第21話 キースリング伯爵
アンファングに帰って来たオレ達は、そこで解散とはいかず、ソフィーアの屋敷、アンファング領主の屋敷まで同行することになった。
アンファング領主の屋敷は、街で一番高い場所にある。
敷地は塀でしっかり囲まれ、侵入も脱出も容易ではないと思われる。
敷地内外はしっかりと衛兵が巡回している。
といっても今まで問題が起きたことはない。
屋敷はどこぞの領主と違って堅実に作られている。
正面から見ると左右対称になっている。
しかし、要所要所で貴族らしさが出ており、ドアノブや柱に装飾が施されている。
これは貴族として、最低限しておかないとならないらしい。
アンファング領主はあまり気にしないらしいが、他の貴族は金があるのに使わないことにケチをつける者がいるのだ。
オレは、屋敷の壮観さに固まっていた。
「ゲスト様!口が開いてますわ!」
「あ、あぁ……なんかすごいな、どっかのデブ領主とは大違いだ。あれはセンス無さすぎだな。」
馬車の後ろで繋がれていた、デブ領主ことブッフバルト男爵は怒りなのか、羞恥心なのか顔が赤かった。
門番にソフィーアが顔を見せ、オレもギルドカードを見せると中に通してもらった。
犯罪者達は衛兵に預け、オレ達は屋敷に入った。
ちなみに騎士さんは実は騎士ではなく、衛兵の一人だったそうだ。
ソフィーアの護衛を模擬戦で勝ち取ったそうだ。
彼は屋敷に入る前に別れた。
「お父様!お母様!ただいま帰りました!」
「あらっ!お帰りなさいソフィーア!素敵な殿方を連れて帰ってくるなんて大人になったのね!」
「「なっ?!」」
オレとソフィーアは、声をあげることしかできなかった。
ソフィーアなんか顔真っ赤だし、ぶつぶつ言ってモジモジしてるし。
この人は母親らしい。
綺麗なブロンドで、腰まで伸びた綺麗な髪、ソフィーアとは似付かない大きなお山が二つ、おっとりした表情は見ている者を和ませる。
ソフィーアの母親というより、姉と間違えてもおかしくないくらい若々しい。
とりあえず反論せねばと口を開こうしたができなかった。
ドドドドっとすごい勢いで走ってくる者がいたからだ。
「ソフィーアァー!!おかえり!可愛い我が娘よぉ!!」
「お、お父様!苦しいですっ!それにゲスト様の前では恥ずかしいですわ!」
ソフィーアはデカいおっさんに抱き締められている。
ほどよく鍛えられた、いわゆる細マッチョで、身長はオレより高い。
厳格そうな顔付きで、対峙する者は圧力を感じるだろう。
そんな圧のある風貌なのだが、ソフィーアより濃い綺麗なピンクの髪が雰囲気を和らげる。
「すまんすまん!久しぶりにソフィーアに会えて嬉しくてな!それに誘拐されたと言うではないか!」
「まだ一週間経ってませんし、傷一つありませんわ!」
どうもこのおっさん、かなり娘に依存しているのだろう。
ソフィーアは、溜め息を吐き、オレのことを紹介する。
「はぁ……お父様!こちら、今回助けて頂いた、Cランク冒険者のゲスト様です。ゲスト様!私の父であり、アンファング領主の」
「ブルクハルト・キースリング伯爵である!娘が危ないところを助けてくれてありがとう!」
キースリング伯爵は、深々と頭を下げた。
オレは慌てて、頭をあげるようにお願いする。
「いやいや、頭を上げてください!たまたまなんだすから!それに実際に助けたのはオレの仲間ですし。」
「というと?」
オレが説明しようとすると、ソフィーアが得意げに話し出す。
「ゲスト様は凄腕のテイマーなんですの!お仲間の魔物達もすごくお強いですのよ!」
「ほう!それは見てみたいなぁ!ゲスト殿!仲間の魔物達、見せてはもらえぬか!」
「いや、いいですけど……お庭借りてもよろしいでしょうか?」
キースリング一家とオレは、庭へと場所を移した。
「ゲスト様!早くお仲間を見せてくださいな!」
「わかったわかった!とりあえず今出せる奴らだけな!」
オレは、最初はこいつだろってことでキングを出した。
姿は美少年モードだ。
