第36話 炎獄(やり過ぎ)
大剣の魔法を発動したグスタフ。
周囲に出現させた炎の扱いに手間取っているようだが、攻撃を仕掛けてくる。
なんとか炎を球体にして、オレに向かって放った。
オレは剣で、目の前まで来てた炎の玉を切り払った。
すると、消えた炎の玉の後ろから、グスタフが現れ斬りかかってくる。
「うぉりゃー!!隙ありだぁー!!」
「おぉっ?!危ないなぁー!!」
グスタフが炎を刃に纏わせて放った上段切りを、同じように片手剣に炎を纏わせて受ける。
オレの片手剣に驚き、後ろに跳ぶグスタフ。
おそらく驚いてるのは、剣を見てというより、炎の色だろう。
「な、なんだその炎は?!ヤバそうだな!」
「この炎は剣の能力だよ!グスタフに渡した大剣と似たような剣だよ。」
この剣の炎は黒、火と闇の複合魔法が付与されている。
真っ黒な刀身に真っ黒な炎、『業火炎獄』それがこの真っ黒な剣の名前だ。
黒炎を操る能力があり、黒炎には光と炎を飲み込む能力がある。
そしてゲームでの愛剣の内の一本だ。
「炎の扱いを教えてやるよ!」
「ほぉー、行ってくれるねぇ!俺も敗けねぇー!」
グスタフが炎を扇状に放射する。
普通の魔物や盗賊相手なら一網打尽にできただろう。
しかし、今の相手はオレ。
剣に黒炎を纏わせ、扇状の炎を半分に切り裂く!
オレが、防ぐことは想定内なのだろう。
特別驚くことなく、背後から斬りかかってくる。
炎を放射した直後に回っていたのだろう。
遅れをとることなくオレは、鞭をグスタフの首に巻き付け、引き寄せる。
突然引っ張られたグスタフはバランスを崩し、オレの目の前まで寄せられる。
無防備になったグスタフの顔に、後ろ回し蹴りを繰り出す。
咄嗟に出たのだろう、大剣の腹で蹴りを受け止め、転がっていく。
「あっぶねぇー!顔面にもろにあたるところだった!」
「もうちょい鋭く蹴っても良かったかな……」
「それは死んじゃうだろうがぁ!!」
グスタフが大剣に炎を纏わせ突っ込む。
大剣の間合いに入る前に振り下ろす。
「くらえっ!今名付けた『翔・炎斬』」
「おおっ!」
炎の刃を飛ばしてきた。
オレは剣で弾き、黒炎の壁を作る。
グスタフが回り込んで、オレに攻撃しようとしたが、見失ったようだ。
仕方がないので声をかける。
「グスタフ!上だ!上!」
「はぁ?そんなんありか?飛べるんか?!」
オレはグスタフの遥か上、空を飛んでいた。
黒炎でコウモリのような大きな翼を作り、羽ばたかせる。
厨二心くすぐられる姿だろう。
「グスタフ!お前もできるはずだから!真似てみろよ!」
「空飛べるのか!やってやるぅ!」
背中に炎を纏わせ、翼をイメージしているようだ。
オレという手本がいるからやりやすいだろう。
背中から炎を大きく広げるところまではできたようだ。
しかし、翼に上手く変えられないようだ。
「ぐぬぬっ!なかなか難しいな……うー」
「オレは最初からできたぞ!」
「なにっ?!ちくしょーっ!!」
もちろんゲームの中での話だ。
この炎を操作する魔法はかなり上級の魔法だ。
どのように変化させるかは、エディット画面で調整する。
威力や大きさ、効果や範囲、などそれぞれを設定しておく必要があるのだ。
ただ、燃費が悪くなりがちなので注意が必要になる。
あまりに強力過ぎるとその分、魔力の消費も激しいのだ。
その作業を今この場でグスタフにさせているのだ。
「おっ?いけそうな気がする!」
「やってみろ!やってみろ!」
「うぉーー!!」
グスタフの背中の炎が蠢き、形を変えていく。
羽毛一つ一つを再現しようとしたのか、鳥のような翼になっていく。
みるみる形が整っていき、グスタフの背中には立派な炎の翼ができていた。
「やった!やった!これで俺も飛べる!」
「オレとは違う感じにしたんだな。」
「天使みたいよね。グスタフなのがあれだけど……」
ニーナの感想に同意したのか、他のメンバーも頷く。
そんなのにも気付かずに、はしゃぐグスタフは、オレと同じ高さまで飛んでくる。
慣れないのか不安定ではあるが、飛べている。
「どうする?このまま戦闘続ける?」
「やるやる!早く慣れないとだし!他にも技を見せてくれ!」
「仕方がないなぁ!お前に技を授けてやろう!」
弟子ができた気分だ。
オレがゲームで多用していた技を戦闘しながら見せることにした。
「ほれ!かかってこい!!」
「おっとと、行くぞ!うぉりゃー!」
グスタフは一度急降下し、オレの下から急上昇する。
大剣に黒炎を纏わせ、あの技使う。
「見よう見まねだけど、『飛燕』!」
「おぉっと!危ない!」
グスタフの『飛燕』を、宙返りしてかわす。
そのまま剣で横凪ぎに斬りつける。
「ほいっ『つばめ返し』!」
「がぁはっ!」
ギャインっと金属音を立て、吹っ飛んでいくグスタフ。
空中でバランスを立て直し、こちらに向かって構える。
オレはその場で翼を羽ばたかせ、黒炎を飛ばす。
一つ一つが槍のように鋭く尖らせて飛ばした黒炎を、グスタフは炎でなんとか壁を作り防ぐ。
「今の技は初級編だな。『炎槍・黒』だよ!」
「じゃあ俺も真似して!『炎槍』!」
グスタフも翼を羽ばたかせ、炎を飛ばす。
鋭くはないが、それでも飛ばすことには成功する。
「もっと槍をイメージして飛ばせ!でも筋は悪くないな!」
「よっしゃもういっちょ!『炎槍』!!」
今度は、オレ程ではないが尖った炎が飛んできた。
「最初にしてはいいんじゃないか?じゃあ次だな!『炎獄』!」
「やりぃ!どんどん来いって……それはヤバくないか?!」
黒炎が禍々しくオレから広がり、グスタフを包んでいく。
すっぽりと包んだ黒炎は、綺麗に球体になっている。
「聞こえるか?今から潰すからね?耐えろよ?!『圧焼』」
「ま、待てって!!ぐわぁぁっ!!」
上手く耐えれなかったのだろう。
グスタフの悲鳴が響き渡る。
他のメンバーも心配そうに、球体を見つめる。
オレが技を解除すると、プスプスと煙を上げたグスタフが落ちていく。
さすがに焦ったオレは、急降下してグスタフを受け止める。
「大丈夫かぁ?『手加減』スキルは使ってるから生きてるよな?」
「痛っ!いや、やり過ぎだから……あんなん防げないわ!包まれた瞬間パニックだわ!」
焼けた匂いを漂わせながら、グスタフは笑っていた。
さすがにすぐには動けないようなので、回復魔法をかけてやった。
「飯食ってくか?ソフィーアの飯はうまいぞ!」
「いいのか?じゃあ頂こうかなあ。」
屋敷の庭から焼けた匂いと笑い声が響くのだった。
そろそろ大きい山場を入れないとですね。
淡々と進めてますし。




