第34話 怒り心頭
カンカンと甲高い音が、訓練場に響く。
オレは、ニーナとの模擬戦の最中だ。
鋭く出される槍の一撃を、竹槍で衝撃を殺すように、柔らかく受ける。
普通に受ければ折れてしまうからだ。
ニーナはそれを理解しているのだろう。
焦っているかのように、槍での攻撃を繰り出す。
多種多様なパターンで。
突きの三連撃から石突きでの足払い、横凪ぎから後ろ回し蹴り、
切り上げから振り下ろし、どれも洗練され、繋ぎも流れるように繰り出されていた。
だが、オレには当たらない。
「どうした?殺るんじゃないのかい?」
「クソっ!!もっと……もっと速く……鋭く……」
今のニーナは、オレに攻撃を当てることだけに集中しているようで、かなり防御を疎かにしている。
試しに、竹槍の石突き部分での横凪ぎが、簡単に腹に当たった。
「ぐふっ!ぐえぇー……」
「ありゃ?ちょっと強すぎた?」
「ゲスト強すぎよ!ニーナ?大丈夫?」
綺麗に決まった横凪ぎで、胃が持ち上げられたのか、美人にあるまじき行為をさせてしまった。
口元を拭い、オレをキッと睨んでいるニーナは、まだやれそうだ。
「まだやれる!やぁー!」
「このままだと一緒だと思うけどなぁ……ほいっと」
ニーナの突進を竹槍でいなし、足かける。
バランスを崩し倒れるが、すぐに立ち上がり、攻撃を打ってくる。
芸のない様に思える連続する突きだったが、オレが竹槍の柄で弾くタイミングで、ニーナが仕掛けてきた。
「今だ!!『氷刃』」
「なっ?!」
ニーナが、槍に付与された魔法を解放した。
槍の石突きの周囲に、冷たい空気を纏う。
横凪ぎに振るわれた石突きの先には、氷で作られた刃があった。
その刃は、何の抵抗をも感じさせずに竹槍を真っ二つに斬った。
カランと音をたて、落ちる竹槍の先。
「まさかそう使うとは思わなかったな。やるねぇー。」
「ゲストだって、槍で斬撃を使えるようにしたかったんでしょ?」
ニーナの顔に余裕が戻っていた。
一矢報いたつもりなのだろう。
オレには当たってないが。
『氷刃』は水属性の魔法で、氷で作った刃を飛ばして攻撃するものだ。
しかし彼女は、飛ばすのではなく、石突きに作ることで、槍を突くだけではなく、斬ることも可能性にしたのだ。
「再開するかい?」
「もちろん!これからよ!」
冷気を纏う刃を、地面を抉りながら斬り上げる。
オレは、半身になりかわすが、服の胸辺りが冷たくなる。
抉られた地面は、冷気で凍り、霜柱のようになっている。
「つめたぁー!こんなんすぐ風邪引いちゃうよ!」
「風邪で済めばいいけどね!」
斬られた竹槍を捨て、片手剣を右手で構え、受けたりかわしたりを繰り返している。
しかし、氷の刃の攻撃を受けた剣は、瞬く間に冷え、剣が汗をかく。
「冷たすぎて剣が持てないぃー!」
「へぇー、これにそんな効果もあるんだぁー」
ニヤリと笑ったニーナは怒涛の攻撃を仕掛けてくる!
左からの横凪ぎ、右から横凪ぎ、その勢いのまま回転し、上段から振り下ろし、斬りあげから袈裟斬り、多種多様の連撃を仕掛けてくる。
オレはその全てを剣で弾き、反撃に移る。
氷への対策もする。
「しゃあない、オレも使うか。『炎刃』」
「そ、それはズルい~!!」
オレは、ニーナとは逆、炎の刃を作り出す。
といっても、刃そのものを別に作るのではなく、剣の刃に重ねるように使う。
要はただの鉄の剣が、炎の剣に変わったのだ。
ニーナは氷、オレは炎、相性は一目でわかる。
そしてオレは、その魔法を本来の使い方をする。
「よし、じゃあもう一回!『炎刃』」
「またぁ?!あつっ!」
『炎刃』も飛ばして攻撃する技なのだ。
ニーナはそれを、槍で弾くが、反動に耐えられず飛ばされてしまう。
その隙を逃さずに、オレは攻める。
斬り上げそのまま回転し袈裟斬りへ、腹に蹴りを一発入れてから顔面に左手の裏拳を入れた。
「ガハッ!ちょ、ちょっと顔面は酷いんじゃない?」
「そうか?どうせ治るしいいだろ?」
「キィー!!ムカツクゥー!!」
今度はニーナが突っ込んでくる。
突きの連撃をオレは、ヒラヒラとかわし、氷の刃での攻撃を弾き、ニーナのバランスを崩す。
その際に、ニーナの手前に『炎刃』を放ち土煙を起こす。
「クソっ!!見えない!ゲストは何処に?」
「はいっ!おわりぃー!」
土煙でオレを見失ったニーナの背後をとり、首に腕を回し剣を斬りつける。
結局ニーナはオレに攻撃を当てることはなかった。
「結局ダメだったかぁー……おしいとこあった気もするけど……」
「竹槍を斬られた時はヒヤッとしたよ!」
「ところで、早く離してくれない?」
慌ててオレは、ニーナを離す。
ニーナの顔は真っ赤に染まっていて、オレと視線を合わせない。
ソフィーアが様子を見に、庭に出て来ていて、このシーンを見られてしまった。
「ゲ、ゲスト様?!何をしているのですか?私にもしてください!!」
「あ、あのぉー、ソフィーア?勘違いしてない?オレ達模擬戦してただけよ!」
ソフィーアがプリプリ怒る姿は可愛かったが、背後から感じる視線に変な汗が吹き出てきていた。
どうにかソフィーアが納得してくれて、この場は落ち着き、次の相手をする。
「じゃあ次はわたしね!魔法の使い方、いろいろ考えてきたから見てちょうだい!」
「了解!オレも真面目にやるからねぇー!」
フィリーネはミスリルの杖、オレは前回と違う、タクトのような短杖を使う。
開始の合図が出され、フィリーネは魔法を発動する。
ミスリルの杖が激しく光り、オレの視界は真っ白になった。