「この子がそうなの?可愛い子供にしか見えないけど。」
「お母様!この子はキングさん!スライムなんですのよ!」
キングは、紹介があるといつも通り両手をスライム状に戻してみせる。
「まぁ、こんなに可愛いのに、ニュルニュルですのね!」
「この姿はゲスト様の子供の頃の姿らしいです。それにゲスト様の最強の相棒らしいですわ!」
「この子が最強かぁ。ウチの兵士達と戦わせてみたいのぉ!」
「や、やめたほうがいいと思いますよ。トラウマになるだけですから……ハハッ……」
兵士達がどの程度のレベルだろうと、この世界のレベルを考えればキングが一人で無双してしまうのが目に見える。
オレは、苦笑いしながら止めるしかなかった。
次は、メレメレを出した。
がみんなはキョロキョロしている。
メレメレは出てくる直前に透明化したのだ。
「メレメレさんはどこにいるんですの?」
「こっちっすよ!こっち、」
メレメレはキースリング一家の周りをぐるぐる回っているようだ。
「メレメレ!そろそろ出てこいって!」
「しょうがないっすねぇ!ほらっ!」
「ソフィーア?!」
メレメレは姿を現すのではなく、触れて一緒に消えることで、触れた相手に姿を見えるようにしたのだ。
「ソフィーアはどこいったのだ?!」
「ふふっ、お父様!ここにいますよ!」
「あら?ソフィーアの声が聞こえましたね。」
ソフィーアもイタズラし始めたようだ。
メレメレも調子に乗り始めた。
「メレメレ!いい加減出てこないと、お仕置きすんぞ!」
「すんませんっ!もうしないんで勘弁してくれっす!」
ソフィーアとメレメレが姿を見せた。
メレメレはオレの足下で土下座していた。
さすがにオレもビックリしたわ。
「土下座はやめてくれ!オレの印象が悪くなる!」
「失礼したっす!」
「姿を消すとは、すごい能力だな!」
「メレメレさんは、キングさんと一緒に私を助けてくれたんですよ!」
メレメレは照れたように頭をかきながら、答える。
「いやぁ、オイラは旦那の指示で動いただけっすから!」
「ボクもそうです!ご主人様の命令でしたから。」
いやぁ忠実は仲間で助かってます!
次はデカいのを出す。
「伯爵様、次に出すのは大きくて迫力あるんで気をしっかり持ってくださいね!お嬢様と奥様は特に!お嬢様はずっと震えてましたから。」
「しょうがないじゃないですか!恐怖でしかなかったですわ!」
「むっ、そんなに凄いのか!」
みんなが深呼吸をして、心の準備をする。
伯爵様から、OKのサインが出たので、そいつを出した。
「リュート!すまんが紹介のために出したぁ!」
「また戦闘ではないのか……いつになったら戦わせてくれるのだ!」
キースリング一家を見ると、やっぱり震えていた。
ガタガタと聞こえそうなほど震え、カチカチと歯がなっていた。
やはりドラゴンは恐怖の対象のようだ。
「皆様、大丈夫ですよ!ちゃんとテイムされてますから!なんかあってもオレには逆らえないですし!」
「そうじゃ、主には逆らえぬ!ボコボコにされるのが浮かぶわ!」
「ま、まさかドラゴンが、出てくるとは……」
ソフィーアが胸を張りドヤ顔で立っている。
膝が笑ってるぞソフィーア!!
後ろの方で悲鳴が聞こえたので、みんなが振り替えると、運悪く巡回で訪れた衛兵が腰を抜かしてた。
股間が濡れていたのは見なかったことのしてあげよう。
「今回はここで終わりにしたほうがいいですね……疲れたましたよね?」
「まぁ、ドラゴンのおかげで……な。」
「すまんの、脅かすつもりはないんだが……」
とりあえずリュートにはもどってもらい、屋敷の中に入った。
その頃には、みんな落ち着きを取り戻していた。
その後、応接室に案内されお礼をと言われたが、お金は間に合っているので、家を一件紹介してもらうことにした。
ソフィーアがやたら張り切っていたが何故だろう……
今度は、指名の依頼をするかもしれないと言われた。
オレもギルドへの報告があることを伝え、屋敷をあとにしたのだった。




