った。
そして、当日の朝。
「ゲスト様、いってらっしゃいませ!お父様をよろしくお願いします!」
「任せろって!戦争もパパっと終わらせてくるから!じゃ、行ってきます!」
空に太陽が頭を出す頃、オレは街の門へと向かった。




