第20話 帰還!
登場させたい幼女がいるんだが、いつにするか……
馬車に揺られて心地好く寝ていたのだが、腕に柔らかい感触を感じ、目が覚めた。
「わっ!ソフィーアちゃん?寝てるのか?」
オレの腕にガッシリと捕まり、頭をオレの肩に預けて、ソフィーアが熟睡しているのだ。
困ったことに、寝顔がとても可愛くて、思わず頭を撫でてしまう。
馬車の前部、御者席の後ろにあたる位置に、小窓があるのだが、それが運悪く開いた。
御者席にはソフィーアの家に仕える騎士が座っていた。
「お嬢様、そろそろ休憩を……なっ!なにしてっ!」
「シーっ!オレも起きたらこうなってて驚いてるんだよ!休憩するなら起こすか?飯も食わなきゃだろ?」
「場所を決めて、馬車を止めたら起こしましょう。お嬢様も疲れているのでしょう。」
オレ達は、わりと大きな河川の川原で休憩することにした。
馬車を停めて、騎士と共にソフィーアを起こす。
「ソフィーア!休憩するから起きてくれ!」
「お嬢様!起きてください!食事もしないといけませんよ。」
「んんーー!」
ソフィーアはオレの腕を手放し、伸びをしたかと思えば、今度はオレの膝の上に向かい合うように座り、抱き着いて寝始めた。
「おいおい!!これは勘弁してくれ!寝相悪いにもほどがあるぞ!」
「お嬢様!!はしたないですよ!」
これは、全く起きないパターンである。
リュートの一件で、そうとう疲れたのかもしれない。
オレはそっとしておくことを提案する。
「なぁ、このまま寝かせていいんじゃないか?ソフィーアってあまり旅したことないだろ?
「そうですね、旅はほぼ初めてですし、村での出来事も疲労に繋がってるんじゃないですか?ただその格好のままなのは見過ごせません!」
「なら剥がしてくれよ!けっこう強くホールドされてるのよ!」
「しょうがないですね!変なことしないでくださいね!!」
騎士に強く言われたが、そんなことするつもりもない!
というかする度胸がない。
元の世界でも女性経験は皆無だったからだ。
とりあえず、キングを呼び、休憩の準備を手伝いするように言った。
この休憩というのも、馬を休めるためだ。
実際、犯罪者も疲労がたまり、進行速度が落ちて来てるのだ。
本来なら、この日のうちにアンファングに着く予定だったのだ。
それが今、やっと半分とちょっと進んだ程度なのだ。
「はぁ、このペースはキツいなぁ……さすがに飽きる!ゲームなら転移が使え……あれ?転移使えるんじゃ?」
ゲームのときは、転移が使えた。
それは一度行った街にならいつでも飛べるものだ。
魔法使いの上級職の魔導師が使える魔法で、パーティー出なくても一緒に飛ぶメンバーを指定すれば飛べる。
なんで忘れてたんだろう?
