第33話 使い心地
ちょっと忙しくて、1日1話のペースが崩れそう……
今、スヴェンと向き合い、武器を構えている。
スヴェンの手には短剣が二本、握られている。
これは昨日、グスタフの大剣を作ったあとに、みんなに作った武器の一つだ。
以前の模擬戦で、スヴェンが短剣を二本使っていたので、新しい武器も二本作った。
どちらも風属性の魔法を付与している。
「どうだ?握った感じは。」
「う、うん……軽くて……振りやすい……」
スヴェンは軽く振ったり、回したりしている。
準備運動が終わったのか、前回とは違う構えをする。
右手の短剣は逆手に持ち、前に出すと、左手の短剣は順手に持ち、顔の横にある。
どんな意図があるのか、読めなかったが、前回と雰囲気が違うのは確かだ。
一方オレは、スヴェンに合わせて短剣にしたいところだが、あまり上手くないので、前回同様に素手だ。
「準備は大丈夫かな?」
「うん……行く……シュッ!!」
スヴェンがオレに向かって、一直線に走る。
速度は前回と変わらない。
オレの目の前まで来た。
が、ここからが違った。
左右に的を絞らせないように動き、低い姿勢で接近し、直前でジャンプ、オレの頭を飛び越え、真後ろからオレに向かって、真っ直ぐ飛んできた。
「『大蛇の大顎』!!」
「なにっ?!!」
オレに向かって飛んできたあと、左右の短剣を、クロスさせるように振る。
まるで生き物の顎のように。
オレは、一瞬喰われそうになったが、直線上の攻撃なので、半身になってかわす。
かわされたスヴェンは、着地時に一回転がり、身体がこちらに向くようにした。
「大技会得したな!」
「最近覚えた……当たると思ったのに……」
悔しそうな表情のスヴェン。
武器が軽いからか、一撃のキレが上がっているようだ。
レベルも上がっているのかもしれない。
最初と同じ構えをとり、オレの右側に回りながら、スヴェンが接近、逆手に持ってる短剣で、喉元を狙って斬り込んでくる。
ボクサーが放つ高速のジャブのように、連続で短剣を打ち込んでくる。
それも、直線的に飛んでくる通常のジャブとか違い、鞭のようにしなるように飛んでくる。
「これは、『蛇突』か!!」
「よくわかったね……この剣技は避けづらいでしょ……」
蛇のようにうねりながら放つ技『蛇突』。
ゲームでは剣技ではなく、武技の一つ、格闘の技だった。
スヴェンはそれを剣技として取り入れたようだ。
『蛇突』はフリッカージャブと呼ばれるボクシングの技で、必殺の技ではない。
しかし、鞭のように炸裂するそれは、命中した箇所を腫らす。
顔面に攻撃すれば、視界を奪うことも可能だ。
スヴェンの『蛇突』は短剣を使うことで、高速かつ不規則に切り刻む、必殺の技と言っても過言ではない。
オレは、予測できない動きに、戸惑いながらも対処するが、服の一部を裂かれてしまった。
「当たった!!」
「ちょっと余裕見せすぎたな。もうちょい真面目にやるか!」
スヴェンが喜びのあまり、攻撃の手を止めてしまう。
オレは、その隙を逃さずにスヴェンの視界から消える。
スヴェンはオレを探して、キョロキョロしているが見つけられない。
「スヴェン!後ろよ!あなたにピッタリくっついてるわ!」
「っ?!」
フィリーネの助言に振り向くが、オレを視界に捉えられないようだ。
何度もフィリーネ達が叫び、それに応えスヴェンが振り向くが、見つけられない。
戸惑いの色が隠せないスヴェン。
実はこのとき、オレはあるスキルを使っていた。
スヴェンのジョブ構成を考え、さらに上位のジョブを使い、相手をしようと考えたオレは、忍者のジョブを設定していた。
忍者は相手の五感を騙す技や、潜入、暗殺術に長けている。
このとき使ったスキルというのが、『忍法・影張り』。
端から見れば、ただ相手の背中に張り付いているようにしか見えない。
しかしこのスキル、気配を極限まで減らして張りつくために、一対一だと気づきにくい。
そして、このスキルが決まった場合、自分の勝ちがほぼ決まったようなもんだ。
何故なら、普通気配を殺し背後に張りつくような場合、すぐに喉元を切り裂かれ、敗北が決まったようなものだろう。
オレも、スヴェンの喉を後から掴んだ。
「うぐっ?!」
「はいっ、オレの勝ちねぇ!」
「くそっ……」
オレは、喉を離してやり、評価を言う。
「前回と大分違うな!まさか『大蛇の大顎』と『蛇突』を短剣で使ってくるとは思わなかったぞ!特に『蛇突』は避けづらいからなぁ。そのあとに続く攻撃パターンがいくつかあるといいな。」
「わかった……ところで、短剣の魔法使ってない……」
「そういえば忘れてたな!もう一回やるか?」
スヴェンは心底嫌そうな顔をした。
疲れている様子だし仕方がないか。
「じゃあ魔法の方は後で聞かせて!といっても『敏捷強化』が入ってるだけだから、慣れればすぐ使えると思うけど。」
「がんばる……」
オレが渡した、二本の短剣にはどちらも『敏捷強化』が付与されている。
スピード重視のスヴェンが更に速くなれば強いはず。
当たらなければどうということはない。
ただ、火力不足を心配してたが、新たな剣技を覚えたようで、良かった。
次はニーナの出番だな。
「スヴェンお疲れ!次は私ね!」
「ニーナがんばれぇ!ゲストをボコボコにしちゃえー!!」
フィリーネの応援が怖い!
ニーナも気合い充分で、渡した槍を振り回している。
空を切る音が、前より鋭い聞こえる。
槍が扱いやすいのか、訓練の成果か。
「さぁおいで、ニーナ!可愛がってやろう!!」
「完全に舐めてるわね……絶対一発入れてやるんだから!」
スヴェンとの模擬戦で、みんなが少しレベルアップしてるのがわかったため、油断はしない。
つまり、もう当てさせない。
オレもジョブを替え、武器を槍にする。
それも竹槍だ。
竹の先を斜めに鋭角に切っただけの棒だ。
ニーナの表情が真剣になる。
怒りも頂点に達しているのだろうか。
槍を握る手に力が入ってるのがわかる。
「ニーナ?落ち着かないと、ゲストには当たらないわよ!」
「……」
ニーナの耳には届いていないようだ。
「本気で殺ってやるぅー!!!」
「来いやぁー!」
ニーナが雄叫びをあげ、最短距離を突っ込んでくるのだった。