「試してみるかぁー……でもソフィーア寝てるしなぁ……」
休憩が終わる前に騎士に話してみることにした。
ソフィーアに抱き締められながら立ち上がる。
オレは落とさないように背中に腕を回す。
ソフィーアは宙ぶらりんになる両足でオレの腰を挟み固定する。
体制的には、〇弁スタイルになっている。
見る人が見ればヤバい体勢である。
オレは気にせず、馬車の外に出る。
「あ、あのー騎士さん?ちょっと提案があるんですけど?」
騎士は青筋を浮かべてぷるぷるしていた。
すぐにでも殴りかかってきそうだ。
「ゲストさん、なんですかその体勢わ!」
「いや、これはオレのせいじゃ!!」
「んんー?!」
その時、ソフィーアがオレの胸に顔を擦りながら目を覚ました。
体勢はそのままで。
「な、なに?みんななにしているのです?」
ソフィーアは自分が注目されているに気づいたのだが、理由がわからなかった。
「そ、ソフィーアちゃん?あのー、非常に嬉しいのだが、騎士さんの堪忍袋が限界だから、離してもらえないだろうか……」
「えっ?……わわっ!!」
ソフィーアはいきなり手を離したので、支えがオレの腕だけになる。
オレはそっと地面に降ろしてあげた。
ソフィーアの顔は赤くなり、泣きそうな表情になる。
うーっと唸りだし、オレが怒られるのかと思いきや、馬車の中に走って行った。
「あぁーー!!!私のバカバカバカぁーー!!!」
馬車の中から聞こえる乙女の叫びは、みんな聞かなかったことにした。
オレは胸元に寂しさを感じたが、ふぅーと溜め息を吐き切り替える。
騎士にあの話をするために。
「騎士さん!提案が!」
「そういえばそのようなことを言ってましたね。どのような話ですか?」
騎士さんも元に戻ったようだ。
休憩の準備が終わり、石を積んで作った釜で、汁物を作っていた。
軽く食事もとるつもりだったのだ。
「提案というのは、アンファングに帰る方法です!」
「まさか、あのドラゴンに乗る訳じゃないですよね?」
「キングに聞いたんですか?この人数は厳しいですねぇ!」
キングは馬車の上で警戒していたため、同じく外で御者をしている騎士とよく話していた。
そのときに聞いたのだろう。
「転移ですよ、転移!もし成功すればすぐ帰れますよ!」
「転移なんてできるのですか?ゲストさんは魔法使いには見えないですが……」
「今は、魔法使いではないですが、魔法は使えますよ!休憩終わったら試してみましょう。」
オレはサブのジョブを魔導師に変える。
これも魔物の厳選作業によって生まれた副産物といってもいいだろう。
今回使う転移系の魔法は『次元の扉』だ。
この魔法は、空間魔法の一つで、転移先の空間と現在地を繋ぐ扉を出現させる魔法だ。
この魔法は発動にそれなりの魔力を消費するが、維持するのは少量だ。
俗に言う瞬間移動のような魔法もあるが、移動する人数が多いほど、魔力の消費も多くなるため、今回は使わない。
オレは、少しだけ馬車から離れた場所で魔法を使う。
「上手くいってくれよ!『次元の扉』!!」
オレの目の前に、馬車も余裕で通れるくらいの扉が出現した。
扉といっても、真っ黒な靄のような物で、転移先は潜らないと見えない。
ソフィーアが復帰したのか、馬車から降りてオレの隣に立つ。
「ゲスト様?これはなんです?」
「これは『次元の扉』!要は転移できる扉だよ!覗いてごらん!」
ソフィーアは恐る恐る入っていく。
こちらから完全に姿が見えなくなるが、興奮した状態でソフィーアが戻ってくる。
「ゲスト様!ゲスト様!すごいです!すごすぎです!!」
「どうだ!すごいだろ!」
この時のオレは、胸を張りドヤ顔だったのだろう。
ソフィーアの興奮も落ち着かず、おおはしゃぎしていると、出発準備が終わった騎士が呼びにくる。
「これはなんですか?そしてお嬢様はどうしたんですか?」
「あなたも潜ればわかりますわ!」
「とにかく、魔法が上手くいったってことだよ!」
「じゃあこれを潜るように馬車を進めればいいのですね!」
「そういうこと!」
みんなが馬車に乗り込む。
このときリュートもかごに戻した。
騎士は戸惑いながらも馬車を扉に進めた。
馬がなかなか進んでくれなかったが、オレが降りて、馬と一緒に潜れば問題なかった。
「うわぁー……すごいですね……」
「でしょ!ゲスト様はすごいです!アンファングの門の前まで、一瞬で来てしまいました!」
ソフィーアの言うとうり、オレはアンファングの門の前に扉を繋いだ。
街の中に繋ぐこともできたが、街に入る手続き諸々必要だったためだ。
オレはギルドカードを見せるだけ、ソフィーア達は顔パスで終わるが、犯罪者達は違う。
一人一人、名前を聞き、犯したことを伝える。
アンファング領主のもとで聴取をすることも伝えた。
それが終わりやっと街に入ることができた。
オレは、4日ぶりにアンファングに帰って来たのだった。




